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少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 3/3

リアクション公開中!

少年探偵 CASE OF ISHIN KAWAI 3/3

リアクション

ページ10

10−1

ぱっと見、身長が180センチくらいはあるひょろりとした細身の少年と、彼もよりもさらに背が高く、肩幅も広く、胸板も厚い、警備員の制服を着た青年が、通路で立ち話をしている。
二人とも東洋系のようだ。チャイニーズ、コリア、それとも日本人だろうか。
あなたは

細身の少年に話しかける→6−10
警備員服の青年に話しかける→4−8

10−2

整備士らしい少女たちは、あなたが近づくと自分たちから話しかけてきてくれた。

「私は長谷川 真琴。天御柱学院整備科で教官をしています。
コリィベルをこれ以上、戦闘に巻き込まない方法を探してるんです。よろしくお願いします」

「見ず知らずのやつになにをお願いするんだよ。真琴はへこみすぎだぜ。
悪いのは天ヶ原の野郎だけどよ。
あたいはクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)。真琴の相棒だ。あんた、機械はすこしはいじれるかい」

「すまない。僕にはまるでわからないな」

あなたの返事に二人は暗い表情で頷く。
クリスチーナ自身の言葉ではないが、出会ったばかりあなたにまで手助けを求めるほど、彼女らは困っているらしい。

(それは、おもしろいな)

「天ヶ原は頼ってはダメ。なんとかしなくちゃ」

一目でわかるほど、あせっている真琴にあなたは、

ここにいてもしかたない。いまこれを操縦している人間に会いにいったら、どうだい→8−1 
天ヶ原くんが目をさませばことがまるくおさまるのなら、彼を起こす努力をしてみたら→3−2

10−3

「意識がもどってよかった」

あたしが目を開けるとそこには、あいつの顔があったわ。
あいつ、そう、医者の卵の九条ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)よ。
彼女があたしを看てくれてたってわけね。

「起きたのか。心配したよ」

とかクールに言いいながら、病人(あたし)のいる部屋でタバコに火をつけた革ジャンの女は、あたしのパートナーの菅原 道真(すがわらの・みちざね)

「意識だけがなかなか戻らなかったんだ」

本当は情に厚いやつだってことは知ってるけど、道真の声はいつもどこか他人行儀にきこえる。

「旅行に行っていたの」

「それはつまり夢をみてたって意味かな」

「菫。ヤバくないか」

九条も道真も目をまるくした。

「ほんとよ。ところで、事件はもう終わったの。
あたし、今回の事件の一部始終をみてきたんで、なんでも話せるんだけど。
道真。ここの館内放送がまだ生きているなら、あたしのしてきた不思議体験をみんなに語って聞かせたいから、放送の用意をしてくれない」

「了解」

しょうがねぇなぁという感じで道真が動きだす。

「九条もヒマならあたしの話を速記しなさいよ。
あたし、今回の事件をマジェの「牝牛の乳房」(娼館よ)のマダムに報告しないといけないの。
いい。ちゃんと書いてね」

「私はきみの容態が気になるんで、もう少し側にいるよ。わかった。速記だね」

道真と九条の準備が整いしだいあたしは話しはじめるわ。
ゆりかごで張り巡らせれていた数々の陰謀の顛末をね。

END

10−4

コリィベル2の廊下であなたは奇妙な一団と出会った。
男一人、女四人の六人連れだ。
怪しげな長衣を着たメガネの男性とにぎやかな女性陣。
男は、いきなりあなたをにらみつけ、全身から不機嫌さをにじみださせながら、こちらに歩み寄ってこようとする。
彼の腰にしがみついたのは、和風のキモノを着、首に大きな鈴をぶらさげた、ネコ耳の少女だった。

「ビックブラザーのお兄ちゃん、どこ行くにゃー。
みかげやご主人、衿栖ちゃんや未散ちゃんと一緒にいるから、今日は幸せだって言ってただにゃー。
怖い顔して、知らない人にむかっていっちゃダメだにゃー♪」

ビックブラザー。
コリィベルでは有名な受刑者の一人だ。
なるほど、メガネの彼があのBBか、とあなたは納得した。
バイオテクノロジーの優秀な研究者にして、狂信的なアイドルファンである彼にとって世界とは、自分と自分が溺愛するアイドルたちのために存在しているのだろう。
BBにしてみれば、僕は視界の隅にあらわれた邪魔者だな。
ネコ耳少女になだめられたBBは、あなたからようやく視線をそらした。
あなたは

ネコ耳少女に礼を言う→2−4 

あなたに心配げな視線を送っている少女たちに話しかける→3−3 

10−5

「そうなんですねぇ。
せっかく見学にいらしたのに、ツイてなかったですよね。
私も今日はお友達に会いにきただけだったんですけど、こんなことになってしまって、すごくすごく驚いているんです。
あ。自己紹介が遅れてしまいましたね。ごめんなさい。私、百合園女学院の橘 舞(たちばな・まい)です。
よろしくお願いしますね。
いつだって人と人との助け合いはとても大事なんですけど、こんな時こそいつもよりもさらにそれが重要になると思うんですよ。
あなたもそう思いませんか」

あなたが舞と話しているうちに周囲の人間たちは慌ただしく動き、あなたも舞と一緒に小型飛行艇に乗せられてしまった。舞の仲間の一人が非物質化して持ち込んだものをここで再び物質化したのだ。
栗色の髪の少女が攻撃魔法で壁にあけた大穴から、飛行艇はコリィベル1をでてコリィベル2へむかった。
コリィベル2への着地も、正規のドックは使わずに、栗色の髪の少女が再び魔法で外壁を壊して強行突入だ。
さてコリィベル2に侵入したが

舞と話し続ける→4−1 

状況を把握したいので周囲をみる→2−5 

10−6 

コリィベル1をさまよい歩くあなたは、ある一団の前で足を止めた。
青年、少年、少女合わせて十人以上いるそのグループは、全員があなたにぶしつけな視線をむけている。
あなたは

銀髪の品のよさそうな少年に声をかける→7−2 

この場を離れる→9−7 

とりあえず、助けを求めてみる。「はじめまして。実は、迷ってしまって、困っているんだ」→4−7 

10−7

すべてを見通しているようなヒルデガルトの口ぶりに嫌悪感と同時に興味を持ったあなたは、立ち止まって彼女の言葉に耳を傾けようとした。

「おもしろいな。
きみはボクよりもボクについて知ってるみたいだ。
ボクが何者で、なぜ、ここにいるのか教えてくれないか。
実は、ボク自身にもそれがよくわからないんだよ」

聖女はわずかに目を細め、一瞬だけ悲しげな顔をした。

「人はみな、それを探して人生の旅をしているのです。
あなたの旅の行き先、目的を決めるのは、あなたの神、つまり、あなた自身なのですよ。
わかっておられるでしょう」

「きみは、なんでも知ってるようなこと言っておいて、結局は、わけのわからない理屈で人を煙に巻くんだな。
宗教者はみんなそうさ。
きみは間違ってるよ。ボクは神なんかじゃない」

「ヒルデは間違っていないわ」

あゆみが言い返す。

「私には、道のほんの少し先が見えるだけなのですよ」

まったく宗教は屁理屈ばかりの気休めだ。
ヒルデガルトの取り澄ました聖人面に、唾でもはきかけてやろうとしたのだが、とっさに背後に人の気配を感じて、

「お母さんが・・・・・・あなたを逃しちゃいけないって教えてくれたの。
ハツネの好きにしていいって・・・・・・だから、壊すね」

振りむく余裕もなく、床に崩れ落ちた。
刃物で切り裂かれたらしい首の傷からは、大量の血が流れ出している。
すでに声をだすこともできなくなっていた。
まぶたを閉じる力もない。
世界が薄らいでゆく。
少女、斎藤ハツネ(さいとう・はつね)によって、あなたの幕はおろされたのだ。

END

10−8

廊下を歩いていたあなたは館内照明とは異質の光を感じて、そちらへと足をむけた。

「光よ!
てね。あはははは」

少年が☆型アクセサリーのようなものを掲げている。
あなたは☆型から不思議な光がでているのをみた気がしたが、すぐに見直すと、それはもう消えてなくなっていた。
なにかあったのか、廊下の一角に数人が集まっている。
よくよく見てみると、整備士などが着るツナギ姿の少年が一人横になっていた。
事故でも起きて、それで人が集まっているのだろうか。

(彼はケガ人なのか)

「きみは誰や。ボクらになんか用があんのんか」

奇妙なイントネーションでしゃべる長身、長髪の少年に尋ねられて、あなたは、道に迷い、コリィベル内をさまよっているとこたえる。

「迷子さんはどこへ行く気ニャ」

少年の足元には、二本足で立ち、普通に話す、猫の獣人がいた。背中に小さな翼があり、首には真ん中に黒い色石のついたリボンを巻いている。その口調からして、女の子らしい。

「出会ったばかりだけど、ミディーはむこうのコリィベルへ行くからさよならにゃ。
大阪弁。早く、窓を開けるニャ。あっちで、ダメダメな機械わんこがまた大ピンチになってるにゃ。
まったく、あのワンコはミディが側にいてやらないと、なんにもできないにゃ。
でも、大阪弁に心配だにゃ。みんな手がかかりすぎて、ミディの猫の手は二つじゃたりにゃいにゃ」

「ほんま、忙しくて、ご苦労さまやな。そしたら、ミディ気ぃつけてな。代表や春美たちによろしく。
ボクもそのうち合流するっていうといてくれ」

「あっちはミディーがいくから大丈夫にゃ。大阪弁は、死体と☆から目を離しちゃ絶対にダメだからにゃ。ここで重要なのは、その二つにゃ。ミディにはとっくにわかっているにゃよ。
じゃ、行ってくるにゃ。あ。それとミディーの代わりに、ひっつきむし おなもみ(ひっつきむし・おなもみ)を呼んどいたにゃ。

「週刊少年シャンバラ」に連載を抱えてる漫画家なんで、気持ちも体も余裕はないけど、よろしくにゃ」

ミディーが指さした廊下の方向から原稿用紙を脇に抱えた少女が走ってくる。
少女は、ミディーとカリギュラの前にくると、ぺこりと頭をさげた。

「おろろ。ミディーにお兄ちゃん。
ミディーはなに?
彼氏んとこ行くって? 
代わりにおなもみに来いって。
恋するネコはかわいいなー。って、いたた、ひっかかないでよ!
はいはい、そんなんじゃないんだよね分かったよ。最初から口で言ってよ、もー」

「悪いなおなもみ。そこらへん、目につくもんなんでもスケッチしといてくれ。
いつ、何が役に立つかわからんからな」

「了解。なにごともネタになるのは、漫画家も一緒だからね。ガンガン描いちゃうよー」

「とりあえず、さよならにゃ」

ネコ獣人、ミディー(ミディア・ミル(みでぃあ・みる))は、少年が開けた窓の縁に立った。ミディーが呼んだらしいワイルドペガサスがどこからとまなくあらわれ、ミディーを乗せ、空を駆けてゆく。
ミディーが行ってしまったので、あなたは再び長髪の少年に話しかけた。

「僕は自分がなぜここにいるのかわからないんだ。
名前さえ、わからない。きみらはここでなにをしているんだ。
倒れている人はケガ人かい。
それにさっき、こちらから不思議な光線がでてるのをみた気がして、ここにきたんだけど、あれはなんなんだい」

「すまんけど、お答えできない質問が多いんやけど。まずな、そやな、自己紹介な。ボクは、カリギュラ・ネベンテス(かりぎゅら・ねぺんてす)
百合園女学院推理研究会のみんなとコリィベルに、きみ、コリィベルはわかるだろ」

「この建物の名前だろ。それくらいは、なんとなく」

「正解ですわ。
そんで、話は飛ぶんやけど、コリィベルは一つではないんや。
早い話がコリィベル同士でドンパチしとる。
そこで寝とんのが、このコリィベルの技術主任みたいなやつで、天ヶ原明。
一見、言い方がアレやけど、死んどるみたいにみえるやろ。でもな、医者によるとそうでもないんやて。
ほんで、きみのみた不思議な光ちゅうんは、そこの小さな子が持っとる☆型のおもちゃな。
そっからでてたんやと思うんや。あれは正体不明や。
あっこにもなんか秘密があると思う。
そこらへんもあれこれ大変なんやけど、やっぱ、一番、大事なんはこのコリィベルを無事、動かし続けることやろ。
別のやつにやられてしまっては、元も子もないやんか」

「やられるとは、つまり」

「さっきもえらい揺れたやろ。やられるちゅうんは、別のやつに撃たれてどかーん、おしまい、ちゅうことやな。
それをどうにか避けるために、ここにおる技術屋さんたちが知恵をしぼってくれてるんや」

「なるほど。きみはなにをしているんだい」

「ボクか、ボクはたまたま通りかかっただけや。みなさんのお役に立ちたいとは思っとるんやけどな」

最後にカリギュラはへへと笑い、頭をかいた。
彼の説明のおかげで、ここでなにが起きているのかだいたいはつかめた。
あなたは

☆を持っている幼い男の子に声をかける→9−6 

医師らしき白衣の人物に診察を受けている天ヶ原明の側へ→5−4 

立ち話をしているツナギ姿の少女たちに話を聞く→10−2 

10−9 

穴を抜けて、その先にあった廊下をあなたは進んだ。

「おろ。遙遠殿がくるのを待っていたら、全然、別の人がやってきたでござるよ」

緋色の和服を着、茶色の長髪を首のうしろで一つにまとめた細身の青年が、あなたをみて目を丸くする。

「遙遠はまだ戦闘中だ。僕はそれに巻き込まれそうになって、逃げてきたんだが」

和服の青年の他に、三人の男女がそこにはいた。
忍者を思わせる黒装束のぼさぼさ頭の少年と、どこか顔立ちの似ている兄妹らしい少年と少女。
少年、少女とはいっても、彼らはみな、十五、六歳くらいにはみえるので、実際はもっと年上のものもいるのかもしれない。

「拙者は、剣山梅斎でござるよ。逃げるにしても、どこにいけばよいのかわからぬのなら、拙者たちと一緒にくるでござるか?」

剣山以外の三人のあなたにむける眼差しは冷たい。

「僕は、記憶がはっきりしなくて、自分の名前も、なぜ、ここにいるかも知らなくて、コリィベルをさまよっているんだ」

「怪しいことこのうえないですが、剣山さんが連れていきたいっていうんなら、僕が別にかまいませんけどねぇ。あ、僕は八神 誠一(やがみ・せいいち)っていいます。ただ、一緒にくるのはかまいませんが、自分の身は自分で守ってくださいねぇ。僕らとくるイコール安全ではないことを忘れないでくださいよ」

黒装束の八神は、めんどくさげにあなたの同行を認めた。正直、八神にとってあなたはどうでもよさそうだ。

「俺も誠一と同意見だな。
一人でさまよい歩くより、誰かといた方がいいと思うんだ。ここは危険な場所だからね。俺は、セルマ・アリス(せるま・ありす)。ここにいる妹のリンゼイ・アリス(りんぜい・ありす)と剣山さんに会いにきたんだ。よろしく」

セレマは人のよさそうな少年で、自分からあなたに握手を求めてきた。あなたが手を握ると、セレマは穏やかに微笑んだ。彼の妹のリンゼイも笑顔で、

「剣山さんも、八神さんも、そしてもちろんセルも甘いですね。あとで後悔するはめになるのに、セルが考えなしに他人に甘いのはいつもですが。
他の三人がいいと言う以上、あなたが同行するのを止めることはできませんが、私はあなたと道連れになる気はありません。あなたを危険視しているというのが、正直なところでしょう。怪しいまねをするつもりならば、常に私の目が光っていると思ってください」

兄とは反対に厳しい意見を述べた。あなたは、リンゼイの笑顔を眺めているうちに彼女がその表情しかできないのに、気づいた。

(つまり、この少女の本心は、言葉の方なんだな)

「迎えがついたみたいですよぉ」

気の抜けた八神のつぶやきと同時に、轟音が響き、壁が壊れた。壁の外側の空中には、小型の飛行艇が浮いている。飛行艇からの攻撃で壁は破れたらしい。

「計画通りに誠一がここにきてるってこたぁ、いろいろヤバイって意味だね。
予定よりも、連れが多いじゃねぇか。
いいや。早く乗りな。剣山とかってやつを連れて空京へ帰るんだったよな。どうするよ?」

外部スピーカーから少女の声が流れてきた。

「飛行艇を操縦してるのは僕の相棒のシャロン・クレイン(しゃろん・くれいん)です。もともと、この時間にシャロに迎えにきてもらう作戦だったんですよぅ。じゃ、みなさん、乗ってください。ホバリングしてる飛行艇に乗り移るわけですから、足元に気をつけないと地上十数メートルから落下しちゃいますからねぇ」

六人は全員、飛行艇へと移動する。

シャロンは、飛行艇をコリィベル2にたくみに接近させ、ついさっきコリィベル1にそうしたように、外壁を攻撃して穴をあけた。さらに煙幕を投下する。
もうもうとたかれた煙幕にまぎれて、六人はコリィベル2へと潜入した。

「あたしもすぐに行くからね。あんたたち、あたしが行く前にくたばるじゃねぇよ」

飛行艇はいったん、コリィベル2を離れてゆく。
あなたたち五人は、八神と剣山の二人を先頭に廊下を走った。
大石鍬次郎(おおいし・くわじろう)を討つ。剣山の目的のために、あなたたちは、ここへ来たのだ。
あなたは飛行船をおりた時点で別行動をとってもよかったのだが、

(殺人。または暗殺か。おもしろそうだ)

飛行艇内で彼らの作戦を聞き興味をおぼえたので、望まれてもいないのに付き合っている。

「八神無現流。さすがでござるな。コリィベル2の存在も、大石たちの居場所も先刻、ご承知とは」

「下調べが大事なのは、この稼業の常識ですよぉ。剣山さんこそ僕がいなくても、これくらいは知ってたんじゃないですかぁ。大石に狙われてるってことは、逆をいえば、剣山さんもあいつらをマークしてたって意味ですよねぇ。コリィベルで仮面囚人をしてた剣山さんが知らないわけないですよぉ」

「買いかぶりでござる」

のんきな口調で話しながらも、二人はすごいスピードを廊下を駆け抜けてゆく。
しかも、彼らに気づいたスタッフが、攻撃してくる前に剣山か八神のどちらか攻撃か、放った手裏剣や鋲などが、相手の意識と自由を奪う。
二人の動きが速すぎて、あなたは彼らがどう動いているのか、まるでわからない。
次々と通路に倒れる敵たちの姿で、あなたは二人の行動を推測している。
まさに無敵の進軍だ。

(十分に訓練された暗殺者というのは、素晴らしい生物だな。なんて、愉快なんだ)

こみ上げてくる感情を抑えきれず、あなたは、声をあげて笑ってしまった。

「なにがおかしいんです」

横を走るセルマがたずねてくる。

「当然、頭じゃないかしら」

あなたでなく、リンゼイがこたえる。走っていても彼女は笑顔のままだ。
剣山と八神が揃って足をとめた。
あなた、セルマ、リンゼイも走るのをやめ、彼らの後ろに立つ。
五人の前、廊下の中央には、トレンチコートをはおった青年が立ち、片手に持った手帳をこちらに突きだしている。
黒革の手帳には、桜の花らしき金色のエンブレムが刻印されていた。
あなたは、あの手帳にみおぼえがある。

(桜の代紋か。ジャパンの警察のライセンスだったな)

「スコットランドヤードのマイト・レストレイド(まいと・れすとれいど)警部だ。
どこへ行くつもりなのか聞かせてもらおうか」

剣山と八神の鋭い視線にも臆せずに、マイトは二人に歩み寄ってきた。

「日本の昔の警察手帳を手にしたヤードの警官でござるか。しかも、その若さで警部とは。そなたは本物の警察官ではないのでござろう。拙者の邪魔をせぬ方が身のためでござるよ」

「僕らは大石鍬次郎(おおいし・くわじろう)に会いにきたんだよぉ。お巡りさんは、大石の味方なのかなぁ」

「俺がヤードの警部になるのは、確定された未来だと考えてもらおう。
俺は未来を先取りして名乗っているだけで、嘘はついていない。大石の件に関しては、俺たち、百合園女学院推理研究会が事態の解決をすすめている。解決はすでに時間の問題だ。
大石の言動のすべてを肯定するつもりはないが、この場は俺たちに任せて、諸君らはおとなしくしていてもらえないだろうか」

「できぬな」

剣山はマイトの言い分に即答した。

「拙者は、大石に名指しで殺害を宣告されたでござる。そなたの言葉だけで納得できるわけがなかろう。
大石だけでなく、背後にいる天ヶ原明とも決着をつけたい」

「それはそうかもしれないが。俺を信じて欲しい。大石の件は、これ以上の無駄な流血はなく、解決できそうなんだ」

「ニセ警官を信じろといわれてもねぇ。僕も剣山さんに右に同じだなぁ。天ヶ原とかってさぁ、武力で倒すしかない気がするんだよねぇ。僕の経験上、あのタイプは口で言ってもムダというかぁ、話すだけ時間がもったいないんだよねぇ」

「頼む。待ってくれ。大石は、天ヶ原の全面的な味方ではないんだ。
館内放送は、あれは、フリだ。俺たちは大石の仲間の斎藤時尾(さいとう・ときお)から情報提供を受けて、事態を穏便に」

剣山をとめようと、必死になっているマイトにあなたはいらだちを感じた。

(こいつがいては、パーティーがここで終わってしまうおそれがある)

あなたは

マイトを始末する→9−10

もう少し様子をみる→2−11

10−10

爆弾設置に集中している敬一の背後に何者かが忍び寄ってきた。

「危ない。後ろだ」

あなたの叫びに敬一はとっさに身をかわす。

「クックックッ。去り際に一人ぐらい殺しとこうかと思ったのによ。
今日はツイてねぇみたいだな。
しょうがねぇ。長居は無用だな。行くとするか」

日本刀を持った黒い着流しの男は、それ以上は敬一を攻撃せず、あなたを一瞥し、身をひるがえす。

「セット完了だ。
すぐに爆発するぞ。ここから離れよう」

敬一が側にきて、あなたの肩を叩いた。

「これから俺は、コントロールルームにいるはずの蒼也と合流する。
おまえは、どうする」

敬一についていく→8−8 

10−11

セレマ団の首謀者という言葉に興味をひかれて、あなたは、リリたちを追いかけた。

「これ以上無駄に時間を費やすつもりはないのだよ」

リリは走りながら、前方をゆく白ねずみ? へ四匹のサラマンダーを放つ。

「左右から挟んで、逃げ場をなくし、後ろからあおって行き止まりへ導くのだ」

リリの指示通りに火蜥蜴たちは、コンビネーションよく標的を追いつめ、壁際で包囲した。
全身が炎で包まれた蜥蜴が、壁を背にした白ねずみを囲んでいる。
リリとララ、あなたは、走るのをやめて、ゆっくりと白ねずみに近づいていく。

「闇が穢れとは限らぬのだ。呪いから得る力もあるのだよ。おまえの場合は、まさしく、そうなのだ」

ロングの黒髪、理知的な眼差しを持つリリは、まるで秘密の儀式でも行うように厳かに手をのばし、白ねずみをつかみあげた。
己のブラウンの瞳の前に手をよせ、白ねずみと目を合わせる。

「呪いの正体が自分からでてこないのであれば、リリはこいつを握りつぶすのだよ。
しょせんは、ただのねずみとはいえ、散々、いいように使った憑代を最後はあっさり見捨てるようでは、黒幕としても品性劣悪なのだ」

一見、白ねずみと会話しているようにみえるが、どうやらリリは、ここにはいない何者かに話しかけているらしい。

(つまり、きみは、ボクに会いたいのかい)

再び、あの声があなたの頭に響く。
遮るように、リリが叫ぶ。

「いい加減にするのだよ。リリには黒幕が誰なのかはわかっているのだ。
こんな小さな白ねずみの背後に隠れて、あくまで表にでてこないとは、貴様は噂以上の卑劣さの持ち主なのだな。
リリが調査していたメメント・森をセレマ団に殺させたのも、自分が裏で糸を引いているセレマ団の所内での麻薬の販売ルートが森にあらされるのをおそれたためなのだろう」

(うん。
ボクは別に直接指示はだしていないけどね。
最近は、教団の連中が、目はしのききそうな犯罪者が入所してくると自発的に粛清するようになっていたのさ。
自分たちの邪魔をされないためにね。
でも、アリーはそれには反対していた。だから、アリーは、記憶障害者の森にだって警告のヘナタトゥーを入れて、彼を助けてあげようとしたんだ)

「貴様は、なんの目的でアリーに麻薬をつくらせ、所内にはびこらせたのだ」

(まるで、すべてボクが裏で糸を引いていたみたいな言いぐさじゃないか。
ひどいなぁ。
まぁ、正解だけどね。
簡単な話さ。僕は、この危険なゆりかごをもっと安全な場所にしようとしていたのさ。
きみは頭が良さそうだが、地球の昔の戦争で阿片戦争と呼ばれた戦いを知っているかい)

「なにを言いたいのかしらんが、なかなかおもしろそうな話のだよ。
白ねずみの皮をかぶったまま語り続けるのは、内容的にももう無理があるのではないか。
ヨン・ウェズリー」

(そこまでバレてるなら、しかたがないな)

「チュゥ」

リリの手の中でねずみが鳴いた。
急に身をよじり、暴れだしたねずみをリリは床に放つ。そして、ねずみが駆けていった先には。

「この子を利用しているのが、どうして私だとわかったんだい」

コリィベルのスタッフの制服を無造作に着、おまりの悪い黒髪を指でかきまわしている中肉中背の青年、ヨン・ウェンズリーが通路の影から姿をあらわした。
彼は足元まできたねずみを拾いあげると、「お疲れ様。大変だったね」と声をかけ、上着のポケットにしまう。
リリとララは、ヨンに歩みよった。

「おいおい。私はきみらと争う気はないんだ。
もし、きみと私の間に問題があるのなら、話し合いで解決したいね」

「それは貴様の身勝手な言い分なのだよ。
まずは、リリの目の前で森を殺した借りをかえすのだ」

「ぐぅ」

ノーモーションで、リリのブーツの爪先がヨンの腹にのめり込んだ。
リリの前蹴りにヨンは、腹をおさえ、その場にうずくまる。

「頭はともかく、体の方はまるでダメなのだな。
歴戦の勇者が婦女子の軽い蹴り一発でダウンすると情けないのだ」

「す、す、すまないな。
私は、勇者でもないし、戦士でもない。
ただの軍人さ。きみはなぜ、私がセレマ団と関係があると思ったんだい」

しゃがんだまま、ヨンはつぶやいた。
リリはヨンを見下ろし、自分の推理を語りだす。

「たいした推理ではないのだ。消去法だ。
アリーに黒幕がいるとして、それは誰か。
どうやら、自分たちがつくった麻薬に汚染され、暴走を開始しているセレマ団の中に、そいつがいるとは考えにくい。
セレマ団を壊滅させるのなら、そんなまだらっこしい手段をとるよりも、カリスマであるアリーを殺害してしまえば、それですむのだ。
黒幕にとっては、セレマ団内の薬物汚染。さらには、コリィベル全体の薬物汚染こそが、まさに望んでいた形なのだよ。
おそらく、歩不がティーパーティーで、毒殺された森の首を切り落としたのは、死体を検死させ、森が薬物に汚染されている事実を外からきた探偵たちに示したかったからなのだ。
薬物と内部抗争でコリィベル全体を弱体化させることで、利を得るものは誰なのか。
まずリリは、黒幕の候補を現在、ゆりかご内で力を持っている所内の有名人たちにしぼることにしたのだ。
アリーとその仲間たちを利用してのゆりかご弱体化計画は、なんの力もない、未来に希望も持てないものが実行するには、手間もかかるし、大掛かりすぎる大事業なのだ。
とすると候補は、天ケ原。鴉。剣山。アリー。ヨン。シュリンプ。ビック・ブラザー。歩不。
まず、天ケ原と鴉は候補から省かれたのだ。
リリが収集した情報では、二人はようするに自分のチームを強くして、ゆりかごを自分の意のままにするのが目的なのだ。例え、ゆりかごを制圧できたにしたも、仲間をふくめ囚人のほとんどが薬物中毒者というありさまでは、二人にとっては意味がない。
剣山に関しては、情報を総合すると、やつはどうも暗殺者としての使命を帯びてゆりかごに潜伏していた感じなのだ。
それが成功したかどうかは、リリは知らぬが、ともかく、なので、剣山も違う。
そして、一緒にしては悪いが、歩不とビック・ブラザーは論外なのだ。理由は説明しなくてもよいであろう。
残るは、ヨンとシュリンプ。
リリが考えるには、シュリンプもまた貴様の犠牲者の一人なのだ。
ここらへんは所内の噂をもとにした仮説なのだが、シュリンプは、ゆりかごの内情を知るために外部から送り込まれた仮面囚人だったのだよ。
役者であるやつにはスパイはお似合いだったかもしれぬが、所内制圧を目論む二大勢力。天ケ原側とセレマ団の両方の様子を探るうちにどちらか、もしくは両方に正体を気づかれ消されたのだ。
結果、残るのはヨン。貴様だけになる。
今回の、裏で糸を引いてセレマ団を大きくし、所内に麻薬を流通させ、しまいには天ケ原の勢力との武力抗争を引きおこし、どちらも弱体化、崩壊させるというのは、まったく見事すぎる手口なのだよ。
弓月くるとなら貴様をみて、黒澤明の「用心棒」か、そのリメイクの「荒野の用心棒」、「ラストマン・スタンディング」らの題名を口にしたと思う。
しかし、ここまでは推理できたのだが、リリには、貴様の動機がわからぬのだ。
貴様は誰かから、ゆりかご制圧の依頼でも受けたのか」

「私はここに犯罪者として収容されただけさ。
私をアキラ・クロサワの「用心棒」に例えるのなら、誰かのためではなく自分の身を守るために所内クリーンアップ作戦を実行したとは、考えてもらえないかな」

まだ痛そうに腹をさすりながら、ヨンは立ち上がった。

「いまの言葉、リリには、ゆりかごが気に入らぬから崩壊するように手引きをした、ときこえたのだが」

「きみの推理は悪くないと思うよ。
アリーにも言ったけど、私はここでしたいことがあるんだ。実はいそいでいてね。失礼していいかな」

歩きだそうとするヨンをリリもララもとめなかった。
あなたも文弱そうな普通の青年にしかみえないヨンを黙って眺めている。
結局、ヨンはリリの推理をちゃんと肯定も否定もしていない。

「我が身を守るためだけに薬をばらまくとは。スラム街の犯罪者たちと同じだ。
不敗の悪魔とはよく言ったものだな。
きみのやり方には、センスのかけらも感じれれない。あわれな悪魔」

冷え切ったララの声に、ヨンは薄笑い浮かべた。

「私は、たった一人でここにきて、一人の兵も、一発の銃弾も使っていない。
もちろん、直接、誰かを傷つけも殺してもいない。
これが私のやり方さ」

不敗の悪魔ヨン・ウェンズリーか、なかなかおもしろそうな男だな。
あなたはヨンに、興味以上の好意に近い感情を感じていた。立ち去りかけているヨンをこのまま行かせてしまうのは、惜しい、いやつまらない気がする。
ヨンについてゆくべきか、あなたは迷う。
が、あなたが呼びかけるよりも先に、ヨンの足を止めたものがいた。

「ちょっと待ってくださいよ。ヨンさん。お兄さんは、いまの話は聞き捨てなりませんね」

すごいスピードで走ってきた青年は、ヨンの真正面に仁王立ちになり、しゃべりだした。
にやけた表情だが、目は真剣だ。
あなたは、彼に見覚えがある気がした。

「ようするにヨンさんは、自分を守るためにコリィベル内に麻薬を流通させて、たくさんの中毒者を生み出したってことじゃないですか。
お兄さん、こうみえても孤児でしてね、警察よりも犯罪者がはばをきかす暗黒街ならよーく知ってるんですよ。
子供の頃、ずっと暮らしてましたからね」

「とりあえず、きみ自身は、全責任が私にあるらしい薬物犯罪の被害者ではないようにみえるけどね。
過酷な環境で育ってきたお兄さんは、私になにを言いたいのかな」

クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)君。ひょっとして君はここまで私をつけてきたのか」

ララの問いに青年は力強く頷く。ララと青年と知り合いのようだ。

「ええ。美女は美女を呼びますからね。
ララさんについていけば、間違いなく、次の美人さんのところにたどりつけると考えたんですよ。
いったんはララさんの姿を見失ってしまいましたが、お兄さんは、ララさんの残り香を頼りにここまできたのです。
かぐわしい薔薇の香りを堪能させていただきました。
おかげでセレマ団のみなさんもみることもできましたし、いい旅ができましたよ。
お兄さんは、セレマ団というのは「「セ」クシーな「レ」ディーは「マ」ーベラス」という麗人至上主義! を略した団名の、色っぽい女性は素晴らしいという信条に命を賭ける紳士の一団なんじゃないかと予測していたのですが、アリーさんのための彼らの戦いぶりをみると、あながち間違ってはいない気がしますね。
話は戻りますが、だから、ヨンさん。身勝手な犯罪者のためにひどいめにあう人たちをいやになるほど見てきたお兄さんとしては、あなたみたいな人は」

クドは両手に拳銃を持ち、横向きに並べて構え、二つの銃口をヨンにむけた。

「負傷したセレマ団の方から拝借してきた銃です。
あなたに使うのなら、セレマ団のみなさんも人も怒らないと思いますよ」

銃声が鳴った。
あなたは、

ヨンを助けにゆく→7−9 
ヨンは自業自得なので事態を静観する→8−5

10−12

まずは落ち着いた感じの少女にこの場の状況をたずねようと思う。
「あなたが誰だか知らないけれど、私はリネン・エルフト(りねん・えるふと)。PMRの一員よ。
ここの状況ね。
私たちがいまいるのがコリィベル1。
砲撃を仕掛けてきたのがコリィベル2で、しかもこっちは毒ガスをもったイレブンの人質状態。けど…私にいい考えがあるの。あなた、手伝ってくれない」
あなたは、

リネンに協力する→7−12 

他の人の話も聞きたいので露出度の高いビキニタイプの服を身につけた少女→5−12

10−13

せわしなくあたりを見回している少女に、あなたは声をかけた。

「きみは、いったい、どうしたんだい」

「えっと、あ、知らない人さん、こんにちは。ワタシはPMR、パラミタミステリー調査班のミレイユ・グリシャム(みれいゆ・ぐりしゃむ)だよ。
PMRの仲間のイレブンさんがヘンな治療を受けて、11号になっちゃったり、治ったかと思ったら、どっかから持ってきた毒ガスで講堂を占拠しちゃったり大変なんだよっ。
ワタシたちっていうか、リネンさんが、イレブンさんにこれ以上、バカなことをさせないように作戦を考えてくれてるんだけど、ワタシの使い魔の智慧の蛇にするする〜っとイレブンさんの背を伝っていってもらって、手に持ってる水晶玉にぐるぐるに絡みつくのはどうかなぁ?」

ボブカットの赤い瞳の少女、ミレイユは、話しながらも、足踏みをし続けている。

「あの、きみはどこかへ行きたいのかい」

「うん。ワタシはね、パートナーのシェイドが心配なんだ」

ミレイユの声のトーンがやや落ちる。

「シェイド、どこに行っちゃったのかな。大丈夫かなぁ」

「そんなに心配しなくても、シェイド兄ちゃんは、大丈夫だと、ロレッタは思うんだぞ」

「えーっ。そうかなぁ。ワタシもそう思いたいけど、でも、こんなワケのわからない場所で、いなくなるなんて。
だいたいこういう時には、あの人がからんでるし。だから、余計に」

「意外に近くにいるから、心配無用なんだぞ」

ぬいぐるみを抱えた七、八歳くらいの女の子、ロレッタが、少女らしい外見にあわない力強さで、ミレイユを励ます。
あなたは、今度は、ロレッタに尋ねた。

「シェイド兄ちゃんとは誰だい。
僕は自分が誰なのか、わからなくなって困っているんだが、もしかして、意外に側にいるシェイド兄ちゃんとは、僕のことなのかい」

「おまえは、シェイド兄ちゃんとは全然違うんだぞ。
シェイド兄ちゃんはシェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)で、ロレッタはロレッタ・グラフトン(ろれった・ぐらふとん)なんだぞ」

(そうか。僕ではないのか。
シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)

シェイドの名前を思い浮かべるだけで、なぜか、あなたの頬はゆるみ、笑いだしたい気分になる。
あなたはそんなあなたをどこかから冷たく鋭くみつめる視線を感じていた。

シェイド・クレイン(しぇいど・くれいん)が僕をみてる、のか)

「な。だから、心配いらないんだぞ」

「うん。そうだね。だったら。わかったよ」

あなたが物思いにふけっているうちに、ロレッタがミレイユになにかを耳打ちし、それを聞いたミレイユは足踏みをやめ、さっきまでとは違う、よそよそしい表情をあなたにむけた。

「知らない人さんがシェイドに会いたいんなら、コリィベルの中で本当に追い詰められれば会えると思うよ」

「僕が、追い詰められるとは」

「探偵さんたちに追っかけられて、逃げ場がなくなるとかじゃないかな」

「ロレッタもそう思うんだぞ」

二人は揃って、どこか怖いものを感じさせる笑みを浮かべた。

「わけがわからないな。僕にわかるように説明してくれないか」

「それはムリなんだぞ」

「どこかでシェイドが待ってくれているのかい」

あなたの問いに二人はこたえない。これ以上の会話はムダだと感じたあなたは、リネンと呼ばれる少女に声をかけることにした。

リネンにも話をきく→8−12