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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

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【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?
【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!? 【新歓】みんなで真・魔法少女大戦!?

リアクション

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「ノイモント、まだですの!?
 皆さんがピンチなのですから、急ぎませんと……」

 魔法少女メディカルアンネリーゼ(アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー))は忙しなく足踏みをしながら、猫のパートナー・ノイモントとなった笹野 朔夜(ささの・さくや)を急かしていた。

「わかっています。もう少し待ってください」

 アンネリーゼは仲間の生徒達からの連絡で≪黒鉛製ケルベロス≫を倒す手段が見つからないと報告を受けていた。
 そこで管理室からアクセスして対処法を調べた所、暴走した時のために≪黒鉛製ケルベロス≫の分裂能力を抑制する薬品が存在することがわかった。
 ――そして現在、アンネリーゼ達は倉庫からその薬品を持ち出そうとしていた。
 ノイモントが敵から聞き出した番号を金庫に入力すると、ロックが外れる音がした。

「よし」

 金庫を開けるとブリーフケースがポツリと置かれていた。
 ブリーフケースを開けて中身を確かめると、そこには巨大な注射器と緑色の液体が用意されていた。

「これで皆さんを助けることができるんですわね」
「そうですね。生体改造された≪黒鉛製ケルベロス≫を元に戻す唯一の方法です。だから絶対落としたり、無くしたりしないでくださいね」
「もちろんですわ」

 アンネリーゼはブリーフケースをしっかり閉じると、抱きかかえるようにして倉庫を飛び出した。
 息が切れるほど呼吸を荒くして走るアンネリーゼ。
 焦る気持ちが止まりそうになる体に鞭を打つ。
 どこも同じように見える通路を抜け、懸命に仲間の元へと急いだ。

 すると、突然ノイモントが耳元でささやいた。

「待って、アンネリーゼさん。こっちに人が来ています」
「む、急いでいますのに……」

 仕方なくアンネリーゼはまたしてもみかん箱に身を隠した。
 
 敵が一人、みかん箱に近づいてくる。

 このまま通り過ぎてくれれば……

「?」

 だが、敵は通路に放置されたみかん箱を不審に思ってしまった。
 近づき、しゃがみ込んでじっくりと眺めると、おもむろに手を伸ばしてきた。

 まずいですわ!? このままでは……

 アンネリーゼが覚悟を決め、レーザー銃を握りしめた、その時だった。
 
 ゴツンと鈍い音が聞こえ、敵がよろよろと目の前に倒れてしまった。変わりに、見覚えのある人影が目に入る。
 ノイモントはアンネリーゼにみかん箱をどけてもらい、その人物の名を呼んだ。

「吹雪さん、御無事で」
「おお、久しぶり……というほどでもないでありますね」

 みかん箱の目の前に立っていたのは、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)だった。
 通路を進んでいた吹雪は敵を見かけ、背後から拳銃で殴り倒したのだった。

「お二人はここで何を?」
「≪黒鉛製ケルベロス≫の対策法を探していました」
「なるほど。そのブリーフケースの中身がそうでありますか?」
「そうです。皆さんが危険ですので、急いで届けようとしていました」
「ふむふむ。それなら、自分もお供するであります。
 火力には自信があるので、いざという時は自分に任せるのであります!」

 敬礼しながら、白い歯を見せて笑う吹雪。

「そういうことにはならないことを祈ります」

 ノイモントは苦笑いでそれに答えていた。

 それから三人は、ときには隠れ、ときには敵を背後から気絶あるいは眠らせながら、仲間の待つ場所までもう少しという所に来た。
 だが、目の前の開けた空間には敵がうじゃうじゃいる。
 この場所を抜けなければ仲間達の所にはたどり着けない。

「ノイモント、先ほどからなんだか人が多いように感じますわ」
「そうですね。倉庫に向かった時には、この辺りにはこんなに人はいなかったはずなのですが……」
「おお、それなら心当たりがあります。きっと先ほど自分が発砲したからでありますな」

 ポンと手を叩いて納得する吹雪。
 アンネリーゼとノイモントがジト目で吹雪を見つけた。

「……えへへ」

 吹雪は何故か照れていた。
 アンネリーゼとノイモントが肩を落とす。

「本当にどうしますかね……」

 ノイモントは何かいい案がないか頭を捻り始めた。

「ノイモント、ここを通らないと皆さんの所に着けませんわ」
「そうですね、アンネリーゼさん。
 でも、この数を相手に強行突破はかなり厳しいでしょう。
 だから他の方法を考えないといけません。そう例えば、俺が囮に――」
「えいっ!」

 ドッカーーーーーーーーン♪

 いきなり目の前の空間から、爆音と共に強風と熱気が顔面に吹きつけてきた。周囲に破片が飛び散り、空き缶がアンネリーゼの額にゴツンとぶつかった。

「この方が早いであります♪」

 吹雪が機晶爆弾を数個投げつけたのだ。
 艦内が真っ赤になり、警報装置が鳴り響く。

 ポカンとしていたアンネリーゼとノイモントだが、遠くから聞こえる敵の声に正気を取り戻した。

「に、逃げますわ!」

 アンネリーゼは走り出す。
 クレーターができた部屋を駆け抜け、吹雪によって前方の壁が爆発しても後方で悲鳴と爆音が聞こえても――

「あ〜、あ〜、あ〜、何も聞こえない。何も見てませんわ。ですわ!」

 声をあげつつとにかく走り続けた。
 
 全ては仲間を助けるため。

 耳を塞ぎたい衝動を我慢して、アンネリーゼはブリーフケースを強く抱きしめていた。

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「くっ、やはり何をやってもだめですか。
 まずいですね。このままでは……」

 魔法少女アウストラリス(アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう))達は攻撃を繰り返したが、≪黒鉛製ケルベロス≫は分裂と合体を繰り返すばかりで一向に倒せる気がした。
 体力的にも精神的にもかなり参ってきている状態だった。
 すると、柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が笑いながら叫んだ。

「諦めるなって! 対処法が見つかるまでの辛抱だからさ!」
 
 恭也も疲れを感じていたが、それを見せまいと懸命に笑ってみせていた。

「……そうですね。まだ諦めるには早いですよね」

 恭也の笑顔に答えるかのように、アウストラリスも笑顔を作ろうとしていた。

 ――そんな時、部屋の壁が轟音と共に破壊された。

「な、なんですか!?」

 大量に巻き起こる煙。
 皆が驚き見つめる中、壊れた壁の向こうからブリーフケースを抱えたアンネリーゼが現れた。
 恭也はアウストラリスと顔を見合わせ、安堵の表情を浮かべる。

「お待たせしましたわ!」
「対処法が見つかったか! よかった、これで――」

 アンネリーゼの後を吹雪が走り抜け、続いて大量に敵が雪崩れ込んできた。

「なに連れてきてんだ!?」

 思わず叫ばざるをえない恭也だった。
 すると下川 忍(しもかわ・しのぶ)が敵に向かいだす。

「ここはボクがどうにかするよ! 先に行って!」
「助かりますわ!」

 忍はアンネリーゼと笑顔ですれ違う。

「魔法少女メイディング☆しのぶ! ご主人様を守るためここに参上!
 いきなりだけど、最初から全力でいかせてもらうよ」

 しのぶが魔力を集中させる。

「いくよ! メイディング サンダァァァーー!!」

 放った稲妻が敵を射抜いて行く。

 しのぶが敵を引き付けている間に、アンネリーゼは座り込んで注射の準備を始めた。
 アンネリーゼに指示を出しながら、≪黒鉛製ケルベロス≫の動きを警戒するノイモント。すると、あることに気づいた。
 持ってきた注射は一回分。なのに≪黒鉛製ケルベロス≫は首ごとに複数別れていた。

「皆さん! ≪黒鉛製ケルベロス≫を生体改造前に戻すための注射は一発分限りです!
 ですから、どうにか電気を流して一頭にしてください!」

 ノイモントは調べた際に目にした資料を思い出す。
 そこには電流を流すことで、分裂した個体が集結しようとする性質があることが記されていた。 

「そういうことなら詩穂に任せといてよっ☆」

 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が【稲妻の札】を分裂したうちの一頭に放つ。

「こいつも持っていくといい」
「これも……プレゼント」

 エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が【サンダーブラスト】を、アデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)が【雷術】を放ち、攻撃を一頭に集中させた。
 急速に集まった体組織はやがて一つになる。

「アンネリーゼさん!」
「はいですわぁぁ!!」

 アンネリーゼが注射器を脇に抱えて駆け出す。
 周囲に電流が飛び散り、≪黒鉛製ケルベロス≫が形を取り戻していく。
 アンネリーゼは飛び交う電流の間を抜けて――

「これで終わり、ですわ!!」

 注射器を≪黒鉛製ケルベロス≫の足に刺した。

 瞬間、室内に≪黒鉛製ケルベロス≫の悲痛な叫び声が響いた。
 薬を撃たれた≪黒鉛製ケルベロス≫の身体が徐々に溶け出し、形を保てなくなっていく。

「今です! 皆さん、一斉攻撃です!」

 皆が気力を振り絞る。
 アウストラリスも全身の魔力を一箇所に集め、疲労を訴える身体に鞭をうった。

「終わりです! アウストラリス・パーミット!!」

 アウストラリスが魔法を放つ。
 ――生徒達の攻撃が次々と≪黒鉛製ケルベロス≫に直撃し、身体を粉々に吹き飛ばす。
 弾け飛ぶ黒い液体。だが、それらはもう集まろうとはせず、床を黒く染め上げるだけの液体。
 最後に残ったのは直径十五センチほどの球体≪ケルベロスの幼体≫。ただそれだけだった。

「それが最後だね」

 入り込んだ敵の掃討を完了したしのぶが≪ケルベロスの幼体≫に近づく。

「待ってぇ!」

 すると、しのぶの前に崎島 奈月(さきしま・なつき)が立ちふさがった。

「待ってよぉ! もうこの子はもう改造前に戻ったんでしょ!?
 優しい子にもどったんでしょ、ねぇ!?
 だったら、殺すことないよぉ!」

 ≪ケルベロスの幼体≫は震えながら、奈月の足の後ろに必死に体を隠そうとしていた。

「でも……」
「大丈夫ったら、大丈夫だよぉ!」

 奈月はポロポロと涙を流しながら訴える。
 これ以上、目の前で傷つけられる姿を見るのが耐えられなかった。
 しのぶがどうしたらいいか困っていると、アウストラリスが進み出てきた。

「奈月さんの言う通り、この子は自体に問題はありません。
 だから、見逃してあげてもいいと思います。
 詳しい説明は後でいたします。けれど、今は私を信じてください」

 アウストラリスは真っ直ぐしのぶを見つめる。
 しのぶはその瞳に嘘はないと感じた。

「信じていいんだよね」
「ええ、夜空に煌めく南極星に誓います」
「……わかった」

 こうして≪ケルベロスの幼体≫は見逃されることになった。
 奈月は≪ケルベロスの幼体≫を抱き上げ、頬をくっつけた。

「よかった、よかったよぉ……」

 ――嬉しくて涙が止まらない。