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死の予言者

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死の予言者

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 9 

 日下部家の一室でレグルス・レオンハート(れぐるす・れおんはーと)が幸福の歌を歌っている。
 丸山風太郎の錯乱状態が限界を超えてしほりの手に余ったため、こうしてレグルスが歌う事で少しでも不安を取り除こうと考えていた。なにしろ恐怖や怯えは動きを鈍らせたり、パニックに陥らせやすくしたりする。咄嗟の時に冷静に対処出来るように心を落ち着かせておいてやりたいとレグルスは思っていた。
「少し落ちついてきたようだ」
 レグルスは傍らで座っている十兵衛に向かって言った。
「そのようだな」
 十兵衛はうなずく。
「お主の歌の効果だろう。しかし、油断は大敵だ」
「分かっている」
 レグルスは答えた。
 なにしろ、相手は奇襲の達人である忍者だ。外で見張りをしている間に風太郎を襲撃される可能性も考えて、レグルスは風太郎の近くで護衛をしようと思った。その時、十兵衛も近くで護衛してもらえるように頼んでみた。レグルスの武器は銃だから接近されると不利だが、十兵衛程の剣の使い手が一緒にいてくれると心強いからだ。また、変装の達人がいることを考えると、1人での行動は危険になりそうだ。必ず何人かでひとまとまりになって行動すれば安全に護衛が出来るだろうとも考えていた。
 実は、レグルスの超感覚は既に忍び寄りつつある忍びの気配を捕らえていた。彼は不意打ちを防ぐべく、殺気看破で少しでも気配を探ろうと試みている。
「来た!」
 ふいにレグルスは叫んだ。
「そのようだな」
 十兵衛が刀を構えて答える。
 
 ほぼ同時に一つの影が天井より舞い降りて来た。
 精悍でありながらどこか猿を思わす風貌を備えた男がギラギラとした目でこちらを睨みつけている。
 ただの、雑魚忍者には思えない。
「何者だ?」
 レグルスの言葉に男は答えた。
「風間小太郎」
「風間……」
 レグルスの言葉が終わるより先に、猿男は手を広げて「風神!」と叫んでいた。
 風がかまいたちになり二人に襲いかかる。
 レグルスは超感覚と殺気看破とミラージュで巧みにそれを躱しながら、猿面の男を狙って【シュヴァルツ】【ヴァイス】を撃った。

 ガンガーン!

 銃弾が猿面の男の肩をかすった!
「ここは俺にまかせて、十兵衛は風太郎としほりを連れて逃げろ!」
 レグルスは叫ぶ。
「分かった、後は頼んだぞ」
 十兵衛は、そう叫ぶと風太郎を連れて隣室へと移動する。
 残されたレグルスは猿面の男の行く手を遮るようにその前に立ちはだかった。
「この先には行かさん」
 猿面の男は肩を抑えて笑う。
「よくこの俺を撃ったと褒めてやろう。しかし、ここまでだ。貴様は既に囲まれている」 
 言われるまでもなく、無数の者がどこからか窺っている気配をレグルスはビンビンと嗅ぎ取っていた。
 レグルスは【シュヴァルツ】【ヴァイス】を構えて天井に向けて撃った。忍びが血を吹きながら落ちて来る。さらに次々と撃つと次々に忍び達が落ちて来る。
「ち……」
 猿面の男は舌打ちをしてその場から逃げ出そうとした。
 その背中に向かってレグルスは【シュヴァルツ】【ヴァイス】を撃つ。
 銃弾が男の足を撃ち抜き、男はその場に倒れた。