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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「置いておいた罠も全て発動、各自オフェンダー、ディフェンダーの活躍もめざましく言うことはない。ただ、残念なのは、それ以上にゾンビの数が多かっただけのことか」
「これじゃもう禁猟区で警戒する必要もないね。どこに目を当ててもゾンビしかいないもの」
「そうですな。あとは夜明けが来ることを祈るばかりってね、それまでは少なからず後方支援するとします」
「これだけ近寄られてしまってはどこが後方かもわからないけれどね
「違いない」
 そう話すのはアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)の二人だ。主に改造されていた罠を設置してゾンビの迎撃に当たっていたのだ。
 しかしゾンビの数が誰の予想からも外れていて、像の周りにはゾンビに囲まれていて契約者たちも逃げることすら叶わない有様になっていた。
「いやはや、ここまで来ると考えるよりも手を動かしてたほうがいいね。恐怖を感じなくてすむよ」
「やけになって前にで過ぎないようにね」
「私が? こいつらと? 間違ってもしないことだから安心してくれ」
 迫り来るゾンビを前にも、像を守りたい一心から、決して逃げようとはしないアルクラント。
「それに、明けない夜はないんだ。それに期待するのも悪くはない。こんな逆境はそうそうお目にかかることはできないし」
 そういうアルクラントは少しだけ笑って、ゾンビを打ち抜く。打っても打ってもまた次のゾンビが現れる。
 シルフィアもアルクラントを守りながら、像手前で必死にゾンビの群れを押し返そうとする。それでも一向に引いてはくれず、その数を増やし続けるゾンビ。
「……一か八かの勝負は、嫌いじゃない」
「そんなこと言って……今回はいくらベットするの?」
「そうですな。夜明けが来て大勝利するのに、私の命を掛けましょう」
「ならその賭けは十中八九当るわね。アル君の命はワタシが守るって決まってるから」
「それは心強い限りですな。では、最後まで行きましょう。皆もこの分の悪い賭けに乗った人たち、負ける気などさらさらないでしょうしね」
 底をつきそうになるやる気、体力。それを無理やり押し上げて二人は戦い続ける。皆と共に、戦い続ける。

「さあ皆さん! 夜明けまであと少しです! がんばって下さい!」
 ゾンビたちに囲まれてぎゅうぎゅうにならんばかりで戦うディフェンダーたちの間を、そう言いながら走るのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)だ。
 この長い持続戦を仲間を回復することでずっと支えてきていたのだ。それは今もなお続行されていて、体力は勿論、SPが底をつきそうな契約者たちに率先して、異国の没薬を使っていた。
「ここまでくれば、あとはもう全力で行きましょう! 相手の攻撃を食らってしまった場合は詩穂におまかせあれー♪」
 そう言って【命のうねり】で仲間全体を回復する詩穂。回復を受けた仲間から感謝の言葉が詩穂に集まり戦いへと復帰していく。
「必ず勝ちましょう! 勝って、一緒に笑いあいましょう!」
 あえて詩穂は攻撃をしない。皆が安心して戦えるように、努めてサポート役に回っているのだ。彼女がいるからこそ、前で戦うディフェンダーも心置きなく戦えているのだ。
「あ、危ない! ちょっと待っててくださいね! 今すぐそちらに向かって回復しますから!」
 このような乱戦の場であっても詩穂は怪我をした人を見逃さなかった。すぐにけが人の所へ向かい、【完全回復】で回復する。
「ありがとう、助かった」
 回復してもらったのは共に戦っている氷室 カイ(ひむろ・かい)だ。
「どういたしまして♪ あと少しですから、がんばりましょう!」
「ああ!」
 詩穂の激励に背中を押されていくカイも本当の最後の力を振り絞る。誰も諦めようとはしない。誰も逃げ出そうとはしない。
 それは後ろで絶えず回復してくれる詩穂がいてくれるからだ。
 しかし、ここにきて。
 数体のゾンビがディフェンダーを抜いて、ついに像の眼前へと着いてしまう。
「だ、だめです! それ以上、だめー!」
 詩穂の制止も聞かず、ついにゾンビが像に―――。