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フィギュアスケート『グィネヴィア杯』開催!

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フィギュアスケート『グィネヴィア杯』開催!

リアクション



【3】アイスダンス(5)+α

「2人とも……」
 コーチングエリアの最前列から、
「しっかりね!」
 ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が声援を送った。
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)の2人は……大丈夫、体の震えは収まっている。
「大丈夫。できる、きっとできるわ」
 本大会への出場を決めてからここまでの練習とコーチングを思い返すと……それはもう大変だった。
 2人ともノリノリなのは良いのだが、どうにも仲良しすぎて、すぐに相手を気遣ったり、それでもストイックな面も持ち合わせてるから必死に頑張ろうとして、そんな姿にまた惚れ直しちゃう、みたいな……。
 練習メニューを考えたり演技指導をしたりと何かと忙しかったとミスティ自身も自覚してはいるのだが……。
 でもやっぱりちょっと……私、お邪魔? みたいな、ね。
 リアトリスが『超感覚』で大きな犬耳と1mある犬の尻尾を生やして、演技スタート。まずはレティシアをリードする形でステージの中央へと移動する。
 始まりのダンスはレティシアの周りをリアトリスが二周する。二周が終わる時に二回転スピンを織り交ぜて、そのまま彼女の手をとって―――2人は一緒に滑り出した。
「よしっ!!」
 ミスティが小さくガッツポーズをした。今の箇所、ポイントは手を伸ばすリアトリスではなく「スピンを終えたリアトリスの手をレティシアが掴めるかどうか」にあった。タイミングよく、それでいてピンポイントに手を伸ばせるかどうか。
 練習では何度も失敗した箇所だったが、タイミングは上々。見事成功だ。
 この成功を機に2人は更に躍動した。
 船頭の女神像をイメージしたポーズをとるレティシアの周りでリアトリスがフラメンコを踊る。手拍子と足踏みはポーズだけ。音が出ないように見せるというのも演技プラン通り。
 ラストはレティシアをお姫様だっこしてフィニッシュ!
 沸き上がる歓声の中でミスティは両手をあげて喜びを爆発させていた。
 ●採点結果。アーサー票:6キャンドゥ票:6合計得点:12


 恋は人を盲目にする、とは誰かの言葉。しかしここに盲目になれずに悩む男が想い人と共にリンク上に居た。
「ふうっ!!」
 共にリンクに立つ喜びを爆発させるようにシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)金元 ななな(かねもと・ななな)を力強くリフトしてみせた。
 ラストはなななの独壇場。シンプルながらも白い衣装に身を包んだ彼女はまるでまさに氷湖を舞う白鳥そのもの。そんな愛する彼女を更に美しく演出するべく、シャウラは『光術』で彼女の残影を表現してみせた。
 生き生きと滑る白鳥が光の軌跡を描きながらに舞い踊る。「アイスダンス」種目の最終演技者に相応しい、実に美しいステージだった。
「ふぅー♪ 楽しかったー♪」
 演技を終えたなななは満面の笑みを浮かべて言った。それが見れただけで満足だ、と思いそうになったが―――
「あぁ、俺もだ。素敵なスケーティングだった。君は最高だ!」
 シャウラは心からの賛辞を贈ると共に―――
「こんなに近くで君を……いや、俺はいつもいつでも君の傍に居たい―――」
 スカした声だが真剣な眼差しで精一杯のアタックを仕掛けた。しかし全てを言い終える前に! またなななの反応が表情に表れるよりもずっと前にぃぃ……。
「お疲れさんっ! 2人ともっ♪」
「シューさんっ!」
 なんというタイミングか……。ナオキ・シュケディ(なおき・しゅけでぃ)が2人に飛びついてきた。
 2人への労いの言葉は続く。それ自体は嬉しいのだが……それでも正直今は邪魔にしか思えなかった。いや邪魔以外の何物でもないと、そう、思った所で―――
「2人とも本物の恋人同士みたいだったぞ」
 思わぬ所で話題が戻った。いや戻したのか? どちらにせよナイスだナオキ! これはイケるか?
「滑ってる時は恋人のつもりだったぜ」平静を装ってシャウラが言う。これが本音であり願望でもある。
「まぁ、そういう演目の設定だったもんな」
「………………そうだな。現実はまだ恋人じゃないからな……」
 サラリとそんな……。しかもどうしたことか最悪な事になななまでもが―――
「あれれ? どうしてガッカリしてるの? 恋人じゃないのにそう見えたんだから良かったじゃん。凄いことだよ、ねぇ?」
「そうそう、そうだ。恋人じゃないのになー」
「ねー」
 顔を見合わせて、じゃれ合うように笑う2人。やっぱりナオキは敵だった。なななの鈍感さが……今日ばかりは憎ぃ……。
「おっとそうだ! エキシビジョンが始まるんだった! カメラ位置を確保しないと♪」
 そう言って悪魔は去っていった。お目当てはエキシビジョンに登場する「キャンドゥ 美姫」だそうだ。
 またも返事はお預けか。
 想い人の肩に上着をかけてやることがシャウラにとって精一杯だった。傷は……思ったより深かった。
 ●採点結果。アーサー票:7キャンドゥ票:5合計得点:12


 アイスダンスに続いて行われた「エキシビジョン」。
 審査員であり招待選手でもある「キャンドゥ 美姫」が大トリを務めるのかと思いきや、
「今回の主役はパラミタの人たちでしょう? 私がトリなんてあり得ないわ」
 気を遣ったのだろうか……果たしてどうだろうか。
「エキシビジョンだというのに、リンクインの直前まで彼女は非常に堅い表情をしていた」と後にナオキ・シュケディ(なおき・しゅけでぃ)は語った。もちろんその瞬間もバッチリ押さえてある、と彼は得意げにカメラを指していたようだ。
 ケガの影響を気にしてか、ジャンプの数は少なかったが、それでもかつての世界チャンピオン。キレのある滑りで観客たちを魅了した。

 続いて登場したのは馬 超(ば・ちょう)関羽・雲長(かんう・うんちょう)の2人だ。2人の大男がそれぞれの得物を持ってリンクへと上がる。
 披露するのは演武。それも互いの得物を一切に打ち合わずに、という難題に挑む。
 言葉もなく、打ち合いもない。
 互いに振る得物の軌道を数ミリ単位で見切って避ける。驚くことに2人はそれを氷上でやっているのだ。それを可能にしているのは強靱な筋肉、特にインナーマッスルだろう。
 2人の剣速は次第に速く、そして重く激しくなってゆく。
 見切りも避け様も正に刹那。観客たちは息を飲んで見入っているが、演者である2人は次第に笑みすら浮かべていた。
 氷上に描かれる「虎の舞」。最後も得物を合わせることなく見事にリンク中央で締めてみせた。
「流石は五虎将軍筆頭、関羽軍。見事な腕前にござる。この馬超、改めて感服致しました」
「貴殿もなかなか。酔狂であった」
 大男同士の握手が交わされた所で、本日全てのプログラムが無事終了となった。



「選手の皆さん、会場にお越しの皆さん、そして運営をお手伝いして下さったスタッフのみなさん。本日は本当にありがとうございました」
 大会主催者であるグィネヴィア・フェリシカの挨拶が始まった。この後は「各種目の優勝者の表彰」と、みんな大好き「後片づけ」が控えている。
 ちなみに、グィネヴィアの挨拶は続いているが、フライングして―――

【第一回グィネヴィア杯】
 ・男子シングルス優勝ー該当者なし
 ・女子シングルス優勝ー仁科 姫月(にしな・ひめき)
 ・アイスダンス優勝ー藤林 エリス(ふじばやし・えりす)アイリ・ファンブロウ(あいり・ふぁんぶろう)ペア

 以上が各種目の優勝者である。彼らには「第二回グィネヴィア杯」開催時に前回大会優勝者として招待される事が決定したようだ。
 特設会場まで造ったのだ、第二回大会もきっと開催される事だろう。
 その時まで、みなさまどうか、お達者で♪

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 おはようございます。ゲームマスターの古戝正規です。

 「フィギュアスケート『グィネヴィア杯』開催!」いかがだったでしょうか。
 お楽しみいただけたなら幸いです。

 今回は「アクションの優劣」というよりも「アクションの濃さ」を基準にさせていただきました。
 どんな演出にしたいのか、どんな想いで臨むのか、どんなインパクトを期待しているのか。アクションを読み解いているだけで何とも楽しい時を過ごさせていただきました。
 それもこれもどれも皆さまのアクションが個性的で面白かったからでしょう。本当にありがとうございました。

 またこれまでの通り、例にもよって「称号」は少数、「個別コメント」はありません。全てはリアクション本文に込めたつもりです。何かありましたら次回以降シナリオのアクション欄に追記して頂ければと思います。
 ちなみに、先日公開になりました「創世の絆第二部 最終回」では【4】と【7】のパートを担当してます。こちらもぜひぜひご参加下さいませ。シリーズの最終局面を一緒にド派手に彩りましょう!

 天気予報によれば、まだまだ寒い日は続くようです。皆さまどうかお体にはお気をつけ下さい。
 それでは次回のシナリオでもお会いできることを楽しみにしております♪