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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
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リアクション



stage4 登場! ≪黒鉛のケルベロス≫!


「そこです!」

 魔法少女アウストラリス(アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう))は零距離から敵の腹部へ魔法を放った。
 吹き飛んだ敵は積み重なった箱へと派手にぶつかり気絶した。

「やりました――っ!?」

 アウストラリスは飛んできた魔法を回避するために、遮蔽物の陰に素早く身を隠した。

 捕まった人を救出に向かった生徒達。
 彼らはどうにか≪黒鉛のケルベロス≫が待ち受ける部屋の前まで辿りついたものの、敵に待ち伏せにあって苦戦していた。
 敵はあちこちに置かれたコンテナを盾に遠距離攻撃をしかけてくる。
 長引けば敵の増援もありうる。早めにケリをつけたいところだった。

 アウストラリスは無謀とも思われる行動で、果敢に銃弾の中へ飛び込んでいった。
 その背中を見ながら柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が呟く。

「偽物ヒーローから仮免ヒーローにレベルアップとか、微妙すぎるな」

 恭也は苦笑いを浮かべていた。
 すると、恭也の頭の上に乗る羊のマスコットになっているエグゼリカ・メレティ(えぐぜりか・めれてぃ)が、蹄でガツガツと踏みつけてきた。

「主、笑ってないで警戒して下さい」
「いたっ、痛いだろ。やめろって」

 マスコットになっても蹄は相当堅かった。
 エグゼリカは恭也の言葉を無視して話を続ける。

「主の実力では即座に倒される可能性が高いのですからしっかりして下さい」
「わかってるさ。俺が力不足ってことくらい……」
 
 恭也はエグゼリカの言葉に苦い表情をしていた。

「でも協力したいんだ!
 同じ新入生だから……一緒に頑張りたいんだ!」

 恭也はピストルを構え、アウストラリスを援護を開始した。
 【スプレーショット】で周囲の敵をけん制しつつ、少しでもアウストラリスが戦いやすいように力を貸した。

「くっ」

 それでも前に出過ぎたアウストラリスは肩に一撃を食らって負傷してしまう。
 すると即座に後方からリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の喝が飛んできた。

「前に出過ぎよ! いったん下がって!」

 アウストラリスは頷き、急いでリリアの元へと下がりだす。
 敵はそんなアウストラリスを逃がすまいと、弾幕を集中させてきた。
 エグゼリカがまたしても恭也の頭を蹄で叩きだす。

「主、退却の援護を!」
「わかってるって!」

 恭也は近くの鉄製の扉を強引に取り外すと、銃を撃ちつつ扉を盾にアウストラリスと敵の間に入った。

「ほら、エースも行って!」
「まじかよ……」

 リリアの指示でタキシードを着た翼の生えたハチワレ(猫)になっているエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)も、援護のために前に出ることになった。
 前線に向かうエースと、後方へ退却するアウストラリスの距離が近づく。

「っと、その前に……」

 二人の視線が交差した瞬間、エースが空中で一回転し、いつの間にかその口に真っ赤な一輪の薔薇が銜えられていた。
 すれ違い際にエースが口に銜えていた薔薇を、アウストラリスの胸へと優しく放った。 

「美しいお嬢さん。これを――」
「え、あ、ありが……」

 アウストラリスが感謝を言い終える前に、エースはネコのウインク付きスマイルを見せて前線へと向かっていった。
 胸の前で真っ赤な薔薇を抱えながら呆然とするアウストラリス。
 すると、再度後方からリリアが叫ぶ。

「キザなハチワレは放っておいて、早く戻ってきて!」
「は、はい!」

 アウストラリスは薔薇を手に慌ててリリアの元へ走り出した。
 到着すると、物陰に隠れてリリアがアウストラリスの傷口に【ヒール】をかけ始めた。

「もう、あんまり無茶しちゃだめよ」
「すいません」

 そこへ敵と戦闘中だった下川 忍(しもかわ・しのぶ)が箒に乗って後退してくる。

「アウストラリス、怪我は大丈夫ぅ?」
「忍さん。はい、大丈夫です。
 これくらいかすり傷です」
「そっか。よかった♪」
 
 忍がひょいと箒から降りてアウストラリスの横に腰を下ろすと、頭の上から呻き声が聞こえてきた。

「うう〜、あまり揺らさないで欲しいなぁ」
「そちらは?」
「あ、こっちは崎島さん所のヒメリさんだよん」

 忍の頭の上に四肢を広げてへばり付くモモンガ姿のヒメリ・パシュート(ひめり・ぱしゅーと)は、少々気持ち悪そうにしていた。

「ごめんね〜」

 忍がヒメリの背中を摩ってやると、すぐに気持ちよさそうな寝息が聞こえてきた。
 
「そういえばさっき瑠兎子さんと親どうとか話してたよね?」
「忍さん聞いてたんですか」
「ごめん。盗み聞きみたいになっちゃった」
「別にいいですよ」

 アウストラリスは別段気にした様子もなく、微笑んでいた。
 忍が話を続ける。

「それでね。ボク思ったんだ。
 確かに未来を救うために頑張るのは偉いよ。
 でも、それで命を粗末にしちゃだめだと思うんだよ。
 救いたいなら生きなきゃ、生きてもっと魔法少女しなきゃだよ」

 力説する忍がアウストラリスの手をギュッと握りしめた。

「それにボク、アウストラリスと友達になりたんだ!」
「え、私と友達?」
「うん。学校の話とかいっぱいしたい。
 それでいっぱい盛り上がって、楽しいことをいっぱいしたいんだよ」

 今度は両手を広げて楽しそうに語る忍。
 その口はあれしようこれしようと楽しいと思うことを次々と語っていた。
 そして一通り語り終えると――

「だから……あんまり一人で無茶しちゃだめ。
 大怪我したら楽しいことは何にもできなくなっちゃう。
 もちろん、魔法少女になって頑張ることも。
 ここにはボクもみんなもいるよ。困ったら力になるよ」

 忍は真面目な表情でアウストラリスを見ていた。
 戸惑いながらアウストラリスが振り返ったリリアも力強く頷く。
 アウストラリスは忍の顔を見て、目を閉じ、暫し黙った。
 
 それから、ため息を吐く。

「そうですね。私は……ぷぷ」

 アウストラリスが急に笑い出し、忍とリリアは目を丸くして顔を見合わせていた。

「ごめんなさい。……私、ポラリスの見本になるようにって前を走っていたら、いつの間にか突っ走るくせがついていたみたいで……それが可笑しくて、だってポラリスはいつもああだから……くくっ」

 戦闘中にも関わらずアウストラリスは数分に渡って思い出し笑いをしていた。
 暫くしてようやく笑い止むアウストラリス。
 
「はー、なんだかお腹いっぱいなくらい笑ってしまいました」

 アウストラリスが立ち上がり、武器を構える。

「私、本当は援護の方が得意なんです。
 だからこれからは皆さんの支援に回りますね」
「わかったよ。じゃあボクが前に出るからな」

 忍もぴょんと飛び上がるように立ち上がると、アウストラリスと一緒に物陰から飛び出した。

「頑張ろう、アウストラリス」
「アイリ」
「え?」
「本当の名はアイリ・ファンブロウと言います。
 戦いが終わったら改めて自己紹介しますが、ここだけの秘密です」

 忍の頬が赤くなる。

「これって『二人だけの秘密』だよね。なんだかときめいちゃうよ!」
「そ、そうですか?」

 なんだか興奮気味の忍に少々戸惑いを感じるアウストラリス。
 すると忍が熱い視線をアウストラリスに向け始めた。

「知ってる? 『二人だけの秘密』って異性を口説くときに有効だって話だよ」
「へ、へぇ、そうなんですか」
「もしかしてアウストラリス。ボクのこと口説いてたりする?」
「え、私達同性ですよね?」
「じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「…………うぐっ。
 さ、さぁ戦闘に戻りましょう!」
「あっ」

 アウストラリスは忍のキラキラした目から逃げ出した。

 その後、生徒達は協力してどうにか敵を撃破していった。
 ようやく扉の前まで到着した生徒達。
 しかし、厳重なロックがまたしても生徒達の前に立ちふさがった。

「ここまで来て! こっちは先を急いでいるってのに!」

 悪態をつきながらどうにか扉を開く方法がないか探る恭也。
 だが、どこにはそれらしきものは見当たらない。

「後は、アンネリーゼさん達に期待するしかありませんね……」

 アウストラリスは増援が来ないことを願いつつ、別行動をとっている笹野 朔夜(ささの・さくや)アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)がうまくやってくれることを祈った。


*************************

「どうやら皆さんが扉の前までたどり着いたようです」

 猫のぬいぐるみ姿になった笹野 朔夜(ささの・さくや)が言う。
 朔夜は今、海京の海と皆さんの健康を守る魔法少女メディカルアンネリーゼのパートナー ノイモントとなっていた。

「そうしましたら、後はわたくし達がその扉を開ければよろしいのですわね」

 魔法少女メディカルアンネリーゼことアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)は、ノイモント(朔夜)と共に柱の陰に身を潜めながら注意深い艦内を進んでいた。
 目指すはアウストラリス達の前に立ちふさがる扉の開閉を行う、管理室である。

 ノイモントが敵の気配を感じる。

「アンネリーゼさん、誰か来ました隠れて」
「わかりましたわ。兄さ……ノイモント」

 メディカルアンネリーゼはノイモントを抱えると、戦艦内部で拾ったアイテムを使用した。
 敵が二人。足音が近づく。
 メディカルアンネリーゼは隙間から覗きこんで相手の様子を窺う。
 そして――敵の足がメディカルアンネリーゼの目の前で止まった。

「ん?」
「どうかしたか?」
「いや、こんな所にみかん箱なんてあったか?」

 メディカルアンネリーゼは心臓が跳ね上がりそうになった。
 通路にポツンと置かれたみかん箱。その中にはメディカルアンネリーゼとノイモントが隠れていたのだ。
 メディカルアンネリーゼは今にも見つかるんじゃないかと、心臓が激しく鼓動し、嫌な汗を大量に流していた。

 このままじゃ見つかってしまいますわ。
 どうにか……どうにかしませんと……

 だが、そんなメディカルアンネリーゼの不安をよそに、敵はいきなり笑い出した。

「どうせ、どっかの馬鹿が散らかしたんだろう。
 中身だけ取り出して、箱はその辺に放置とかお前の部屋みたいじゃん」
「はぁ? それはおまえだろ。ケースに戻すのが面倒だからってソフトをその辺に放置してさ。夜な夜な半べそ状態で人の部屋に押しかけてきやがってよ」
「そ、そうだっけな……」

 敵は世間話をしながらメディカルアンネリーゼ達の前から立ち去って行った。
 覆っていたみかん箱をどけたメディカルアンネリーゼは、いつの間にか止めていた呼吸を安心して再開させた。
 すると、ノイモントの手がメディカルアンネリーゼの肩に触れる。

「アンネリーゼさんも片づけはしっかりしてくださいね」
「わ、わかっていますわ!」

 メディカルアンネリーゼ達は改めて管理室を目指した。
 地図を確認し、周囲の敵に警戒しながら進んでいく。

 そして――ようやく管理室の前までたどり着いた。

「ここですわね……」

 音を立てないように注意しながら、ドアノブを捻ってほんの少し扉を開いた。
 覗きこむと、一番に巨大な艦内図が写されたディスプレイが目についた。図の上で所々で赤と緑に点滅がしている。どうやらと艦内の各施設の開閉状況を表示しているらしい。
 そして、部屋には男が一人、退屈そうにあくびをしていた。男の前には操作パネルと思わしき、スイッチが大量についた横長の機械が置かれていた。
 
 メディカルアンネリーゼは気づかれないように男の背後に近づいていく。
 そしてメディカルアンネリーゼは、手に持ったレーザー銃を男の後頭部に当てた。

「勝手な真似はしない方がいいですの。
 大人しく扉を開けてもらいますわ」

 男は無言を貫いていたが、メディカルアンネリーゼに強く銃を押し付けられ、渋々指示にしたがった。
 ディスプレイ上の赤い点滅がすべて緑に変わる。

「アンネリーゼさん、扉が開いたみたいです」

 扉が開いたという仲間からの連絡を、ノイモントはメディカルアンネリーゼに伝えた。

「ありがとうございましたわ。
 それでは、少し眠っていてくださいですの」

 メディカルアンネリーゼは男に【ヒプノシス】をかけて、眠らせた。

「魔法少女メディカルアンネリーゼ、任務完了ですの!」

 ビシッとVサインをしてよろこぶメディカルアンネリーゼ。
 すると、ノイモントが足を肉球で叩いてくる。

「それじゃあ、今度は警戒しながら皆さんの所へ合流しましょう」
「はいですの」

 メディカルアンネリーゼとノイモントは管理室を後にした。

*************************


 メディカルアンネリーゼの活躍で閉じられていた巨大な扉がゆっくりと開く。
 そして、見えてきた巨大な空間。その中央には黒々した体表で蛍光灯のライトを反射する≪黒鉛製ケルベロス≫の姿があった。
 
 ≪黒鉛製ケルベロス≫は生徒達を見つめると、三つの頭全てで鋭い歯をむき出しにし、低い唸り声をあげていた。
 すると、突然崎島 奈月(さきしま・なつき)が走り出した。

「おっきなわんこはっけ〜ん!」
「え!? ちょっと崎島さん、待ってえ!」

 忍の制止を聞かずに奈月は≪黒鉛製ケルベロス≫の前までやってくる。
 ≪黒鉛製ケルベロス≫は体を起こして六つの赤い目で奈月を見下ろしていた。

「おお〜、やっぱり大きい〜。
 でもどうやったら仲良くなれるのかなぁ?
 う〜ん、う〜ん……そうだぁ! お手、お手してみてぇ〜」

 奈月はぴょんぴょん跳ねながら両手を≪黒鉛製ケルベロス≫に向けて大きく広げてみた。
 顔を見合わせた≪黒鉛製ケルベロス≫は、口角を吊り上げ笑みのような表情を浮かべると、右足を持ち上げた。
 巨大な黒い影が奈月を覆いつくす。

 ――周囲から生唾を飲みこむ音が聞こえた気がした。

 黒い影が風を切り裂き、奈月に向かって――ドォスン。

「…………」
「…………」

「もうっ、何やってるの!」
「おぉ!? 僕お空を飛んでるよぉ!?」

 ≪黒鉛製ケルベロス≫に踏みつぶされたかのように思われた奈月は、箒に乗った忍によって助けられていた。
 忍にお姫様抱っこされた状態で一緒に空を飛ぶ奈月。
 天井すれすれの巨大な≪黒鉛製ケルベロス≫が恨めしそうに忍達を見つめていた。
 
 すると、忍の頭にいたヒメリが眠そうに声をあげる。

「奈月〜、いきなりあんなことしちゃだめぇ〜」
「そうなのぉ?」
「そお〜、まずはおすわり〜」
「ああぁ、そっかぁ」
「そういう問題じゃないよ!」

 奈月とヒメリのほのぼの会話に突っ込みを入れる忍だった。

 ≪黒鉛製ケルベロス≫が咆哮をあげる。

 それを合図に生徒達は武器を抜き戦闘体制に入る。
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は大きく深呼吸した。

「犬の聴覚は人間の五倍以上だって話だし、ついで頭が三つもあればこれは効果的抜群だよね♪
 ――みんな、行くよ!」

 ケルベロスの間に優しいさゆみの声が響いた。