天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

悪戯双子のお年玉?

リアクション公開中!

悪戯双子のお年玉?
悪戯双子のお年玉? 悪戯双子のお年玉?

リアクション

「……ん」
 気絶から目覚めた双子は座り込んだまま周囲を見回す。

「おい、ここ別の場所だぜ。というか酷い目に遭ったぜ」
「ヒスミ、このジャングル。嫌な予感がするぞ」
 双子は嫌な胸騒ぎを感じ始める。
 そして的中となる。

「ウェルカム!! 地獄にようこそ!!」
 両手を腰に当て、二人の前に立っている吹雪。
「やはり来たわね」
 呆れた様子のコルセア。

「……な、何でいるんだよ」
「えっ、ちょ、オレ達さっきまで」
 動揺し、冷や汗を垂らす双子。

「も、もしかして」
 双子はここで気付く、薫達と吹雪達がグルだったと。
 しかし、もう遅い。舞台は整っている。
「……気付いたみたいね」
 とコルセア。万が一、双子が大人しくしていればこうはならなかったのだが。
「来るのを待っていたでありますよ。 二十二号!」
 吹雪は待機している二十二号に高らかに合図をした。
 二十二号はゆっくりと動き始める。

「待っていたって」
「どういう」
 双子は何となく察するも念のため吹雪達に訊ねた。

「こうなる事を予測していたという事よ」
 コルセアが代表して双子の疑問に答えた。

「ターゲット確認排除シマス」
 二十二号は88ミリ高射砲を双子に向け、発射。

「なっ、ターゲットって」
「撃つなーー」
 双子は大慌てに避ける。
「もう、大人しくするって」
「そうそう、反省するって、ごめんって」
 砲撃を避けながら恐怖で心無い事を口にする双子。
「……反省、ね。その言葉何度も聞いた覚えがあるのだけど、気のせいかしら?」
 コルセアは呆れ気味に言葉を返した。何度も巻き込まれているため彼らの言葉がその場限りである事はすぐに見抜ける。

「うっ!」
 双子は、痛い所を突かれ、言葉を失ってしまう。

「せん滅するであります」
 吹雪は二十二号に不穏な事を指示する。
「了解シマシタ」
 二十二号は攻撃の間隔を狭め、迷い無く双子に向け砲撃を続ける。

「ちょ、せん滅って」
「ヒスミ、逃げるぞ」
 双子は真っ白な顔で立ち上がり、ジャングルの奥へと入り込む。
 『兵は神速を尊ぶ』を持つため二十二号はすぐに双子に追いつき、砲撃をする。

「ここは夢でありますよ」
 吹雪は双子に無駄だとばかりに声を上げた後、軍神のライフルを手に持った。
「……逃げ切れるかしらね。吹雪も加わるのね」
 コルセアは双子を見送った後、準備を整えた吹雪に訊ねた。
「当然であります! ここは夢でありますよ、お仕置きには最高の場所であります!」
 吹雪は早々にお仕置きに加わりに行った。

 『兵は神速を尊ぶ』を持つ吹雪はすぐに双子を狩っている二十二号に追いついた。
「二十二号、ミサイル発射であります。トラップ設置地点に追い込むでありますよ!」
 前をよろめきながら走る後ろ姿を確認後、次なる指示を出す。
「了解シマシタ。ミサイル発射シマス」
 二十二号は高射砲から6連ミサイルポッドに切り替え、次々と発射。その隣では吹雪が『追加射撃』で軍神のライフルを素早く扱い『五月雨撃ち』で乱射する。
『銃器』を持つ吹雪と『重火器』を持つ二十二号の攻撃は双子の数ミリ横を狙ったように通っていく。計画成就は命中させる事ではない。

「うぉっ、蜂の巣にされる!!」
「やめろって、撃つなーーー」
 植物のツタに引っかかりよろめきながらも必死に南米のジャングルの中を走る双子。道の先に何が待っているかも知らずに。

 そして、二人は踏み出した。
「あっ!」
 知った感覚に間抜けな声を上げるがもう遅い。
 吹雪が仕掛けた『インビジブルトラップ』に引っかかった。
 同時に
「二十二号、空高く打ち上げるであります!」
「了解シマシタ」
 吹雪と二十二号は軍神のライフルと六連ミサイルポッドを構え、一斉射撃。

「ふぎゃぁぁぁぁぁぁ」
 トラップと一斉射撃によって双子の甲高い悲鳴が虚空で響き、輝きに姿を変える。

「お仕置き完了であります。よく飛んでいるでありますよ!」
 吹雪は天に舞い上がる双子を満足そうに見送った。
 それから二十二号と共にコルセアの所に戻った。

 空はいつの間にか夜に変わり、輝く悪戯小僧座。
「綺麗な星が増えたであります。さすが夢でありますな」
 吹雪は夜空を見上げていた。夢だからこそ出来たお仕置きにすっかり満足。
「これで少しは懲りれば……無駄かな」
 コルセアはため息をつき、双子が懲りる事を口にするも無駄だと悟り黙った。
「任務完了シマシタ」
 二十二号も静かに空を見上げていた。
「……流れ星でありますよ!」
 吹雪は流れる二つの星、悪戯小僧座を指さした。
「……流れ星、もしかしたらどこかに落下しているかもね」
 コルセアはふと流れ星の先に目を向けながら言った。
「……そうでありますな。落下地点に行くでありますよ!」
 吹雪はコルセアにうなずき、二十二号に指示をして確認へと急ぐ事に。
「了解シマシタ。落下地点ニテ生命反応ヲ確認シマス」
 二十二号は先頭を担い、落下地点へ向かった。

 少し離れた所。

「なかなか派手なお仕置きだね」
 孝明は豪快な吹雪達のお仕置きを面白がっていた。
「我も行くのだ」
 薫は双子を確認しに行こうと二人を促す。
「そうだな。あれで懲りる訳がないからな」
 孝高には双子が懲りている姿など一片たりとも頭に無い様子。
 とにかく薫達も落下地点に急いだ。

 落下地点。

「……っ、酷い目に遭ったぜ」
「本当だぜ、オレ達ただみんなが楽しく過ごせたらって思っていただけで」
 流れ星から何とか元の姿に戻った双子は自分達の体が無事である事を確かめほっとしていた。
 しかし、彼らの悪夢はまだ終わらない。

「木枯さん、流れ星ですよ」
「そうだねぇ」
 北都の夢から来た稲穂と木枯。吹雪達の様子を見に来たのだ。

「ヒスミさんとキスミさんが星になって降って来るなんて」
「ここは夢だから本当に何でもアリね」
 オデットとフランソワは、吹雪の夢に到着した時に双子がいるかもと吹雪達の夢に来ていたエリザベート達とザカコに合流していた。

「ようやく、追い詰めたのじゃ」
「見つけたですよ〜」
 アーデルハイトとエリザベート。

「何が楽しく過ごせたらですか、人の初夢を引っかき回す事ばかりして」
 ザカコが代表して二人の前に仁王立ち。
「引っかき回すってひでぇな。俺達はちょっと他人が何を見ているのか気になっていて」
「そうだぞ。ちょこっと楽しみたくて」
 地面に座り込んだままの双子は忌々しそうな目でザカコを見上げた。
「言いたい事はそれだけじゃな」
 アーデルハイトがザカコの隣に立ち、厳しい口調。

「……だから、悪かったって」
「もう勘弁してくれよ」
 散々、痛い目に遭っている双子は力の無い声を上げた。

「残念ですけど、勘弁は出来ません。初夢の恨みは重いですよ!」
 ザカコは双子に振り回されたアーデルハイト達のためにも勘弁は出来ない。

「逃げろーーー!!」
 身の危険を感じた双子は這々の体で逃げ始める。

「ザカコ、足止めじゃ」
 アーデルハイトが大声でザカコに指示を出す。

「任せて下さい」
 ザカコは天のカタールで斬りつけ始める。

「ちょ、何で足止めに刃物出すんだよ」
「銃とかミサイルとかみんな無茶苦茶だぜ!」
 ザカコの攻撃に口を尖らせるも逃げ続ける双子。

「……まだ逃げるつもりか」
「今度は本当に病院送りにしてもいいかな?」
「止まるのだ」
 孝高と孝明を引き連れた薫が双子の行く手を塞いだ。

「何でいるんだよ!!」
「ヒスミ、別の道だ」
 道を塞がれても諦めない双子。
「観念するであります!」
「消えてどこかに行くのは諦めるのね」
 吹雪とコルセア。
「ターゲット発見」
 銃撃準備をする二十二号。

「……!!」
 行く手をすっかり塞がれ、戸惑う双子。

 そして、すぐに頭に激痛が走った。
「っ痛!!!」
 双子はザカコの鉄拳を頭に受け、ひしゃげた顔でザカコをにらんだ。

「楽しませたいという思いはいいと思いますし、他人の夢に入れるというのも素敵だと思いますが、何事も限度があります。何より初夢で悪さをする事が許せません!」
 ザカコの説教が始まる。双子を囲む者達は皆うなずくばかりで誰も双子の味方はしない。

「そうじゃ、現実だけでなく夢でも皆に迷惑を掛けおって」
 アーデルハイトは疲れたように頭を撫で続ける双子を見やった。
「少しは楽しかったですぅ」
 エリザベートは素直な感想を言った。校長と言えどまだ子供。

「だろ、校長は分かってるじゃん」
「もういいだろう。何で夢でも痛い目に遭ったり説教聞かなきゃなんないんだよ」
 調子に乗るヒスミと痛い目に嫌気がさしているキスミ。

「……」
 ザカコは思わず数発、双子の頭にぶちかます。周囲の者達は誰も口出ししない。皆同じ気持ちだから。双子の自業自得だと。

「いってぇな」
 双子は頭を撫でながらへこんでいないかを確認している。

「ヒスミさんとキスミさんのせいで自分の夢を壊されて困った人もいたはずです。楽しみにしていた事をぶち壊されたら二人も嫌ですよね」
 ザカコは続ける。

「そりゃ……まぁ……すみません」
 今日は観念した双子は弱々しく謝った。

「……はぁ、謝るならいいですか。自分も楽しめましたし。これですっきりしました」
 ザカコはここでやめた。これ以上言っても仕方が無いからだ。それに本物のアーデルハイトと初夢を楽しめたので。

「……いつもと同じ幕切れね」
 呆れ切ったコルセア。

「オデット、今夜は小説のネタが沢山集まったんじゃないかしら?」
「えぇ。賑やかで騒々しくて楽しいものばかり」
 フランソワはオデットに聞いた。オデットは覆面作家なのだ。今夜はなかなか刺激的だったようだ。

「賑やかな初夢になりましたね」
「そうだねぇ」
 稲穂と木枯は集まった人達を楽しそうに眺めていた。

 この後、皆それぞれの夢に戻った。オデット達と木枯達はまた一緒に旅を続け、エリザベート達とザカコ、吹雪達、薫達は夢が覚めるまで双子の監視をしていた。

 ようやく古い年から新しい年となった。楽しい夢、恐ろしい夢、騒々しい夢、時には現実では会えぬ人に会ったりと望む事が出来る世界、長い夢が終わった。
 満足する人も少なくなく、今回だけは珍しく双子も少しだけ良いことをしたらしい。ちなみに双子の夢は正夢となった。この後、褒め言葉も少々あり、調子に乗って現実で悪戯をしたためアーデルハイトの説教を浴びたという。

担当マスターより

▼担当マスター

夜月天音

▼マスターコメント

 参加者の皆様大変お疲れ様でした。
 凝ったアクションをありがとうございました。

 今回は夢という事で有り得ない事も有り得る世界のためどれだけ皆様の素敵アクションを文字に出来たかとても不安ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
 双子へのお仕置きもいつも以上に激しいもので執筆の間、とても楽しかったです。ただ、懲りていないのが彼ららしいですが。

 これからもよろしくお願い致します。