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季節外れの雪物語

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季節外れの雪物語

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★ぷろろ〜ぐ?★

「合法的に女の子達を脱がせられるなんて、すばらしい大会だ」
 雪が降り注ぐツァンダの街中で、瀬乃 和深(せの・かずみ)が雪球を握りしめて感動していた。学生服の上にマフラーをつけただけの、動きやすいが少し寒い恰好で動きまわり、女子を見つけては雪を投げていく。
 え? 男には投げないのかって? 当たり前のこと聞くなよ。男の裸見ても楽しくないだろ?
「きゃっ」
「あらあら」
 そんな和深の雪に当たったのは、ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)セラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)だ。すでに後一枚まで追い込まれていた2人は、これでリタイアとなる。
 最後の鎧であるシャツの下から現れたのは、なんともすんばらしいボディと、その身体を申し訳なさそうに隠すマイクロビキニ。
 どこからともなく、野郎どもの歓声が上がった。もちろん、その中には和深もいた。
「何で私まで大会に参加させられてるのよ! 聞いてな……ックシュ!」
 ネット中継のリポーターとしてほぼ無理やり大会に出され、ディミーアはご立腹のようだ。そんな2人の傍でパソコンを使っていた男、湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)が顔を上げた。
「ディミーア、セラフ。番組を変更する」
「あらぁ、どういうことかしら?」
 質問には答えず、凶司はどこかに向かってしゃべりはじめる。
「番組の途中ですが、“カラミティ”雅羅・サンダース三世さんから興味深い情報が! なんとこのツァンダの町に雪女親子がやってきているとのことです。この雪はそのせいなのですね」
 ああ、そういうこと。
 ディミーアとセラフが頷く。
「人探し、ね。ソッチの方がフザけた脱衣大会よりは人の役にもたちそう」
「じっと待ってるのも退屈だしねん。いいわよ、人探し。協力しましょ」
 
「ということで急きょ番組を変更し、新生徒会ネットニュースでは彼女らの姿を追いかけてみたいと思います。
 皆さんも見かけたら是非情報をコメントに! 有力情報にはネフィリム姉妹もインタビューに伺います!」

 凶司が最後にカメラをディミーアとセラフに向けたことで、彼女たちのえちぃ水着姿を見たものたちが神に感謝の祈りをささげたとかいないとか。

 とにもかくにも、取材である。
「現場のディミーアです。この辺りで目撃したという人がいたそうですが……」
「たしかに雪が他よりも高く積み上がってるわね」
 ネットの編集・情報交換を中心に行っている凶司にかわり、カメラマンを務めるセラフが周囲を見回す。ディミーアは羞恥をこらえつつ、通行人に声をかけていた。
 セラフは手に入った情報を凶司に知らせる役だ。
「〜〜で見たって情報があったわよぉ。誰か調べてみてくれない?」
 水着姿でツァンダ内を歩き回る2人。
 空からは白い雪が飽きることなく降っていた。……野次馬の声も、飽きることなく2人に降り注いでいた。


* * *


 なんだかいろんな意味で盛り上がっているツァンダの町を、とぼとぼと歩く子供がいた。グラートだ。
 きょろきょろと首をしきりに降りながら、歩いていく。歩けば歩くほど、自分の居場所が分からなくなる。不安になればなるほど、彼の周囲で雪が積もる。風も強くなる。

「おかあさん、どこ〜?」

 目にたまった涙が爆発するまで、あと数秒。母の姿は、周囲にはない。