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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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死んではいけない温泉旅館一泊二日

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5、宴会 〜余韻〜

「ふう……どうにか一日が終わりそうね」
 雅羅が深いため息をついた。
 ほとんどの人たちが食べ終わり、余韻に浸っていた。(ただし、まずいものを食べたという余韻である)
「にゃははははっ!!」
「な、なに!?」
 突然、宴会場に高らかな笑い声が響いた。
 雅羅は驚きそちらを見ると、笑い声をあげていたのは蠡だった。
「ど、どうしたの?」
「その、救護の方に食べ過ぎのお薬をもらったら大変なことに?」
 雅羅が膝枕をしていた四十万に話しかける。
 しかし、四十万自身も何が起きたのかわからなかった。
「あれれ〜これはしばらく安静にしたほうがよさそうですね!」
 イナとミナがどこからかともなく現れ、蠡をタンカに乗せた。
 客室へと寝かせるといって連れて行ったのだった。

「私もついてい――あれ?」
 付き添うために立ち上がろうとした四十万だったが、膝元に白星 カルテ(しらほし・かるて)が座っていた。
「にゃ〜、こんばんわなのっ」
「こ、こんばんわっ?」
 顔をほんのり赤くし、カルテはどうやら酔っているようだった。
 おそらく原因はカルテが持っている、未成年でも酔える不思議な飲み物によるせいだろう。
「お姉さんも飲むっ?」
「わわっ!? そ、そんなに飲まないよっ」
 コップに注がれたお酒(のようなもの)を四十万にのませようとするが、手元が滑り四十万の服がびしょ濡れになってしまった。
「ごめんなさい……」
 無邪気な笑顔から一転して泣きそうになりながら謝るカルテに、四十万はあわててあやした。

「……で、あなたは何をしてるのかしら」
 カルテが四十万に戯れている様子を先ほどからカメラで捕らえている白星 切札(しらほし・きりふだ)に雅羅は声をかけた。
 切札は一瞬嫌そうな表情で雅羅へ振り向くが、すぐに笑顔を取り繕った。
「娘の写真をとっていたんです。なにか問題でも?」
 せっかく写真をとっていたのに邪魔をしやがって、とでもいいたいふうにとげのあるしゃべり方だった。
 しかし、雅羅は怪しいとばかりに疑いの目を向ける。
「あなた、たしかお風呂場でも写真とってたわよね?」
「なんのことでしょう……あ、雅羅の写真もとってますよ?」
 そういいながら、一眼レフカメラのディスプレイを雅羅へと向けた。
 瞬間、雅羅の顔が真っ赤になった。同時に風船が音を立てて割れた。
 まさかの仕掛け人以外のせいで初めて風船が割れた瞬間である。
「あなた。いつこれ撮ったのよ!?」
 慌てて雅羅がカメラを取り上げようとするも、切札はうまくよける。
 ディスプレイに写っていたのは紛れもなく、湯煙の中でうまいこと隠れてはいるものの、全裸の雅羅。
 しかも遠くからではなく、距離1メートル以内、したから見上げるというアングルだった。
「あ……何をするんですか」
 雅羅がようやくカメラを取り上げる。
 すばやく撮影したものを見ると、カルテの写真が9割以上を占めていた。
「……親バカね」
「ふふふ、聞いて驚かないでください。娘の写真を……いえ、娘を守るために風船を2個犠牲に――」

「なっ、なに!? その煙!」
 四十万のあわてる声が突然響いた。
 カルテの持っていたお酒から煙が上がり始めたのだった。
「な、なんらの?」
 酔いどれているカルテは目を丸くしながらお酒の瓶をただ見ることしかできなった。
「あぶない!!」
 瓶が赤くなり始めたころ、とっさに切札が瓶を持つと、廊下へと飛び出ていった。
 そして、数秒後には爆発音が無情にも響き渡った。
「……最後の風船が割れたわね」
 雅羅はぽつりとつぶやきながら、その親ばか意思の強さに心から評したのだった。