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JYOUBUTU

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JYOUBUTU

リアクション

「――って、感じよ。ルールはだいたいこんな感じね。権兵衛さん、わかった?」

 色々と話をした後、権兵衛と同じチームのセレンは、約束通り彼にルールを教えた。
 それを聞いた権兵衛は、神妙な面持ちでうなずく。

「はい、なんとなくですけどね……ですが大将を任されたからには、命がけでがんばりますよ!」
「おい、落ち武者のおっさん。あんた死んでるんやし、賭ける命なんてないやろ?」

 と、瀬山裕輝がすかさずツッコミを入れた。

「ハッ、そうでした」
「もうキミとはやっとられんわ」
「どうも、すいません」
「お後がよろしいよーで」

 ――ちゃかちゃん。

「なっ、なんじゃ!? いまどこからともなく三味線の音が!?」
「ウソ、アリエティにも聞こえたの? あたしも聞こえたわよ」
「ボクも聞こえたよ!」
「あの、私にも聞こえました」

 アリエティとセレン、レキ、ノアは次々にそういうと周囲をキョロキョロと見回した。

「霊の仕業やな」
「……そうですね」
「いや、だから落ち武者のおっさんが言うなや」

 ――ちゃかちゃん。

「ぬおおおおッ! また聞こえたのじゃぁッ!」

 アリエティがムンクの叫びのような顔になって叫ぶ。
 と、相手のチームのもっくんがイラついた声でいった。

「おい、なにやってんだ! そっちのサーブからだろ!?」
「……さっ、さっきの音のことは、あんまり気にしないことにしましょう」

 セレンがそういい、皆はうなずく。
 こうして彼女たちは、大人の事情に目をつぶった。

「では、先鋒七市権兵衛――参ります!」

 と、いつの間にやらサーブを打つ態勢になっていた権兵衛は、ボールを宙に浮かせていた。
 それを見て、チームJYOUBUTUの面々は慌ててコート内のポジションにつく。

「へッ、いつでも来い!」

 もっくんはニヤリと笑って手を組み合わせると、レシーブする態勢を整えた。

「そーれ」

 権兵衛はボールを打つフリだけをして、念力でボールを相手の陣内へ飛ばす。

「えっ、ちょっ、待って、これめっちゃくちゃハヤっ――はふんッ!」

 ずどんッ!

 砂が派手に舞い上がり、もっくんの真横では、砂浜を抉るようにぎゅるぎゅるとボールが回転している。

(あいつ、見た目もそうだけど、やっぱバケモンだぁーッ!)

 いつもは逆ハの字になっている鋭い目つきをハの字にして、もっくんは膝をガクガクと振るわせる。
 と、そんなもっくんの肩をセレアナが叩く。

「大丈夫よ、もっくん。いまので見切ったわ」
「せっ、セレアナさん、それ本当ですか!?」
「ええ、次は私が確実にレシーブをあげるわ。だからあなたはトスをお願いね」
「りょっ、了解です!」

 もっくんはそういうとセッターの位置につき、セレアナはレシーブの態勢をとった。

「セレアナ、あなたあのサーブを受ける気なの?」

 と、相手チームのセレンが心配そうな顔つきで声をかける

「セレン、心配は無用よ。でもこちらも手加減なしで行くから、覚悟しなさい」

 とそこへ、権兵衛の強烈な念力サーブが飛んできた。

「――ッ、そこ!」

 女王の加護を受けるセレアナは、冴え渡る第六感で強烈なサーブへと素早く腕を伸ばす。
 そしてかろうじて上にあがったボールの下にもっくんがスライディングして滑り込み、空高くトスをあげる。

「誰か、頼みます!」
「――エース、行きなさい!」
「おまかせください、お嬢様」

 と、リリアの言葉に答えたエースが華麗に大地を蹴った。
 空に舞い上がったエースは、白鳥が羽ばたくように優雅に腕を振り上げると、ビーチボールに強烈なアタックを叩き込む。
 そして、強力な一撃となって打ち返されたボールは、相手のブロックを物ともせずに陣内に容赦なく突き刺さった。

「フッ、これぞ白鳥(キグナス)の一撃です」

 地上に降り立ったエースは、懐から一輪の花を出してビシッと決める。

「よくやりましたわ、エース」
「ありがとうございます、お嬢様」

 エースはそういうと、手にしていた花をリリアへと献上した。

「ふふふっ、今度はこっちのサーブよね? みんな、ここは私にまかせてちょーだい」

 と、なにやら自信ありげな笑みを浮かべながらそういったリキュカリアは、サーブポイントへと足を運ぶ。
 そしてボールを掴むかと思いきや、なぜかンガイのことを鷲掴む。

「なっ、なにをするのであるか、乳白金の魔女よ! ビーチバレーとは、ビーチボールを打ちあって遊ぶのであるぞ!?」
「あのねぇ、シロ。相手は怨霊なのよ? なら、こっちは宇宙人で行くしかないじゃん!」
「まっ、待つのである! その理屈はおかしいのである!?」
「うっさいッ! いいからぶっ飛べ、宇宙人ッ!!」
「いや、乳はっ……ご主人様ァッ! やめッ、ア――ッ!!」

 哀れなポータラカ人ンガイは、リキュカリアに思いっきりぶっ叩かれ、ボールのかわりとなって敵陣へと飛んでいく。

「ねっ、猫が飛んできたのじゃ!?」
「くっ、卑怯よ! 動物を投げ入れるなんて!」
「猫を叩くなんてボクにはムリだよぉ!?」
「わっ、私もそんなことできません!」

 アリエティ、セレン、レキ、ノアの女性4人はそういって動くのを躊躇う。
 だがそんな中、まったく躊躇いをみせずに動く男がいた。

「うおおおおッ、レェシィーブッ!!」

 裕輝はそういって腕を伸ばして、ンガイを空高く打ち上げる。

「アッ、アジャパァーーッ!」

 ンガイは宇宙人らしい(?)悲鳴をあげてさらに空を飛んだ。
 そして飛びすぎたンガイは、コートの外へと墜落する。

「……ひっ、ひどいのである」

 砂浜に仰向けで倒れたンガイは、体をピクピクとさせて目に涙を浮かべる。