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蒼フロ総選挙2023、その後に

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蒼フロ総選挙2023、その後に

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 キロス散財への道のり
 
 
 
 一方、雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)は、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)と共に創世学園都市を観光していた。
「あんたと一緒なの」
 雅羅は嫌そうな顔をしたが、ゲブーは勿論気にしない。
「はぁ? 何だよ、応援する友達へのお礼なんだろ。イイじゃねえか」
「何よ、お礼に胸でも揉ませろっていうの?」
「おっぱいは今のところ満足中だ。だから他のことな」
 雅羅おっぱいは、ゲブーの見立てでは何度もエステしただけあっていい状態だ。
 災厄以外では、心も体も健康である。
 そんな雅羅のイイ顔を見るのも、ゲブーは嬉しいのだ。
「お礼っつーならメシでも作って貰いたいところだがっ! 雅羅のもっとイイ顔を見てやるぜ!」
「はあ?」
 独り言のつもりが、もろ叫んでいる。
「いやいや、観光だろ。お勧めの店があるんだぜっ!」
と、ゲブーが雅羅を連れて行ったのは、女の子は皆大好きに決まっている、【ゆるふわぬいぐるみ店】だった。

 雅羅は、目を丸くしてゲブーを見た。
 見ればゲブーは、『うさぎの足』をアクセサリーにつけている。
「ぬいぐるみ……を、買って欲しいの?」
「違うっ! 雅羅が好きなのを選ぶ! 買う!
 金があるならでっかい抱き枕になるくらいのヤツがオススメだぜっ!」
「抱き枕……は、使わないけど、そうね、どうせなら大きいのを買おうかしら」
 勧められるままに、雅羅はぬいぐるみを買うことにする。
 ゲブーと共に、店中のぬいぐるみと戯れながら、ひとつを決めた。
「うん、折角ニルヴァーナだし、やっぱりこれかしら」
と、雅羅が選んだのは、等身大たいむちゃんぬいぐるみだ。
 とりあえず、どれを選ぶかはゲブーには関係ない。雅羅のイイ顔を見られればそれでいいのだ。
「よしっ、イイ顔じゃねぇかよ! 女の子はそうじゃなきゃいけないぜっ」
「あなたが見てるのは、顔じゃなくて胸でしょ」
「勿論、どんな災厄からもそのおっぱいは俺様が守ってやるぜ!
 だが俺様の嫁には笑顔しか認めねえぜっ!」
「いつ誰があなたの嫁になったのよ!」
 というか、それ以前に嫁が何人いるのかという話ではあるが。


◇ ◇ ◇


 アイールでの観光を続ける予定のトオル達と別れ、ハルカを連れたキロスがお針子の店【フィーロ】へ行くと、ついでに買い物をして行かないかい、と天音は笑った。
「ハルカなら、このポシェット似合うんじゃないかな?」
「可愛いのです」
 ピンク色の、パラミタイルカが刺繍されたポシェットを気に入った様子のハルカを、さっとキロスの前に押し出す。
「キロスお兄ちゃん、このポシェットこの子によく似合うと思わない?」
 きょとんと瞬くハルカに、天音は耳元で囁いた。
「ハルカが大人になった時に役に立つかもしれないから、僕に任せてくれるかな?」
「……ガキに出してやる金なんかねえよ」
 キロスは苦い顔をする。
「ハルカはもう15歳なのです」
「迷子なんかになってるうちはガキだっ」
 解っていないハルカの言葉に、そう突っ込みを入れてから、キロスは全くとぶつぶつ言って、
「幾らだよ」
と機嫌悪く訊ねた。



『50万日本円分のお米券を貰ったキロスに使い方を考えてあげる会』一行は、中継基地観光がてら、買い物などをする。
「……使い道……考えて……いますか?」
「ゆっくりニルヴァーナを歩き回ることもあまり無いしな。何かお勧めとかあるか?」
 菊花 みのり(きくばな・みのり)は、訊き返されて、考え込んだ。
「……ワタシ、は……そこまで……知らないので……。
 折角ですので……自分の……好きな……物を……買ったら……よいのでは……?」
「好きな物、ね」
 キロスは苦笑して肩を竦める。当座、特に欲しい物はなさそうだ。
「そうだな……俺の場合は、武器か服か、食材か……。
 あとは、誰かにあげるとか? ああ、どうせなら貰いたいくらいだな。そろそろ食材切れそうだし。
 ちょっと位豪勢なもの買えそうだし……」
 グレン・フォルカニアス(ぐれん・ふぉるかにあす)の言葉に、キロスは呆れた目を向ける。
「所帯じみてんな」
「冗談だよ。人の金でそう使うかよ」
「ま、すぐに使い切るのは難しいでしょうし、皆で協力してあげるわよね」
 アルマー・ジェフェリア(あるまー・じぇふぇりあ)がにっこり笑った。
 キロスに散財させつつ、この機会に、みのりに色々な人と関わりを持って欲しい、と、アルマーは思っている。
 キロスがニルヴァーナで孤独に過ごすことになるのではという可能性も考えていたアルマーだが、蓋を開けてみれば、団体観光客のようになっていた。
「お勧めは、そうね……パートナーにプレゼントを選んだらどうかしら。
 折角なんだし、こういう時ぐらいパートナーの為に使ったら?」

「『お米券』の使い道? そんなの、ひとつしかないじゃない?」
 多比良 幽那(たひら・ゆうな)は、自分のお米券の使い道を教え、それをさりげなく勧めてあげた。
 実際にそれを貰ったのはパートナーのキャロル著 不思議の国のアリス(きゃろるちょ・ふしぎのくにのありす)だが、彼女のものは自分のもの……ではなく、アリスが使い道には執着しなかったので、代わりに使ったのだった。
「それはずばり『お米』よ!
 お米の苗や、米栽培用セット! キロスもどう?」
「米ぇ?」
「いつかニルヴァーナの荒野にのどかな田園風景が広がる、そんな未来の為に汗水垂らして頑張るのが、私達農家のサダメよ!」
「俺は農家じゃねえよ」
「そう? 素敵なプランなのに……」
 幽那の目はマジだったが、強制はしない。
『まああれが幽那ちゃんの生きがいだしね。
 そんなとより、キロっち! お米券て素晴らしいよ!』
「そうか? 俺には嫌な予感しかしねえんだがな」
 芝居がかった口調で大げさに言うアリスに、反比例してキロスのテンションが下がる。
 そう、何というか、群がる連中にたかられそうな。
『そうだよ! だってこれでモテモテになれるからだよ! 名づけて「キロスモテモテ大作戦!」』
「……………………どんな作戦だよ」
『そりゃ決まってるよ!
 お米券やお金で皆の好きな物を買ってあげるのさ!
 そうすればほら! お金のチカラでモテモテだよ!』
「俺は別に、金の力なんて必要としてねえよ」
 キロスは溜息を吐く。

 そんな会話もありつつも、キロスはニルヴァーナ観光を楽しんでいた。
 皆でわいわいやるのは嫌いではないようだ。

「キロス君……。これを……」
 みのりは、ショッピングの間に自ら購入したお菓子を、キロスに渡した。
『ええーっ?
 ダメじゃんダメじゃん! キロっちじゃなくてキミが貢いでどーすんの!?』
 アリスがぶうぶうと文句を言う。
「……あの……これは、お祝い……ですので……」
 綺麗にラッピングされた、お菓子の包み。
 それはキロスの総選挙入賞を祝って、アルマー達と三人で選んだものだ。
『プレゼントのお礼は三倍返しだよ、キロっち〜』
「いいぜ?」
 キロスは、ふっとみのりに笑いかける。
「ありがとよ。
 礼は、二人きりでデートの時にさせてもらうが、どうだ?」
 目を瞬かせて首を傾げるみのりの前に、ずい、とアルマーが割って入った。
「そういうのは、マネージャーを通して貰いたいわね」