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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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【神劇の旋律】ストラトス・チェロを手に入れろ

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第九章 黒幕、動く 1

 ともあれ、こうして黒幕と目される「偽ディオニウス三姉妹」が撃退され、その報告がもたらされると、邸宅周辺での戦闘は一気に収まり始めた。
 オリュンポスが出張ってきたおかげで結果的に事態が収拾する方向に向かった、極めて珍しい事例であるといえよう。

 ……が。

 すでにご存じの通り、本当の黒幕は他にいるのだ。

「……ちっ、混乱が収まってきたか。
 やはり俺がもうひと押ししないとダメなようだな」
 吐き捨てるようにそう言って、レガートは再び近くの猛獣たちをかき集め始めた。





「北から敵襲! また猛獣の群れです!」
 小型飛空挺で偵察していた六連 すばる(むづら・すばる)からの報告に、一同に緊張が走る。

 本物のディオニウス三姉妹は、全員がその姿を確認できる場所にいる。
 そして、偽物のディオニウス三姉妹は、すでに撃退されているはずだ。

 だとしたら……真犯人は、他にいたということになる。

 予期せぬ展開ではあったが、真っ先に反応したのはロアとグラキエスだった。
「よっしゃあ! 今度こそ狩りの時間だぜぇっ!!」
「よし、俺たちも行こう!」
 予想外の対人戦、それも本気で戦う雰囲気ではない状態で、特にロアの方はストレスを発散するどころか逆にストレスをため込んでいたのだ。

 それを機に、これまで邸宅の周辺で争っていた契約者たちが、一斉に邸宅の北側へと向かう。
 こうして、これまで相争っていたセニエ氏側と三姉妹側の契約者たちが、協力してモンスターの群れに立ち向かう、という構図になり――事態は、まさにブルタの危惧した通りの展開となったのだった。





 巨体を揺らして突進してくる熊に、樹月 刀真(きづき・とうま)が刀身を寝かせた剣での一撃を見舞う。
 普通に剣を扱えば致命の一撃となるであろうそれは、彼の配慮によって熊を気絶させるだけにとどまった。
「これでいいか、白花?」
「はい、この子たちは操られているだけですから……どうか、殺さないであげて下さい」
 封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)の言葉に、美羽とベアトリーチェが頷く。
「これならっ!」
 二人が取り出したのは風銃エアリエル。
 銃弾の代わりに突風を放つこの銃であれば、動物たちをあまり傷つけずに遠くへと追い払うことも可能だ。
 似たようなことを考えたのが、及川 翠(おいかわ・みどり)
「飛んでいっちゃえ!」
「空飛ぶ魔法↑↑」を味方ではなく敵にかけ、暴走している動物たちを明後日の方向へと飛ばしてしまう。
 さらにその横では、スノゥ・ホワイトノート(すのぅ・ほわいとのーと)が「幸せの歌」を歌い、動物たちの気を静めては暴走を止めていた。
「よしよし、おとなしくしててね」
 幸せそうな顔で歩みを止めた動物たちを、ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)が優しく撫でる。
 本来は彼女も戦闘に参加するつもりだったのだが、彼女の技はどれも相手を傷つける可能性が高い。
 故に、この戦況であれば自分が参戦する必要はないと判断して、とりあえずおとなしくなった狼やらサーベルタイガーやらを思う存分もふもふすることに決めたのだった。

「ここは抜かせない」
 そのやや西寄りでは、涼介の召喚した不滅兵団が獣たちの突撃を阻んでいた。
 動きが止まったところに、クレアが手加減しての轟雷閃を叩きこんでいく。
「ごめん、しばらく眠ってて!!」
 命を奪うほどの威力ではないが、少なくともしばらくは痺れて動けないだろう。

「すばるさん!」
「お任せ下さい、加夜様」
 携帯電話でタイミングを図りつつ、加夜とすばるの二人が連携して「ヒプノシス」を使う。
 その効果は絶大で、近くの獣たちが次々と眠りに落ちていく。
「この分なら、これだけでどうにかなりそうですね」
 加夜の言葉に、すばるは微笑みながら答えた。
「そのようですね。これを使わずにすんで助かりました」
 電話では声しか伝わらないため、加夜にはすばるの言う「これ」がなんなのかはわからなかったが……その時、すばるの手には非物質化して持ち込んでいた機関銃が用意されていたのだった。

 少し離れたところに伏せていたのは、ヨルディア・スカーレット(よるでぃあ・すかーれっと)リイム・クローバー(りいむ・くろーばー)
 二人のところにも暴走した獣の群れが……なかなか、来そうで来ない。
 それもそのはず、この一帯には前もってリィムがかなりのトラップを設置してあったのだ。
 トラップにかかって時間をとっているうちに、やがて我に返って離脱していく動物も多く、結局二人のところまでたどり着いた動物はそう多くなかった。
「野良ばかり……まだ切り札は温存してるのかしら」
 敵の顔触れを見てそう言うと、ヨルディアはリィムに声をかけた。
「それでは、援護を頼みますわね」
「はいでふ、お姉さま」
 近づいてくる動物たちに、ヨルディアが「子守歌」を歌う。
 さらに、それに合わせてリィムが「ヒプノシス」を使うと、動物たちは次々と眠りに落ちて行った。