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世間知らずとバーゲンと暗殺者たち

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世間知らずとバーゲンと暗殺者たち

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★プロローグ「黒い笑みVS黒い幕?」★


「社会勉強のスキに悪人を締めるって訳ね、まっかせてよ!」
「ありがとうございます。とても心強いです。これであの方たちを遠慮なく絞められます」
「……え? いやね、冗談よ。ちゃんと法の裁きに御案内だね」
 胸を叩いたルカルカ・ルー(るかるか・るー)が不安になって付け足すと、イキモ・ノスキーダが「分かっていますよ。法は破りませんとも……ふふふ」と微笑む。
(依頼を涼司くんから聞いて心配で来てみましたが、正解のようですね)
 心配げにイキモとルカルカのやり取りを見ているのは山葉 加夜(やまは・かや)だ。山葉 涼司(やまは・りょうじ)から話を聞いて駆け付けたのだが、心配とはいろんな意味でだ。たとえばやりすぎないだろうかとか。
 何をかは、あえて言うまい。
(これからジヴォートくんに手出しが出来ないように深ーく反省してもらう機会ですが、歯止めが利かなくなると大変ですし……せっかく親子で幸せに暮らされているのですから)
 そんな視線に気づいたのか、イキモが言葉を付け足す。
「大丈夫ですよ。ねぇ、アキュートさん」
 イキモの声にアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)は壁にもたれかかったまま頷く。それでホッと息を吐きだすルカルカと加夜だが

「……まあむしろ周りの方が危ねーかもな」
 アキュートが最後に付け足した言葉に不安が再燃した。イキモはニコニコしているだけなので非常に不安である。

「どちらにせよ先に黒幕を見つけ出さないとな。目星はついているのか?」
 話を切り替えたのは今まで黙っていたダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だ。イキモは笑ったまま(というよりずっと笑っている)書類を皆に見せた。
 そこにはたくさんの名前が並んでいた。
「……多いな」
「自分を恥じる行いはしてきておりませんが、商売していますとどうしても恨まれることがありまして」
 おそらくは普段のイキモなら悲しそうな顔をしただろうセリフ。しかしニコニコして言われると妙な迫力がある。
「こりゃまた、結構大物の名前もあるな」
「聞いたことない会社もありますね」
「おそらくこの方はないと思うのですが、一応入れてあります。そちらはワキヤ……あいつの会社の傘下の方たちですね」
 そしてイキモたちは話合い、さらに絞っていくのだった。


***     ***



「今回の依頼は降りるべきだよ。成功しても豪商を敵に回す事になり、情報が漏れてるにも拘らず失敗したら無能扱いじゃ、割に合わないしねぇ」
 いつものように新米暗殺者を訓練していた八神 誠一(やがみ・せいいち)は、組織が受けた暗殺依頼内容を聞いて、直談判をしていた。口にしている通り、依頼を受けるメリットがほとんどない。
 だが組織としても今回の依頼は受けざるを得なかった。依頼を出してきた人物が問題なのだ。その人物自体は小物だが、裏にいる人物と軋轢を生むのは良くない。断るにしてもリスクがある。ならば、と誠一は提案した。
 新米暗殺者たちの演習として依頼を利用するのはどうか、と。
 組織の長はそれを了承した。

「……ということで、これが最終試験の内容だ。今回の依頼で、あたし達を納得させる行動を取れる事が合格条件ってわけだ。ま、無い知恵絞って考えな」
 シャロン・クレイン(しゃろん・くれいん)が集めた新米たちに依頼内容を伝えた。張りつめた空気の中、アドバイスも送る。
「ま、それだけじゃなんだから最後に少しだけアドバイスしてやる。
 狙撃を仕掛ける時は、狙撃位置にいる味方を違う位置から別の狙撃手で見張らせ、不意打ちされないように警戒すること。
 直接戦闘を行う際は、二人以上で仕掛けるように心がけ、一人は必ず相手にできた死角から攻撃を加えるようにすること。
 以上だ。行って来い」
 無言で頷き、去っていく新米暗殺者たち。シャロンはそれらを見送ってから小さく、小さくつぶやいた。
「ま、合格条件は、依頼を無視する事なんだがな」


***     ***



 どこか別の場所でそんなやり取りが繰り広げられている中、
「おー、これがでぱーとか! すげー人いる!」
 ジヴォート・ノスキーダ(じぼーと・のすきーだ)は初めて見るデパートとその雰囲気にはしゃいでいた。
「子供か」
「まあ、初めて見るみたいだし」
 高円寺 海(こうえんじ・かい)雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)が苦笑しつつも、どこか微笑ましくそんな様子を見守っていた。
「じゃ、行こうぜ! バーゲン!」
 そうして始まったジヴォートの社会見学。……さて、どうなる?