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紅き閃光の断末魔 ―前編―

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紅き閃光の断末魔 ―前編―

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◆偉い人ルーム◆

 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
は、偉い人ルームを訪れていた。
 今回は事件が事件なだけに、2人とも普段の服装ではなく、国軍の制服を着用している。
 室内はいかにも偉い人が使っていそうな仰々しいデスクと、辺り一帯を取り囲む膨大な量のファイルで溢れ返っていた。

「これ全部、研究に使われてた資料ってわけ……?」

 いくらここに集積されているとはいえ、セレンは流石に多すぎるだろうと感じていた。
 その理由を突き止めるために、いくつか手に取って内容を確認してみる。
 すると、この研究所で行われていた機構調査には関係無い資料が、大量に混ざっている事がわかった。

「へぇ……あの化け物が被ってた機構以外にも、こんなに機晶技術の資料があるのね」

 実は理系女子であるセレンは、こういう物に強い関心がある。
 少しだけ目を輝かせたが、今は捜査中……その事を思い出し、慌ててファイルを棚に押し戻す。
 そんなセレンを横目に、至って平静な感じのセレアナは、

「あまり余所見している場合じゃないと思うわよ。……ホラ、これ」

 言いながら、一冊の青いファイルを差し出してみせる。
 セレンは苦笑いを浮かべつつそれを受け取ると、再び内容を確認した。

「これって……研究所に関わっていた人達のプロフィールね?」
「ええ。彼らがこれまでに従事してきたプロジェクトの事も書いてあるわ。ここから何か見えてくるんじゃないかしら」

 セレアナの言葉に強く頷いてみせるセレン。
 そして、何かを確信しているような目つきで断言する。

「内部からの手引きが仮にあったとして、その理由をまずは明らかにするのよ。すぐ逃げられる実行犯に比べてすごくリスクが高い行為だから、絶対それに見合う動機があるはずだわ」

 いつもはいい加減に見えるセレンだが、一度やると決めたらその集中力は計り知れない。
 ただ、やっぱり大雑把だという本質は変わらないもので、セレアナはさり気なくその点をフォローしていこうとする。

「でも、明らかにするって言っても、どうするつもり?」
「もちろん生き残り5人のプロフィールを徹底的に洗うのよ!」
「所長さんと研究員2人に、衛兵2人が無事だったのよね。全員のことを今すぐ調べあげるとなると、限界があるわよ?」

 今頼れるのは手元のファイルのみで、ここには職員としての情報しか載っていない。
 彼らの背景を調べるには、少し心許無い気もするが───セレンは前向きだ。

「わかってるわよ。こういうのは地道に進めるものだし、今できる事をやって、周りは後で埋めていけばいいのっ」
「そう。わかってるならいいけど、セレンは雑なとこあるからね。何か引っかかるところは私が指摘するわね」
「…………ええ、助かるわ。あ、ちょっとそこの捜査隊員さん」

 契約者達が捜査をしている間も、教導団側の捜査が滞っているわけではない。
 辺りで作業をしていた捜査隊員の1人が、セレンの声に気づき、こちらに駆けつけてくる。

「悪いけど、生き残り5名の仕事以外の情報……そうね、主に借金の有無や人的な繋がりを調べてくれないかしら?」

 捜査隊員は頷き、作業を一時離れて情報科へ連絡を取りに走っていった。

「手引きした理由が金銭の可能性もあるものね。セレンにしては抜け目がないじゃない」
「一言多いわよ! まぁ時間がかかるでしょうけど、こっちはこっちで頑張りましょ。……頼むわよ、セレアナ」

 こうして2人は共同作業によって、現在得られる限りの人事情報をリストアップしていくのであった。


■獲得情報

<所長のプロフィール> 記録者:なし
シャンバラ教導団技術科所属。本名はトマス・クラーク
これまで様々な機晶技術研究に携わり、結果を残してきた。
その功績から、今回の機構解析においてリーダー役に就任した。
外見的に頼りない印象を受けがちだが、人当たりがよく研究員達から信頼を得ている。
契約者であるが、戦闘方面は得意ではなくからっきし。
殺された副所長とは教導団での同期である。

<研究員Aのプロフィール> 記録者:なし
ヒラニプラ所属。本名はアメリー・フラット
単にヒラニプラ市街地で活動する技術士というだけで、首長家とは関係ない。
機晶技術の腕は確かだが弱気な性格が災いして、あまり成果に結びつかない。
契約者ではないため、スキルは使用できない。
レベッカの上司に当たる。

<研究員Bのプロフィール> 記録者:なし
ヒラニプラ所属。本名はレベッカ・チッコリーニ
単にヒラニプラ市街地で活動する技術士補というだけで、首長家とは関係ない。
勝気な性格で、普段は中々踏ん切りのつかない上司のアメリーを引っ張る役である。
今回の仕事では同じ研究員という立場であるため、その傾向が顕著。
契約者ではないため、スキルは使用できない。

<衛兵Aのプロフィール> 記録者:なし
民間軍事会社ラインハート所属。本名は早川 透
最近になって入社したばかりの新人である。
契約者だが扱えるスキルは多くない。戦闘力はそれなり。
デュオの部下に当たり、彼を慕っている。

<衛兵Bのプロフィール> 記録者:なし
民間軍事会社ラインハート所属。本名は不明。
孤児であり、幼い頃から地球で戦場を渡り歩いてきた戦闘のプロ。
その技術を見込んだLH社が、雇用を条件に契約相手を紹介した。
よって現在は契約者で、多種多様なスキルを持つ。
双剣術を得意とすることから、社内での通称はデュオという。

<それぞれの仕事> 記録者:なし
所長は主に偉い人ルームでの事務作業と、大部屋での研究作業、そして各種機材のメンテナンス。
副所長は所長の仕事を補佐する。メンテナンスは交替で行っている。
研究員は主に大部屋での研究作業と、清掃などの雑務。
衛兵は2人以上が常に正門の見張りを行い、残り1人はパトロールに出る事もある。
また、出勤してきた職員達の持ち物を検査する役割も与えられている。

<管制室の定期メンテナンス> 記録者:なし
管制室は研究所全体のセキュリティを担う場所で、特にメンテナンスが重要である。
そのため、毎日22:00にメンテナンスが行われる事になっている。
このメンテナンスは所長と副所長が一日ずつ交互に行っており、今日の当番は副所長だったらしい。
また、このメンテナンス時と緊急時以外に管制室が使われる事は、基本的に無いようだ。