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酔いどれバトル IN イルミンスール大浴場!

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第5章 酒池肉林

「へえ〜。確かにワインそっくりだね〜♪」
「さ、早く飲んでみましょう」
 ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)和泉 真奈(いずみ・まな)がワインの注がれたグラスを手に取ると目を見合う。
 興味津々にグラスを下から覗き込みワインを調べるミルディア。
 逆に真奈は先になってワインを飲み込んだ。
「これは、おもしろい味ですわねぇ♪」
「おいしいよね〜、これ美肌にも良いんだよ」
 そういって、現れたのは騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は顔が真っ赤になっていた。
「へえ、美肌にも聞くんだ〜って……え、どうしてそんなに近づいてくるの」
 ゆっくりと詩穂はミルディアへ近づいていく。
 反射的にミルディアは後ろへと下がるが、すぐに風呂桶まで追い詰められてしまう。
「せ〜の、えいやっ」
「きゃわっ」
 大きな水音を立てて、ミルディアはワイン風呂へと飛び込まされた。
 間もなくすると、体制を建て直しミルディアは声を上げようとする
「な、何をする――わわわっ!?」
 が、突然、詩穂はメルディアの体めがけて飛び込んできた。
 慌ててよけようとするメルディアだったが、詩穂のに抱きつかれお酒に沈められてしまう。
 詩穂はメルディアの体をワイン風呂へと沈められたまま、なかなか離してくれない。
 したばたと暴れるうちに、どんどんメルディアはワインを飲み込んでしまっていた。
「わぼっ、きゃはははっ!! も、もうっ飲めな……わはははっ〜」
「どんどん、飲んじゃえ〜って、わわっ!?」
 若干飲ませすぎじゃないだろうかというところまでさしかかったとき、詩穂の体は前のめりにワイン風呂へと沈んだ。
「アイヤー、一方的はよくないネ!」
 そういって、足を横につきだし詩穂を離してくれたのは奏 美凜(そう・めいりん)だった。
「って、大丈夫アルカ?」
「きゃはははっ〜ひゃっ……よ、よってなんらないれふ〜」
 メルディアが時折しゃっくりをあげ、笑いながら答えた。
「イヤイヤ、それ酔ってるアルヨ。て、先ほど引き離したお姉さんも反応が無いネ」
「ばたんきゅ〜……もうむりだよ、のめないよー」
 おなかを空に向け、お風呂に浮きながら詩穂は、寝言を言っていた。
 すでに熟睡してるようだった。
「……しょうがないネ。綾乃のケーキたべに行くネ」
 そういうと美凜は浴場の入り口へと向かった。

「ケーキはどうですか〜?」
桜月 綾乃(さくらづき・あやの)はケーキを作りながら、集まってくる人たちへと楽しそうにケーキを振る舞っていた。
「あら、これもおいしそうですわ。おひとつもらえるかしら?」
「あ、どうぞ」
 それを見た真奈は綾乃からケーキをもらった。
 一口食べると、口の中にほろ甘いワインの味が広がった。
 それと同時にブランデーの独特な味が入っていることに気がついた。
「あら、変わった味ですわ? ブランデーとワインを混ぜてるのかしら?」
 真奈の質問に綾乃は軽く頷いた。
「ええ、ここのワインとブランデー混ぜてみました」
「とってもおいしいですわ、もう一ついただけるかしら」
「ありがとー。どんどん食べてくださいね♪」


「お、うまそうだなひとつもらえるか?」
 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)はその中に入り込み、ケーキを一切れもらう。
「ほう、うまいなこれは」
「え、私も食べてみたい!」
「わわっ、い、一応たくさん作ってますから焦らなくても大丈夫ですよ」
 剛太郎の横から鮎川 望美(あゆかわ・のぞみ)があわてて綾乃に迫った。
 乾いた笑いをしながら、綾乃は手作りケーキを望美に渡した。
 一口食べて、望美は何かに気が付いた。
「これ、お酒が入ってる?」
「はい、【みらくるレシピ】で【ここのワイン】をケーキにしてみたんです!」
「へえ〜おいしいわね」
 ケーキを食べ終え、ワイングラスに残ってたワインをいっきに飲み干す。
 すると、望美はそのまま剛太郎に寄りかかった。
「お、おい?」
「あら、少し酔ったみたい……」
 少し顔を赤くしながら、望美はさらに体を剛太郎へと預ける。
 剛太郎はおもわぬ出来事に少し胸を高鳴らす。
「ほっほー、剛太郎うらやましいのう! どれわしも」
「超じいちゃん、酔ってますよね?」
 剛太郎が聞くと大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)は手に持っている焼酎ビンを頭上から振り下ろした。
 剛太郎は望美の体と一緒にともによけた。
「よっておらんわっ!! このとおり、まだわしは若いのじゃっ!!」
「あはは〜、超じいちゃんおもしろい〜」
「お、わしとつきあおうか?」
 藤右衛門は望美の腰へと手を当ててくる。
 望美は別にその手をどけようともせずに、笑った。
「もー、超じいちゃん〜」
「お、そこの若いおねいさん、よい体してるのう!」
 
 藤右衛門は別の通りかかる女性に目をつけた。
 歩いてきたのは胸が大胆に開いたビキニを着用した女性だった。
 手元にはワインの入ったグラスが握られていた。
「あら、あたし?」
 桜月 舞香(さくらづき・まいか)は笑顔で振り返ってくる。
 が、藤右衛門の姿を見ると驚いたような、困惑したような表情を浮かべた。
「まさか……おじいちゃんが釣れるなんて……」
「む、なんじゃ?」
 藤右衛門は酔いによって顔を赤くしながら舞香の尻を触る。
 舞香、一瞬手を払いのけようとするが寸前のところで手を止めた。
「ううん、何でもないわ。おじいちゃんお若いわね、ちょっと一緒にお酒どう?」
「ぽおっ! もちろんじゃ! いく、いくぞ!」
 藤右衛門は奇声を上げながらもスキップしながら舞香について行く。
 舞香たちは人気の少ない浴場の隅っこへと歩いていった。

 これを見届けた望美と剛太郎は、驚いていた。
「まさか、本当に難破に成功するなんてな」
「こちらはこちらで楽しみましょう?」
「お、おいおい」
 望美は剛太郎に体を預けた。
 剛太郎と楽しむつもりだった望美だが、自然と眠ってしまっていた……。

 だが、超おじいちゃんこと藤右衛門は一転して危機に襲われていた。
「ぬぬっ……なんだか体がしびれ……ぞ」
 舞香の肩へと腕を回したまま、藤右衛門は体が全く動かせずに居た。
「……ふう、どう? 私のしびれ薬入りワイン」
 舞香は先ほどまでの笑顔とは打って変わって、恐怖を覚えるような笑みを浮かべる。
 とおもと、舞香は立ち上がり藤右衛門の手を取るとワイン風呂へと一緒に飛び込んだ。
「うおおおっ!? がっぼぼぼぼぼっ」
 藤右衛門があわてふためきながらも、ワイン風呂につかった。
 舞香が遠慮なく体を沈めてくるので、ワインが次々と口の中へ入っていく。
「早く酔いつぶれて!」
 はじめから、舞香の狙いはこれだった。
 自分を狙ってくる男たちを、お酒で先に酔いつぶさせる。
 そのためにわざと、藤右衛門の誘いに乗っていたのだった。
 だが、藤右衛門はつぶれなかった。
「はーっはっがばぼぼぼぼっ……はっはっ!」
 藤右衛門の笑い声がお風呂に響き渡る。
「な、なんでつぶれないのよ!?」
「がぼぼっ! がぼぼっおりゃああっ」
 藤右衛門の動かないはずの手が、舞香の胸を隠しているビキニに引っかかる。
「きゃあああっ」
 慌てて舞香は藤右衛門を解放した。
「はーっはっは〜」
「な、何なのこのおじいちゃん」
 あくまで藤右衛門はしびれ薬を受けても、痛手にも思っていなかった。
 お酒による欲望と、若い子をナンパするという気持ちが藤右衛門を動かしていた。
 見た目はおじいちゃんだが、中身はお酒効果により50歳若返っていた。
「今度はわしの番じゃ、まていっ!」
「え、な、なに。お、追いかけてくるわ!?」
 走り逃げることにした舞香だったが、藤右衛門は果てまで追いかけてくる。
 しばらく両者が酔いつぶれるまでは続いたそうだ……。