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「お待ちなさい! ここから先は通しません!」
 ウイルスの親玉の元へと向かうアキラたちの前に、一人の少女が立ちはだかった。
「お前は……」
 キロスの言葉に少女は一瞬怯んだ様子を見せるが、なんとか持ちこたえる。
「オリュンポスの騎士アルテミス、ここを通すことはできません!」
 薄緑色のレタスのアーマーを纏った、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)だった。
 彼女はドクター・ハデス(どくたー・はです)の指示で、追跡者の足止めをしていたのだ。
 しかし、アルテミスの表情は何故か暗い。
 彼女の視線の先にいるのは、キロス。
(何故でしょう……キロスさんとは、争いたく、ないんです……)
 自分の心に湧きあがる理解できない気持ちに、ただただ困惑する。
 しかし、そんな彼女の葛藤を余所に、現実は進んで行く。
「ふむ、レタスか。そんなアーマー、わしの熱湯で萎れさせてやるわい」
 ルシェイメアが、右手に持つ急須からお茶を発射する。
 バシャアアッ!
「……効きません!」
 レタスのシールドでそれを受けるアルテミス。
「これなら、どう!」
 雅羅が生春巻きの皮を投げつける。
 アルテミスに巻きつこうとする皮を、次々とシールドで絡め取る。
「私に生春巻きは聞きません! 行きなさい!」
「キッキー!」
 アルテミスの指示で、続々とウイルスが飛び出してくる。
「くっ」
 それを次々と生春巻きの皮で包む雅羅。
「ま、雅羅さん、そんなに皮を使うと……」
「え?」
 夢悠の言葉で、ふと自分の体を見る雅羅。
 彼女の体を包んでいた生春巻きが、どんどん薄くなっていった。
 気が付けば、今にも透けそうな薄皮一枚。
 更にウイルスの攻撃でひらりと捲れる。
「や……きゃああああ!」
 慌ててしゃがみ込む雅羅。
「雅羅さん! せめてこの桃の葉っぱを……!」
 夢悠が自分の葉っぱを渡すが、焼け石に水むしろ卑猥。
 戦意を喪失した雅羅に代わって、キロスがシェラスコの剣を構える。
「次はオレが相手だ!」
「う……」
 キロスを前に、先程の葛藤が蘇り僅かに怯むアルテミス。
 その隙を見逃すキロスではなかった。
「でやあっ!」
 シェラスコソードが一閃。
 アルテミスのレタスは、紙の様に破れた。
 服までも。
「きゃ、きゃああああっ!」
 雅羅の隣にしゃがみ込むアルテミス。
「あ……オレ、別に悪くないよな、な!」
 レタスの予想外の脆さに、動揺を隠せないキロスだった。