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ゾンビ トゥ ダスト

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ゾンビ トゥ ダスト

リアクション

「いやはや、これだけの戦力を持ってしてもまだダメとは。ゾンビも侮りがたきものなのですね、少し見直しました」
「ゾンビ ノ カズ 減少中」
「ゾンビ如きが……我に勝つなど……おこがましい……」
「ってみんなそんな余裕だけど一応今ピンチだからね!?」
 ルカルカがいなくなり手漉きになった男性の像を守っているのはエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)アーマード レッド(あーまーど・れっど)ネームレス・ミスト(ねーむれす・みすと)緋王 輝夜(ひおう・かぐや)の四人だった。
「まあ平気ですよ。何せお空には頼れる味方が三人もいるんですからねぇ。何より、こんなにも美しいもののために戦っているのですから、負ける道理などどこにもありはしません」
「作戦成功率 30%」
「って言ってますよ!? 全然低くいじゃないですか!」
「うろたえるな……我らにできること……そう多くはあるまいて……」
「そ、それはそうですけど。やっぱり不安になりますよ! せっかくここまでやってきたのにこれだけ押されムードだと」
 そう言いながらも迫り来るゾンビを各個撃破していく四人。ゾンビたちもあと少しのところにまで来ているのにさぞ歯がゆく思っているだろう。
「どれだけ押されていても、負けることなどありえませんよ」
「ど、どうして言い切れるんですか? 何か秘策でも?」
「いいえ、何も。ただ、彼らはゾンビ。化け物です。化け物はいつだって負けるものなんですよ、人間にね」
「我らが……人間でなくとも……他のものがいる……」
「作戦成功率 50%」
「そんなものなのでしょうか? 人間よりも体がでかかったり、力が強かったり、生命力があったりして」
「ですが、人間ほど美しくはない。花を愛でることすらできない化け物たちに、この世界を跋扈する資格などないんですよ……ですから」
 エッツェルに襲い掛かろうとしたゾンビだったが、エッツェルの刃付き触手の前に斬り伏せられる。
「アンデットがこの世界を歩くことなど、許されはしないのです。たとえそこにどのような経緯があろうとも。だからこそ還りなさい、原始へと」
「作戦成功率 80%」
「さっきから、どうしてあがっているんですか! 故障とかだったら泣いちゃいますよ!」
「いや……恐らく……近いのだろう……」
「近いって、何が? ってな、なんですかこの数は!? いきなり増えすぎじゃないですか? これ以上はもう持ちこたえられませんよ」
 いきなり増えるゾンビ、更に大地からいきなり現れたゾンビの手に捕まれて身動きが取れなくなる三人。
「くっ……ちょこざいな……」
「作戦成功率 95%」
「なんでこの状況であがってるんですかー! やっぱり故障じゃ」
「大丈夫です。アーマードにはもう見えているのですよ。私たちが渇望し、彼らが絶望するであろうその瞬間が」
 エッツェルが攻撃をやめる。それを見た輝夜がたまらず叫ぶ。
「だ、だめです! 今エッツェルさんが止まったら誰も対処できなっ」
 四人の横をゾンビがすり抜けて、ついに像を取り囲む。勢いそのまま、ゾンビが突進する。誰もがもうダメだ、と。そう思ったとき。
「作戦成功率 100%」
「さあ還りなさい、暖かな光に抱かれて」
 像が、光り輝く。そう、夜明けの光が像を照らしているのだ。徐々に像の周りにいるゾンビたちにまで光が及ぶ。
 光を浴びたゾンビたちは、悶えることなく、苦しむことなく、静かに塵へと戻っていった。
 やがて、荒野全体が夜明けの光に照らされ、無数に存在していたゾンビを全て土へと還していった。
 久方ぶりに見た夜明けは、空からでも大地からでも美しく、この地を守ってくれた契約者たちに感謝するかのように暖かく迎えてくれるのだった。

 それから数十分後、あたりはすっかり明るくなり、今までゾンビと派手に戦っていたとは思えないほど澄み渡っていた。
 長い長い戦いも終わり、山葉から無線で連絡がきた。
『みんな、よくやってくれた。とてつもない劣勢を耐え切ったこと、感謝したい』
 戦いきった者たちを労う山葉。
「っと、ようやくご登場か。さてはて、終わった後に言うのも野暮だが、仕方ねぇな」
 そう言って無線を引っ手繰ったのはアストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)だ。傍らにはリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)も一緒にいる。
「さて、終わった後に確認ってのもおかしな話だが、一応聞いておくぜ」
『なんだ?』
「今回の依頼はまだ特別悪さをしたわけじゃねえ、ただ自分たちの居場所を守りたいだけの奴らを、力でねじ伏せて追い出しちまおうってことでよかったんだよな?」
『……』
「俺たちのしたことはあくまでもこっちの都合だ。必ずしも正しいってわけじゃない、正義を語れるものじゃない、ってことは割り切ってるわけだな?」
『……確かにそうだ』
「ならちゃんと、校長として新人にも言ってやらねーとな。健やかな精神を育成するのも校長サマの役目だろう?」
『そうなだ。皆、聞いてくれ。今回の依頼は決して絶対的な正義ではない。あくまでも二つの像を守ることと、ゾンビの居場所を確保することを天秤に掛けた上で、結果的に二つの像を守ることになった相対的な正義だ』
 誰もしゃべらない。山葉は、続ける。
『俺たちは俺たちの都合で、ゾンビたちの居場所を取りあげた。それは決して、正しい事ではない。だが、それでも君たちがやったことは間違いでもない。それだけは勘違いしないでくれ』
「それで、結論は?」
『いつでも絶対の正義なんて存在はしない。だからこそ、君たちの物差しで正しいと思うことを取捨選別していってくれ。俺からは以上だ』
「なら、俺からももう何も言うことはねぇな。勝利の余韻のお邪魔、失礼したぜ」
 それだけ言って元いた場所へと戻るアストライト。その横に立って、リカインが話しかける。
「不器用ね」
「器用だと思うがね」
「まあ、いいんじゃない。私はいいと思うわ」
「バカ女にいいって言われてもな」
「なによ?」
「やんのか?」
 そうしていがみ合いが始まるか否かの瀬戸際。二つの像から暖かな力が沸き出て行く。

「―――――――――!」

 暖かな力が一瞬ぎゅっと一点にあつまり、次の瞬間荒野全体に弾けわたる。雨のように荒野に降る暖かな力は、やがて大地へと還る。
 
ポコンッ

 一つ、小さな目が出た。それに呼応するかのように次々と小さな芽が吹き出していく。空からは飛空挺に乗ったルカルカが持参してきた様々な植物の種と、聖水で水撒きをしていく。
 荒れた大地はみるみるうちに緑に染まり、風が凪ぐのが見えるまでとなるほどにまで立派に育った。
 その真ん中に位置していたあの崩れかけた建物も、今では遺跡のように不思議な雰囲気をかもし出している。
 すると、遠くの空から鳥たちがやってきた。二つの像に止まり、首をせわしなく動かして鳴いている。
 ようやく、二つの像の願いは無事に叶ったのだ。
 それを見ていた者たちの横でリカインはアストライトに再度話しかける。
「私も正義とか悪とか好きじゃないけど、こういうのは悪くないんじゃない?」
「さてね、まあ昼寝ができそうなところでいいんじゃねーか」
「ったく、本当に素直じゃないわね」
「お好きにどーぞ」
 口には出さないけれど、二人もまた横で喜んでいる契約者たち同じくして、微笑んでいるのだった。
 最後の仕事は、二つの像を何とか運搬して建物の真ん中に、向かい合わせるようにして並べることだ。
 その仕事も無事に終わり、これにてようやく長い長い防衛戦が終わったのだった。
 無論、彼らが信じた夜明けの勝利と共に。

担当マスターより

▼担当マスター

流月和人

▼マスターコメント

どうも流月です。このシナリオに参加してくれたMC及びLCと共に
長い間戦っていたような気がします。お疲れ様でした。
像に対する様々なアクション寄せていただいて大変勉強になりました。
今後とも勉強させていただくつもりなので、お見かけしてそういえば
こんなやついたなぁと覚えていれば参加していただけると嬉しい限りです。
次の予定はまだですが、見かけたら生暖かく見守ってやってください。
それでは。

▼マスター個別コメント