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ガッツdeダッシュ!

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ガッツdeダッシュ!

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 さて、ここから先は、決勝に残ること確約と言っていいほどの勝ちっぷり。そんな彼らの大活躍をダイジェストでお送りする。

「いくらなんでも目つき悪すぎでしょ、これ……。よくこんな性格悪そうな鳥を探してきたわね」
 ずっとガンをつけてくるガッツ鳥を見つめ返しながら、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は呆れた口調で言う。
「だが、能力は折り紙つきだぞ。この俺が保障する。乗りこなせれば、だがな……」
 ルカルカのために鳥を選んできた獣医のダリルが太鼓判を押した。
「乗りこなせないわけないでしょう、私を誰だと思っているのよ」
 フシャー! と鳥とは思えない威嚇の声を上げるガッツ鳥をよしよしとなだめながら、ルカルカは話かけた。
「一緒に優勝を狙おうね、“流星”。これまでの練習の成果を見せる時よ」
 ルカルカが流星と名づけた鳥は、彼女と共に何度も練習を重ねてきたのだ。呼吸を合わせ、コースを走り地面やペース配分を互いの頭と体に叩き込む。目つきと性格は悪かったが、飲み込みは早かった。普通に走ればまず負けないところまで仕上がっている。
「じゃあ、行ってくるわ」
 まだ鼻息の荒い“流星”にまたがったルカルカは、ダリルの目と鳥の能力を信じてスタートにつく。
 合図と共に走り出し。“流星”は、一条の光……黄金の流星となった。
「凄っ、なにこれ……」
 ルカルカと流星がゴールしたとき、残りの9羽は100mほど後ろにいた。とんでもない圧勝。
「これは、決勝でも期待できるわね。流星、あんた最高よ、目つきは最低だけど……」
 ルカルカ、結局余裕で決勝進出。さて……。



「勝ったらステーキ。負けたらうどん食ってフテ寝するぜ」
 八百長事件の捜査も終え、観客席に見物に来ていたキロスは、購入してきた券を見つめながら聞いてくる。
「お前のところの鳥、本当に勝てるんだろうな? これもスッたら本格的にヤバいんだが、主に香菜が」
「ま、まあ本気で優勝狙ってるから、何があっても何とかするでしょ」
 キロスと並んでレースを観戦していたのは蒼空学園のコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)だ。出来たら先輩と呼んでほしいな、と思いながらも彼はキロスに言う。
「ステーキ食べたいの? 勝ったら僕が奢ってもいいよ」
 チキンタルタルと名づけられた鳥を客席から遠目に眺めた。スタート地点で自信満々にしているのは、コハクのパートナーの小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)。【正義の西シャンバラ・ロイヤルガード】の称号は伊達じゃないくらいのガチンコ元気少女だ。
 もうテロリストは登場しないとのことでぶっ飛ばす張り合いがなくなった美羽は、暴れ足りずにちょっとしょんぼりしていたが、その鬱憤をレースで見せ付けてくれるだろう。
 じっと見ていると、彼女はスタートするなりスキル全開でガッツ鳥を走らせる。まずはガッツ鳥に、パワーブレスとゴッドスピードを使用。パワーを上昇させるパワーブレスと、素早さを上昇させるゴッドスピードで、力強く素早い走りを可能にするという大人気なさすぎな本気っぷりを惜しげなく披露してくれるあたりが美羽の魅力なのだろう。
「これはひどい……」
 コハクは思わず目を覆った。他の鳥が走る気をなくすほどの圧勝だった。
「八百長なんて、絶対に成功させないんだからね!」
 美羽は高らかに宣言する。
「八百長というか、チート級だね、これは……」
 さて、ステーキを食べに行くか……。コハクはキロスと共にレース場を去っていった。



 さらにすごいのが出てきた。ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)だ。
「本当にブラックウィドゥ借りてきたわ」
 この町最強と言われる鳥、ブラックウィドゥ。彼女はあの後持ち主と様々な手を用いつつも交渉し、この鳥を借りることに成功したのだ。
 彼女が登場しただけで、おおおおっっ! と客席から歓声が沸き起こる。
 八百長疑惑で一時評判は落としたものの、やはり実力は一番らしかった。町の人たちも、最強の鳥の登場に盛り上がる。
「楽しみながら勝たないと損でしょ!」
 後ろが見えないほどの差をつけて、ミルディアとブラックウィドゥはゴールする。
「そりゃ、楽しいだろうよ、それだけ勝ったら……」
 誰かが突っ込んでくるのが聞えた……。



 獣医の心得のスキルを持つ瀬乃 和深(せの・かずみ)に鳥を選んでもらって出場したルーシッド・オルフェール(るーしっど・おるふぇーる)は、レース後、裁定委員に呼ばれて質問されていた。走行中、他の鳥を妨害したのではないか、との疑いだった。
「妨害する意思はなかった、ただ歌を歌っただけだ」
 ルーシッドは言い張る。
 スタートするなり、大人気なくもライド・オブ・ヴァルキリーのスキルを掛けて、ぐんぐん加速させる。逃げ切りを狙うつもりだった。そこまでは、まあよかったのだ。
 が、後ろの鳥がスパートをかけて追いついてくると、、『驚きの歌』のスキルで他の相手のガッツ鳥を驚かせ足を止めようとしたのだ。スキルは使っていいが、これはどうなんだろうと突っ込まれる。
「妨害する意思はなかった、ただ歌を歌っただけだ」
 ルーシッドは言い張る。
 やれやれ……、と裁定委員は肩をすくめる。
 結局、今後歌禁止と念を押され、ルーシッドの勝ちが確定した。スキルのおかげでぶっちぎりだった。
「券が紙くずにならなくてよかったぜ」
 客席から状況を見守っていた和深は、ほっと胸をなでおろした。


 ……こうして、予選が終わり、決勝へと出場するメンバーが決まったのだ。

 が。