天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

リアクション公開中!

【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城
【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城 【ですわ!】パラミタ内海に浮かぶ霧の古城

リアクション


第2章 森を抜けて

さーちあんどですとろい!!

 遠野 歌菜(とおの・かな)が【さーちあんどですとろい】を叩き込むと、隠れていた狩人が炎に包まれていく。
 彼らの脇を空飛ぶ箒スパロウで駆けながら、歌菜は霧に包まれた森の奥に目を凝らした。
 すると黒猫のマスコットキャラになった月崎 羽純(つきざき・はすみ)が、歌菜の肩で叫ぶ。
「歌菜! 前方から来るぞ!」
 薄暗い木々の間を複数の火球が飛び込んでくる。
「振り落されないでね!」
「――ぅぐ」
 歌菜は身体を捻るように回転しながら、やり過ごす。
 ある火の玉は草木を焼き払い、またある物は大木を真っ二つにへし折った。
「そこね!」
 歌菜が攻撃が飛んできた方へ、すかさず魔法を放つ。
「ぐあっ――!?」
 悲鳴と共に、何者かが木々にぶつかる音がする。
「羽純くん、大丈夫?」
「ああ、なんとか――隠れろ!」
 今度は大量の矢が飛んできた。反射的に隠れた木に次々と矢が刺さる。
「さすがに多いな」
「そうだね。正面突破はきついかも」
「ごにゃ〜ぽ☆ ここはボクが前に出るよ!」
 声と共に駆け抜けていく鳴神 裁(なるかみ・さい)
「援護よろしくね!」
 物部 九十九(もののべ・つくも)の【ゴッドスピード】で木々を蹴り飛ばし距離をつめ、枝を掴んで空に躍り出ればスラスターパックと重力制御で森の中を縦横無尽に駆け巡る。
 敵の矢が裁を狙うが、翻弄され捕らえることが出来ない。
「じゃあ、援護いくよ! 裁さん、避けてね!」
 歌菜が再び【さーちあんどですとろい】を放つ。
 すると、物陰に隠れていた弓兵達がその姿を現した。 
「みぃつけた☆」
 裁は拾った石ころを蹴り飛ばし、相手の額に命中させる。
 さらにもう一つ空中に放り投げ――
「それ!」
 視線が石ころに向いている間に急接近し、一気に三人殴り飛ばした。
「ボクは風、風の行く手を遮るものなんてありはしないよ☆」
 裁が余裕そうに腕を回している間、黒衣となった黒子アヴァターラ マーシャルアーツ(くろこあう゛ぁたーら・まーしゃるあーつ)が【イナンナの加護】で周囲を警戒する。
 ふいに、危険な気配を感じた。
「――!」
 遠くの方で魔法使いが裁を狙っている。
 身を屈め、ステップを踏むため足に力を込めた、その時――
「切り捨て御免!」
 魔法使いの傍に降り立った西表 アリカ(いりおもて・ありか)が勢いよく刀を振り下ろした。
「二つの尻尾が舞い踊る……魔法少女キャッツアリカ、見参!」
 周囲に敵の気配がなくなる。
「カバーは任せて!」
 アリカが笑顔で裁の方へ手を振る。
 マスコットキャラとして白い子ライオンになった無限 大吾(むげん・だいご)がアリカの足元に降り立つ。
「あ、大吾。すごい数だね。休んでいる暇もないよ」
「そうだな。情報通りだ――」
 彼らが向かっている塔は、中でも守りが厳重な所だった。塀が囲み、常時多くの敵兵が滞在しているとのことだった。
 すぐ傍の杉の木にはっきりと刻まれた戦闘の痕。調査団が交戦したんだろう。見渡すとそれらはいくつも見つけることができる。
 そんな中、ふと大吾は奇妙な物に気づいた。
 ――紫色の水晶が不自然に地面から突き出している。
 ここに来るまでにも、幾つか見たな。自然に発生した物には見えないが……
「と、考えてる時間はないみたいだ。次がきたぞ」
「またぁ?」
「文句を言ってないで行くぞ」
 遠くの草木が微かに動く。
 アリカは大吾と共に身を隠すと、気配を消して枝から枝へと移動する。
「中央の太い木の周囲に4人だ」
「了解。あの辺だね――」
 周り込むように近づいたアリカは、木の幹を蹴って距離を詰める。
「見つけた!」
 気づいた狩人が腰の剣を抜こうとするも、疾風のごとく突き出した刀が胴を貫いた。
 アリカは突き刺した相手を残りの狩人に投げつけると、爆炎を宿した刀で一気に薙ぎ払った。

 数にも負けず怒涛の猛攻を見せる生徒達に、他の塔からも増援が次々と駆け付ける。