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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

リアクション

「アスカ〜どんどんお酒をもってくるれでふぅ〜」
 エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)はワイン風呂に肩までつかりながら叫んだ。
 神代 明日香(かみしろ・あすか)が、エリザベスのグラスを取り上げた。
「もう、エリザべートちゃんのみすぎですぅ!」
「え〜っ、けちですぅ。アスカのけちんぼれすぅ〜」
 その言葉を聞くと、明日香はうれしそうな笑みを浮かべた。
「えいっ!」
「わわっ!? あ、アスカ!?」
 明日香はエリザベートの背後から、肩から抱き着いた。
 暖かい体温と心臓の高鳴りが、両者に伝わる。
「ど、どうした……ですぅ?」
「そうだ、私がお酒を飲ませてあげるね……でも手が使えないから――」
「な……んっ!?」
 エリザベスの口が突然ふさがれた。
 アスカの口から生ぬるいワインがエリザベスの口へ、胃へと入っていく。
 エリザベスはそれに抗うように手でアスカの顔を押し返した。
「っ――けほっげほっ」
 ようやくエリザベスの口が解放される。
 空気が必要以上に気管へ入ってくるためおもわず咳こんだ。
「な、な何をするですう!! 死ぬかと思ったですぅ!」
「えへへ、でもおいしかったですよ〜? エリザベスちゃんはおいしくなかったです〜?」
「う、それはその……すこしおいしかった……かもですぅ」
 少し顔を赤くしながら、エリザベスに問いかける。
 エリザベスは思わず明日香の顔が見れなくなり、うつむきながら答えた。

 なお、家政婦は見たとばかりに現場を見てしまい、絶句してる者が一人いた。
「……ど、どうしましょ〜ですわ〜」
「何がだ?」
「ひっ、な、なんでもないですわっ!」
 美緒は酔っている勢いなのか、二人の現場を見てなのか、風呂場の影でじたばたしていた。
 そんな美緒が気になったのか、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が声をかけてきたのだった。
「な、なんでもないですわ……ちょ、ちょっとはなれたほうが良いと思います!」
「えっ、敬語? って、わっ」
「そんなのどうでもいいのですわ〜、はやくここからはなれるますわっ」
 正悟は美緒に手を引かれてその場から離れた。
 何があったのか気になる正悟だったが、それよりも美緒に手をつながれたことがうれしくてそれどころではなくなっていた。

「うおおおおおおおおおおっ!!」
「さっさと酔ってしまいなさい!」
 美緒達が向かう先、そこでは雄叫びとともに激闘の音が飛び交っていた。
 雄叫びを上げていたのは上條 優夏(かみじょう・ゆうか)
 そんな優夏と戦っていたのはルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)だった。
「そろそろ、本気で沈めるわ!」
 そういうと、ルシェンの背後から触手が何本もゆっくり伸びてくる、それは【触手植物の蔦】だった。
「ず、ずる――うわっ!!」
 飛んでくる触手をよけきれず、とらわれると優夏はまっさかさまにワイン風呂へとたたきつけられた。
「まったく、さわがしいですねぇ。もうちょっと静かにお酒は飲めないんでしょうねぇ」
「あ、レティ。お酒つぎますよ」
 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)の空になったグラスへ日本酒を注ぐ。
 空から優夏がすぐとなりに降ってきたことなど知らずとばかりに、レティシア達はお酒を飲んでいた。
「で、今落ちたのはあなたの知り合いじゃない?」 
「ふぇっ!? あ……優夏を忘れてた!」
 一緒に飲んでいたフィリーネ・カシオメイサ(ふぃりーね・かしおめいさ)は、慌ててその場を立ち上がる。
 が、立ちくらみとふらつきがフィリーネを襲う。
「大丈夫? 飲み過ぎたのでは?」
 ミスティがフィリーネの体を支えるが、フィリーネは大丈夫だとばかりに顔を横に振った。
「大丈夫です! いってきま……わあああっ!」
 前のめりになってワイン風呂へと飛び込んだ。
「……とても大丈夫そうにはみえない……」

「あの人大丈夫かなあ……思いっきり叩きつけられてたけど」
 高峰 雫澄(たかみね・なすみ)は優夏が落ちてきた方向を見ながら心配そうな声をあげた。
「介抱に向かった方が良いかな……ってあれ、シェスティン?」
 介抱のために立ち上がろうとした雫澄だったが、足下に何か引っかかってるのに気がついた。
 不思議に思った雫澄は足下を見ると、ベロベロに酔ったシェスティン・ベルン(しぇすてぃん・べるん)がしがみついてきていた。
「な〜す〜み〜っ。わたしね、すうっごく楽しい気分なの〜」
「えっ、どこにいくの〜お〜い!?」
 シェスティンは立ち上がるとそのままふらふらと雫澄から離れて言ってしまった。
 どうやら向かった方向は、先に優夏が落ちた場所のようだった。

「だ――じょうぶ? えーいっ」
「痛った!?」
 優夏は不安そうな声と、頭への強い衝撃によって意識が次第に回復した。
 意識が次第に戻ってくると、自身の体はお風呂場の床に横たわっていたことがわかった。
「ふぇえええっ……良かったー……え、どうしたの突然!?」
「ん〜……フィー? おおっ、フィー、かわええな!!」
 優夏は心配そうに涙を浮かべ、のぞき込んでくるフィリーネの姿を見るなり抱きついた。
 フィリーネの顔がさらに赤くなっていく。
「おおっと、あかんあかん。思わず可愛いから抱きついてしまったで。しかし今年の夏も思ったけど、ドキっとするなあ」
「えっ……ありがとう……。じゃああたしと結婚して幸せにしてくれる?」
「お〜、良いで! 勝ち組ニートで絶対幸せにするからな!!」
 優夏もフィリーネもふらふらになりながら会話していた。
「ひゅ〜ひゅ〜、お熱い〜」
 そこへ、シェスティンが二人を茶化すように言いながら通り過ぎる。
 思わず優夏とフィリーネは何も言わず、ただぼーっとしていた。
 というのも、まだ良いが強くて自分が何を言ったのか、二人は理解できていなかったためだった。
「ご、ごめんなさい! うちのシェスティンがごめんなさい!! ちょっと、まてーっ!!」
 シェスティンの後ろから、雫澄が優夏達へ謝りながら過ぎ去っていった。
 ちなみにこの後、優夏とフィリーネはこんな会話をしている。
「……なんか言ってもうた気がするんやけど、黒歴史トップになりそうな?」
「気のせいよきっと、黒歴史なんてないわよ♪」
 しばしの間、顔がうまく合わせられなかったそうだ。

 さて、少々暴走ぎみのシェスティンはというと……。
「ほらほら〜みんな飲んじゃえ〜」
「ひゃはは〜、そうだ〜のんじゃえ〜」
 アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)も仲間に入り、どんどん他人を酔いに酔わせて回っていた。
「あー……なんかすごいことになってるね……」
 離れたところにある休憩ベンチから二人を眺めていた榊 朝斗(さかき・あさと)はゆっくりとワインを飲んでいた。
 離れたところに居たのは、端から巻き込まれないようにするためだった。
「はあはあ……もう……つかれたあああっ!」
 そこへ、始終シェスティンを追いかけていた雫澄が息を切らせながら隣へ座ってくる。
「飲みます?」
「ありがとう……お酒じゃないわよね?」
「ただのウーロン茶だよ」
 朝斗の渡してくる、ウーロン茶を注意深く受け取る。
 そんな雫澄を朝斗は笑った。
「まさか、たった一口であんなことになるとは思わなかった……ここまで酔うとはねえ……」
 何度もため息をつく。
 そんなこともしらず暴走する二人(アイビスとシェスティン)が走る先には、美緒と正悟が歩いてきていた。

「おや、らぶらぶだ〜っ」
「次のたーげっと発見!」
「えっ」
 正悟だけをピンポイントに二人は襲いかかってきた。
 それぞれ片手にはお酒が持たれていた。
 同時に正悟の手の付近が光った。
「ったああああっ!」
 布が切れる音が何十も重なって響く。
「ふう。って……えっ?」
 その音が終わるまでわずか10秒とかからなかった。
 正悟は何かを終えたとばかりに一息ついて、目の前を見ると目を丸くした。
 先ほどまでビキニや一般的な女性の水着を着ていたはずの二人が一瞬にして裸だった。
 かろうじて、胸などに一部布が残っている。
 ちなみに犠牲者は二人だけではなく、一緒に飲むはずだった美緒も巻き添えだった。
 しかも美緒に至っては布がまったくなく、水着はみじんも残っていない。裸どころではなく丸裸だった。
「……ゴメンナサイ?」
「何を……何を……してるのですうわああああああんっ!」
 美緒は顔を真っ赤にし涙を浮かべながら、お風呂を勢いよく出て行った。
「ばたん、きゅ〜っ」
 続いて、シェスティンは恥ずかしさと酔いが周りに回って、倒れてしまう。
 アイビスは体が震わせたと思うと間髪、正悟の首元を力強くつかもうとする。
 だが、先ほどの服脱がせの業(剣の舞)でよける。
「きゃははははっ、不埒な人は……し☆け☆い」
「うおおおおおおおっ!!!」
 正悟は逃げまわった。とにかく走り逃げ回った。
 迫り来るアイビスの殺人業(咆哮+『レゾナント・アームズ)から逃げるために。

「ははは、えっと止めるべきかなあ」
「はあ〜、本当に騒がしいですねえ。まあ、学生達の集まるお風呂だから仕方ないですけどねぇ」
「う〜ん、だよ――っ!?」
 レティシアが後ろ髪を書きながら、朝斗の横に歩いてきた。
 その姿をみて朝斗は絶句した。
「どうした、まるで信じられない物を見たような顔して……」
「どうしました、二人してまるで見てしまったみたいな顔してるですよ?」
 様子を見に来た雫澄までレティシアの姿を見て絶句してしまった。
 そして、すぐに目線をレティシアから空へと向ける。
「おたずねするんだけど、なんで裸なんでしょうか?」
「何のこと?」
「たぶんレティと私の服装のことだと思いますよ」
 ミスティが代わりに答えると、レティシアは自分の姿を確認する。
 レティシアの姿は丸裸だった。
 布一枚つけていない。なぜこのような格好なのか。
 それより、朝斗と雫澄は目のやり場に困っていた。
「ここはお風呂ですよ? だったら水着やタオルなんて無粋な物はつけないのが通りではないだと思いますぅ」
「お……お風呂だけど混浴だよここっ!!」
「酔ってないよねぇ?」
「レティと私ははじめからこの格好でした」
 ミスティの答えに朝斗と雫澄は何も言えなくなっていた。
 ここから、何か言い返してもおそらくレティシアは納得しない。
 そこで二人は共通の答えを導き出した。
「朝斗さん、見なかったことにしましょう」
「ですよね〜」
「何をひそひそ話してるんですぅ?」
 ひそひそ話をし始める朝斗と雫澄を指摘する。
 二人はそれを聞くと、そのままレティシア達に背を向けたままにする。
「ともかく、早く静かになってくれると良いんですがねぇ……」
 ぼそりとレティシアがつぶやくと朝斗と雫澄は見合って頷いた。
「僕たち、ちょっとこの辺静かにさせてきます!」
「はあ〜……ほどほどにしておけって言っておいたんだけどねえ〜」
 そのまま、朝斗と雫澄はレティシアの裸を見ないようにとお風呂の中へと入っていったのだった。