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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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「ピンポイントで来たわね……間違いなくここの場所を把握しているわ」
 リネンは木陰から頭上を見上げ、上空を旋回する大型飛空挺をじっと見据えた。
「撤退してくれるのが一番良いんだけれど……そうもいかないかしらね」
 ヘリワードも難しい表情をして空を見上げている。
「待って! 上空から何か粉のような物を巻こうとしているみたい!」
 双眼鏡を覗いていたコルセアが叫ぶ。
「それなら、先手必勝だね」
 すかさず、北都が辺り一面に猛吹雪を巻き起こした。木々の合間を抜けて上空の飛空挺を襲う。
 視界が白く煙る中、続けざまにソーマは雷霆ケラウノスの杖先から雷撃を放った。
「当たりだな」
 頭上で轟音と叫び声が微かに聞こえた。
「後ろからも来るわよ!!」
 コルセアの声と同時に、複数の銃声が鳴り響いた。
 皆、それぞれに身を木の陰に隠す。別働隊が地上から攻めてきていたのだろう。
「小型の飛空挺も降りてきてるみたいだぜ。地上と上空から一斉に攻撃を仕掛ける気だな」
 フェイミィがバルディッシュを構えて、上空を見上げる。一触即発の、張りつめた空気が流れる。

「……こんな森の中に……人、です……か?」
 鍛錬所の裏手に、菊花 みのり(きくばな・みのり)はいた。
「そういえば、ここにある遺跡の調査依頼が掲示されていた気がするわ」
 みのりと共に歩いていたアルマー・ジェフェリア(あるまー・じぇふぇりあ)が、微かな記憶を思い起こす。
「遺跡……? ……そんなもの…………出て……ましたね……」
 みのりが納得するように頷いて、何もない空を見つめた。
「…………調査隊と……空賊が……? ……戦って、いる……と……」
 見えない何かと会話をするように、みのりは小さく呟いた。
「つまり、宝の、奪い合いか」
 グレン・フォルカニアス(ぐれん・ふぉるかにあす)が瞬間、辺りに上空から炎の突風が吹き付けた。周囲の木々に、火が燃え移っていく。
「何これ、まさかこの辺りの森を焼き払おうっていうの!?」
「彼も……『ここ』の住人も……色んな人達に……絡まれますね……」
「こいつら、どうする」
 グレンの言葉に応えるように、みのりの手の内に握られたファルシオンが凍てつく冷気を纏う。
「てめえらも奴らの仲間か!?」
「あまり……騒がないで……ください……ここの住人は、少しだけ…気が……短いです……」
 みのりのファルシオンの先から氷が噴出する。辺りに燃え広がる炎と空賊たちを包み込んだ。
「……そう…………ですか……。それなら……容赦は、しません……」
「お前……何と話している!?」
 虚空を見つめるみのりの姿に畏れをなしたのか、空賊の声は震えている。
「聞こえないなら……気にしなくていいですよ……それが、幸せ…………というのも……あります……」
 言い終わると同時に振り下ろされた刃が、空賊を叩き斬った。
 一人の空賊が、みのりの横をすり抜けるようにして遺跡に近づいた。
「ごめんなさいね。通す事は簡単だけど、通しちゃいけないみたいだから……話をじっくり聞かせてもらおうかしら?」
 アルマーは空賊の前に槍を差し入れて、行く手を塞ぐ。
「話? 俺たちは金で雇われただけだ。何の話が聞きたいんだか知らねえがな」
 空賊はダガーを構えると、みのり目掛けて飛びかかった。
「彼女に、触れるな」
 グレンが地を蹴り、その反動で加速したまま七輝剣を続けざまに繰り出した。切っ先から放たれる爆炎が空賊を包み込む。
 すかさずアルマーの槍の先から放たれた魔術が、空賊たちを薙ぎ払った。
「こんな能力者ばかり調査に雇われていたなんて聞いてねえ」
「知らないな。調査依頼だとか仲間とか、俺達はただ彼女を守る。それだけだ」
「……っ撤退だ!」
 その声と共に、遺跡の後方にいた生き残りの空賊たちは撤退していった。

「味方が増えたのは心強いね。絶対にここは通さないよ」
 北都は吹雪を起こし、周囲に燃え移った炎を消しながら扉の前に立ちはだかる。
 上空には、まだ数台の小型費空挺が残っている。
「残ったのは、上空の奴らか」
 ソーマの手にした漆黒の薔薇が、周囲を暗黒にとけ込ませていく。視界が闇に包まれる。
 悲鳴と共に、飛空挺同士がぶつかったような鈍い音がした。
 バランスを崩した小型費空挺目掛けて、吹雪のライフルが火を噴く。
「首領は降りてこないみたいね。様子見、といったところなのかしら」
 リネンは、ダメージを受けながらも上空に留まっている大型飛空挺を睨んだ。
「ここを守りながら、飛空挺の様子を見ようぜ。中にいる調査隊からも連絡が入るかもしれねえし」
 フェイミィの言葉に皆は頷いて、また遺跡の周囲に散らばって身を潜めるのだった。