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フリマと少女の本

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第1章 フリマ準備

「これは……アリやろ。これもアリや。っちゅーと勿論これもアリやな」
 古着に古書に古銭にアンティーク。
 そう言ってしまえば聞こえはいいが、その実どれも単なるガラクタ。
 瀬山 裕輝(せやま・ひろき)は部屋中のガラクタを一か所に集めていた。
「アホ兄貴、今度は何やらかそーとしとるん?」
 そんな瀬山 裕輝(せやま・ひろき)の様子を呆れたように見ているのは妹の瀬山 慧奈(せやま・けいな)
「ほんなん決まっとるやろ! 売り物を探しとるんや」
「売り物て…… ガラクタの間違いなんやない?」
「問題ない! なにしろ今日は……」

「ふんふんふ〜ん♪」
 周囲に甘い香りを漂わせながら、ルルナ・イリエースト(るるな・いりえーすと)はそっと手に持っていた天板を置く。
 その上には色とりどりのクッキー。
 ルルナは焼きたてのクッキーをそっと口に運ぶ。
 さくり。
「ん、いい出来」
 頷いてから、改めて机の上を見る。
 机の上には出来立てのモンブランにエッグタルト、イチゴのマフィン……
「気が付いたら、こんなに作ってたわぁ〜。あ、そうだ!」
 ぽん、と手を叩くと、ルルナはバスケットを取り出しお菓子を詰めはじめた。
「これでよし。それからおまけに、お庭の茶葉も」
 いそいそと荷物を詰め込むと、黒衣 流水(くろい・なるみ)に声をかける。
「いってきま〜す」
「あら、どこへ?」
「うふふ。今日はね……」

 ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)が持ち上げた丸い石に、朝日がきらりと反射した。
「よし、こいつの使い道、決まったぞ」
 小さく呟くと、何やら作業を開始する。
「おっと、もうこんな時間か。早くしないとな。何しろ今日は……」

「んー、このTシャツも買ったばっかなんだよね……んでも! 箪笥の肥やしになるくらいなら、思い切ってえいっ!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はぎゅっと目を瞑ると、クローゼットの服をぽむっと箱に詰め込む。
 カジュアルなTシャツから、フォーマルなドレスまで。
「これでよし。服にとっても誰かに着て貰った方が幸せだもんね……ん?」
 美羽は鼻をひくひくさせる。
 キッチンから甘い香りが漂ってきた。
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)も、何か作っているらしい。
「楽しみだなー。おっと、これも忘れないようにしなきゃ」
 美羽はもう一つ、布らしきものが詰め込まれた箱を用意した。
「だって、今日は……」

「フハハハハ! これも、これも、これも完璧だ!」
「ええと、一応質問させていただきますが……何やってるんですか、兄さん」
 今日も今日とて怪しげな物体を前に高笑いをするのはドクター・ハデス(どくたー・はです)
 高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)は半分諦めた様子で兄に問いかける。
「おお、ちょうど良い所に来たな、これを着ろ!」
 咲耶の言葉には耳を貸さず、ハデスはとある衣装を彼女に突きつける。
「ちょ……これは、何ですか!」
「ふむ。いい質問だな。これはだな……」


「今日は、フリマ(だ!)(よ)(だしな)(なのよ)(だからだ!)」