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今年もアツい夏の予感

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今年もアツい夏の予感
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リアクション

「あっちで何か始まったわね。ずいぶんと人が集まってるけど……」
 騒ぎ離れたところにいた綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は、わいわい始めたのを遠目で見やりながら掃除を続けていました。
 パートナーのアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)と共にやってきていたさゆみは、ターコイズブルーのトライアングルビキニの上にTシャツを着て、邪魔にならないように裾の部分は結んであり、活発に動くのに邪魔にならない格好をしています。
 掃除でさんざん汗をかいた後に張った綺麗な水で初泳ぎなんて最高に気持ちいいだろうなと思いながら、モップでごしごしと水垢やらぬめりやらその他諸々を丁寧に落としていくさゆみ。すでに夏気分でうきうきです。
「私たち、ちょっと派手だったでしょうか……? 学校指定水着の子も結構いるみたいですし」
 黒の大人セクシーなトライアングルビキニの上にTシャツを着こんだアデリーヌは、もしかして自分たちはすごく浮いているんじゃないかというような口調です。
「そんなこと無いわよ。お気に入りの水着は女の子のシンボルよ。夏が来たって感じも……」
 そこまで言ってさゆみは言葉を止めます。
 突然、背後からすごい勢いで水がぶっかけられたからです。
「冷たいわね。何をするのよ……!」
 振り返ったさゆみは、すぐにその犯人を見つけました。
「ひゃっほゥ!」とか言いながら、ホースを上に向け水を撒き散らしているのは、ミントブルーの爽やかな色調のバンドゥビキニ姿のセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)です。さゆみと目が合うと水出しっぱなしでビシッと親指を立ててきます。
「やめなさいって、他の人にもかかるでしょ!」
 セレンフィリティのパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)がたしなめますが、そんなことで彼女がやめるはずはありません。ついさっきまでプールの底を磨いていたセレンフィリティは、作業に飽きて涼みたくなったその欲求に忠実に従っているのです。他の人にもお裾分け、とドヤ顔です。
「あなたねぇ、掃除も大雑把だったのにどうしてそんな誇らしげに胸張ってるのよ?」
 後始末をしていたセレアナはもう一度言いますが、聞えないとばかりにセレンフィリティはホースの放水口をさゆみに向けてきます。
「ひゃっはぁ! 夏だぞぅ!」
「……」
 もう一度まともに正面から水を食らったさゆみは、ぴくっと眉を動かします。濡れたTシャツが肌に張り付いて、しかも透け透けになったのでいい具合に色っぽくなっていて注目の的です。
「いいわ。水も滴るいい女、とは私のことよね」
 さゆみは近くにあったホースを掴むと、セレンフィリティに向けて水をぶっ掛けます。
「食らえ! お返しよっ!」
「や、やめましょう、さゆみさん。そんなことしたら他の人にも……」
 アデリーヌはさゆみの豹変に戸惑った様子ですが、もちろんスルーです。
「……ふふん。こちとら最初から水着だから、全然平気よ」
 さゆみの放った水をかぶりながらも、チッチッチと指を揺らすセレンフィリティ。
「ふふっ、水着はいい女の夏の戦闘服よね。つまり私は戦闘状態、オッケー!?」
「……年中水着姿のあなたが言う台詞じゃないわよ」
 そんなセレアナの台詞はまたしても無視されます。
「……」
「……」
 さゆみとセレンフィリティは、ホースを構えたまま睨み合います。まるで太刀での決闘のような間合い。
「……水かけるだけなのに、どうしてそんなカッコイイ前ぶりをやってるんですか」
 アデリーヌの台詞が終わると同時に……二人は同時にホースを向け合います。
「ひゃっほぉぉぉっぅぅ!」
「あははははははっっ!」
 ネジが外れたように笑い声を上げながら、ビチャビチャになるまで水をかけてやります。
「うわっ、冷たっ! でも、気持ちいい〜!」
「あはははは! 楽しっ、これぞまさに夏って感じだわ!」
「……いい加減にしなさい!」
 セレアナとアデリーヌもとうとうホースを持ち出します。あとはもうめちゃくちゃです。とにかくなんでもいいから相手に水をかけまくります。
 その内に、周囲まで巻き込んで放水の輪が広がってきます。大騒動です。

「向こう、すごいことになってるな……」
 同じく子供用プールに掃除に来ていた桜葉 忍(さくらば・しのぶ)は飛び交うホースの水を交わしながら、端っこの方に追いやられることになってしまいました。普通に水着の上からTシャツ姿の忍は、パートナーの桜葉 春香(さくらば・はるか)が滑って転ばないようにドロドロの箇所をブラシで擦りピカピカにして綺麗にしていました。
「水かけも気持ちよさそうだけど、今は我慢我慢。プールを綺麗にして四人で一緒に泳ごうな」
「うんそうだね。お父さんとお母さんと一緒にするお掃除は楽しいもん。今はお掃除だよ〜」
 そんな忍の影の働きも知らずに春香は水のかけ合いを眺めながら可愛い水着を躍らせてプール掃除を楽しそうにやっています。
「春香はお掃除が上手ね」
 微笑みながら褒める東峰院 香奈(とうほういん・かな)に、えっへんと胸を張る春香。こちらもこちらで、そんな春香が頑張りすぎて転んで怪我をしたりしないよう傍でしっかりと付き添っている様が微笑ましいです。
「プールを掃除して皆が気持ち良く泳げるようにしなくちゃね」
 新しい水着を着てきた香奈は、早く泳ぎたそうにちょっとうずうずしているのは秘密なのでありました。

「水着の女の子たちが頑張って掃除をしたり、元気に水を掛け合う姿……。いいですね……」
 あの後、適当に掃除をこなしつつ女の子たちを見学していた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)がポツリと呟きます。が、それすらも巻き込まれてかき消されていったのでありました。