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もちもちぺったん!

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もちもちぺったん!

リアクション

「……とうとう、きちゃったわね。この人の番が」
「きちゃいましたネー」
「サニーさん、気をしっかり」
「お茶でも飲みますか?」
 審査員席が、ざわつく。
 この人の番を前にして。
「フハハハハハ!」
 登場する前から聞こえてくる高笑い。
「我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
「あー」
「あアー」
 ウェザーのイベント随一のトラブルメーカー、ハデスだった。
 今日も今日とてハデスの 発明品(はですの・はつめいひん)をひっさげ、何をやらかしてくれるのだろう。
「餅つきであれば、この俺の発明品の出番だな!」
「餅ツキ命令ヲ了解シマシタ。起動シマス」
 発明品から伸びる多数のアームには、それぞれ杵が握られている。
 その横に絶望的な表情で立っているのは、レイン。
 返し役の希望者がいなかったので、今回も呼び出されたのだ。
「ていうかお前が返せばいいじゃないか」
「俺は頭脳動労専門だからな!」
 ハデスに食って掛かってみるが、意にも解さない。
 はなから高みの見物らしい。
 そうこう言っている間に発明品が動き出す。
 伸びたアームが杵を器用に動かしていく。
「な、なかなかやるじゃないか」
 意外に無難な杵運びに、ほっとするレイン。
 しかしそんな簡単に事が終わるはずもなかった。
「ククククク、餅つき大会で優勝するための秘密兵器、発動だ!」
「ああいらん事を!」
 ぽちっとな。
 ハデスが発明品の後方スイッチを押すと、突然発明品のアームがういんういんと回り始める。
「これぞ究極の餅を作るためのハイパーモード! さあ、至高の餅が生まれる瞬間を目の当たりにするがいい!」
「究極だか至高だか、どっちなんだ」
「はいぱーもーど、起動!」
 レインのツッコミむなしく、発明品の胸(あたり)が開いた。
 餅の中に、謎の青色物体が投入される。
「あ、こら食べ物に変なもの入れるんじゃない!」
 ぺったんぺったんぺったんぺったん……ぴょいっ!
 発明品のついていた餅が、突然動き出した。
「え」
「あ」
 そしてそのまま周囲の人間に襲い掛かる!
 アタックオブザ餅!
 最初の被害者は、アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)だった。
「こ、ここは私がなんとかしないと……!」
 不慮のトラブルに備え待機していたのが仇となった。
 身構えるアルテミスに、飛び掛かる青い餅。
「一気に決めます……!」
 アルテミスのソニックブレードが一閃する。
 いや、一閃したかに見えたがその攻撃は実は数多のもの。
 まともに食らった青い餅は、四散する。
「やりました……って、きゃあ!」
 バラバラになった青い餅……それはまるでスライムの様に見えた……は、アルテミスの服の中に潜り込む。
「や、ちょっと、やめて、ください……っ」
 そしてお約束通り悶えるアルテミス。
 まるでそんな彼女の反応を楽しむかのように、スライム餅は服の中で自由に形を変える。
「あ……ぁあっ」
 ぐにょぐにょと蠢くものに、次第にアルテミスの身体の力が抜けていく。
 更に。
「えっ……」
 アルテミスの足元に、今までのものとは違う、茶色の餅が現れた。
 そう、現れたということは、当然動いてきたということで。
「ひっ、や、止めて……っ」
 これまたアルテミスに襲い掛かる茶色の餅。
 それは、数分前のことだった。
「兄さんに任せておいたら、どんな餅つき大会になるか分からないじゃないですか。ここは私がちゃんとしたお餅料理を作らないと」
 高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)は、餅を料理した。
 そして恐怖のチョコスライム餅が完成した!
「早い! 展開が早いですわ!」
 文句を言う間もなく、殺人的調理師の咲耶はチョコスライム餅の餌食となる。
「あ、はぅううう……」
 チョコスライム餅に完全に蹂躙され尽くした咲耶に、その暴走を止めることは不可能だった。
 かくして、チョコスライム餅とスライム餅は、会場に解き放たれたのだった……