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リアクション
★第七話「みんなして、この親子だから何かが起きるとか……失敬な!」★〜その通りだよ!〜
◆
警備員室。
「どう?」
「うむ、やはりな」
ルカルカとダリルが何かを話しあっていた。
「カメラの映像が数日前のものとすり替えられている」
「ほほお、それはそれは」
報告を聞いたプレジの声は、あまり驚いてはいないようで、ダリルは息を吐きだした。もう気づいていた。気づいているはおそらくダリルだけではない。飛都もだ。
映像がすり替えられていたと言うことは、つまり内通者がいる。
プレジの狙いは――。
飛都が息を吐きだした。
「大掃除、か」
「…………」
プレジは何も言わず、ただ静かに頭を下げた。
◆
という、シリアスな展開はさておいて。
スタジオではピロンピロンと音が鳴っていた。
「ジヴォートさん、中継がつながったようでふよ。現場のアキュートさんとウーマさん?」
何の音だと首をかしげるジヴォートに、アシスタントを交代したリイムがフォローをする。
画面が切り替わる。何もない平原に立っているアキュート・クリッパー(あきゅーと・くりっぱー)と……? ウーマ・ンボー(うーま・んぼー)の姿がない。
イキモが困っていると聞いて駆け付けないはずがないのだが。
「うむ。ウーマと」
「アキュートだ」
しかし声はするので、その場にはいるらしい。
「今回それがしたちは幻の大蛇と呼ばれる網タイツニシキヘビの捜索に向かった。その模様をご覧いただきたい」
声が言い終わると同時にまた画面が変わる。右上には『20m超?! 幻の大蛇 網タイツニシキヘビを探せ』の文字が小さく表示されている。
場所はある湿地帯。
目撃情報は数あれど、写真・映像が一切無い伝説の大蛇を探すにあたって、まずは現地に住む住人たちに話を聞いている。見た! という人たちにイラストを書いてもらうが、目撃者それぞれで異なり、デマなのではと呟く。
それでも彼らは果敢に挑戦した。4日間以内に、なんとかその姿をカメラに映すためあちこちを歩き回る。
ある時は、カメラマンが底なし沼にはまり。
ある時は、リポーターが蚊に刺されて痒さで転げ回り。
ある時は、カメラマンの腹が鳴り。
ある時は、張った罠にカメラマンが引っ掛かり。
※正しいツッコミ例→\カメラマン、仕事しろ!/
それはそれは過酷なロケだったが、彼らはついに蛇を発見した。
というところで画面が止まり、
「ここでクイズでふ! 網タイツニシキヘビは、どのようにしてロケ隊の前に姿を現したのでしょうか」
早押しクイズということで皆が皆好きに答えるが、中々正解は出ない。
正解は
「浮いていたウーマさんに襲い掛かった、でふよ!」
「ええっ? ウーマ大丈夫なのか?」
『ああ、大丈夫だ。問題ない』
そこでようやく姿を現したウーマは、包帯を身体に巻いていたが元気そうだ。これも生臭くてすぐに吐き出されたおかげだろう。
「ではもう一問だ。その網タイツニシキヘビの柄は何だったか分かるか?」
普通に考えれば名前から網タイツ柄なのだろうが、それならば問題になるはずがない。
とはいえ、幻のヘビというだけあり、その生態はほとんどが謎。ゲストたちは原住民のイラストを思いだしながら答えていくが、当たらない。
「ヒントは流行に敏感なのでふ!」
「流行に敏感……もしかして……?」
さあ正解は?
『ズッギュ(ピー)ゥゥゥゥゥン!!』
という文字が、蛇の身体に描かれている。まさかのジョ(ピー)タイツ、だと!?
『以上。網タイツニシキヘビをお届けした』
『んじゃ、司会、がんばれよ』
「おう! ありがとな」
「お疲れさまでしたでふ!」
◆
「そんなの分かるわけないじゃない!」
うなるリリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)の横で、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は「まあまあ」となだめている。
「そういや、リリアたちも友達連れてきてくれてるんだよな?」
ディスプレイに映ったリリアとエースの下に、名前と略歴がテロップで流れる。特にエースのところにはニルヴァーナにある『にゃあカフェ』の名前も表示された。
「そうなの。動物番組だし、いろいろな子たちがいた方が良いだろうと思って」
ふふと笑い、「待ってました!」と言わんばかりに不満げな顔を自慢げな顔へと切り替えたリリア。席を立ちあがって友達を呼ぶと、彼女の周りに友達が集まる。
「まずこの子はね〜、龍馬ラクシュって言うんだけど、ゾウも倒せるくらい強いのよ。でも優しい心も持ってて……」
他にもワイルドペガサス・グランツ、ケンタウロス、パラミタオコジョ、パラミタセントバーナード、フライングポニー、聖なる鹿、賢狼、パラミタギンギツネ、パラミタシマリスなども紹介(自慢)していく。
だが中でも、馬系動物について熱心に語った。
「皆良く気がつくし(草食動物だから)、とっても仲間想いだし(群れの生き物だから)、力持ちだし(大型動物だから)もう、非のつけどころが無いのよっ。
こんなにいい子達何だから、もう少し陽の目が当たって欲しいわ!
あ、ユニコーンさん、あとでまふまふさせてね」
「いいぞ……というか。本人がいいって言ったらだけど」
「ええ、もちろん嫌がることはしないわ」
喜ぶリリア。まだユニコーンをウチに迎えられていないので、嬉しいらしい。
「じゃあ次は僕の番かな。おいでシヴァ、ゼノン、ごましお、かぼちゃん」
使い魔の猫と、にゃあカフェから連れてきたようだ。エースも彼らを自慢した後、真剣な顔になってとある資料を披露した。
「知ってるかな。保健所に連れられた猫は、1週間ぐらいで殺されちゃうんだ」
エースは今回番組の話を聞いて『動物可愛いも大事だけど、ペットが捨てられたりして消耗品扱いされてる事とかも少し啓蒙として触れておいた方が番組的には意義がある』と考え、出演の話を受けた。
(この番組を見て「可愛い」のノリだけでペットかって少ししたら飽きて処分したり捨てられたりという悲劇が少しでも減ったらいいな。番組作りってそういう部分も大事だよね)
「そうだな。俺の親父もそういうところから引き取ってはいるみたいなんだけど、やっぱり1人の力じゃ限界あるって言ってた」
「うん。だから皆、どうか彼らを捨てないで欲しい。最後まで、命が尽きる瞬間まで一緒にいてあげて欲しい」
真摯な訴えに、先ほどまで「可愛い!」と騒いでいたスタジオが静まり、ピンと張りつめた空気が流れる。
エースが少し顔を緩めた。
「真剣に聞いてくれてありがとう。
ちょっと宣伝になっちゃうんだけど、にゃあカフェではそういう子たちを引き取って、同時に里親を募集してるんだ。さっきの話を聞いたうえで、それでも、と思う人がいたらぜひ一度来て欲しいな。
もちろん、遊びに来てくれるだけでも嬉しいよ」
「にゃあカフェか。一回行ってみたいな」
「大歓迎だよ」
◆
「はい! ここで一端休憩です。15分後に再開しますので、それまでは自由にしてください」
緩んだ空気に、山葉 加夜(やまは・かや)も「ふぅ」と息を吐きだした。山葉 涼司(やまは・りょうじ)と共に、ジヴォートの初仕事を見に来ていた。
「ふふっでも結構様になってますね」
「そうだな。最初聞いた時はどうなるかと思ったけど」
「ほんとに、立派になって……これも皆さんや、立派に育て上げてくれたあいつのおかげですね」
ハンカチ片手に涙ぐんでいるイキモに、加夜は優しく笑いかけ、涼司はやや苦笑気味の表情をした。
何か飲み物でも、と加夜が立ちあがり、涼司の目が鋭くなった。加夜もほんの一瞬だけ動きを止めた。
「加夜。右奥の青いトレーナーだ」
「はい。涼司くん」
いつも通りの声で、いつもどおりに話す涼司と加夜。しかしイキモはそこに不穏な空気を感じ取って、首をかしげた。
「あ、もう少し近くでカメラを見てみませんか?」
「そうだな。めったに見れないし」
「え? そうですね」
行き先を変える3人の先には、青いトレーナーを着た男が、他の誰もいないカメラへと近づいて行く。そして、カメラに触れようとし……ふらりと倒れかけた。
加夜の手が微かに動いたのを見るに、彼女の『ヒプノシス』の効果らしい。
「おい? 大丈夫か?」
倒れる男を、涼司が驚いたように受け止め、ざわつく周囲に少し気分が悪いらしいと告げた。そしてそのまま、ちょっと外の空気を吸わせてくると男に肩を貸すようにして、外へと向かう。
「大丈夫ですか。しっかりしてくださいね」
加夜もその演技を手伝う。――イキモが本気でハラハラドキドキしていたのは気にせず。
さりげなく男が手に持っていたカミソリを回収した涼司。
もちろん男には、番組が終わるまで眠っていてもらうことにした。
「というか、やっぱり何か起きてるしな」
「そうですねぇ」
「はい?」
おそるべしはノスキーダ(トラブルメーか―)の血! なのだろうか?
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