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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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【琥珀の眠り姫】密林深く、蔦は知る。聖杯の謎

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第四章 聖杯

 そこに広がっていたのは、祭壇のある広い空間だった。
 あれほど鍛錬所中を取り巻いていたはずの蔦の侵入がないことから、恐らく何か特殊な力で守られていたのだろうと推測される。
 階段からまっすぐに伸びる通路の先に大理石でできた台があり、その上には優勝カップのトロフィーのようなものが置かれている。
「まさかこれが聖杯……とか、言わないよな?」
 キロスは、トロフィーに近付きながら一人呟いた。
「ねえねえキロっち。念のために、このランドセルにしまっておかない?
 そうしたら非物質化するから、安全なところに着いてから調べてみるとかできるよ?」
 傍を歩いてきていたノーンが提案する。
「という案を考えてみたのですが、どうでしょうか?」
 舞花もキロスに訊ねる。
「そうだな。その方が安全だろう」
 キロスはそのトロフィーに手をかけ持ち上げた。瞬間、トロフィーの説明文のように張り付いていたプレートが、剥がれ落ちた。
「それは……ロレンスの残したプレート?」
 クリストファーが落ちたプレートを手に取った。

『我が妹を守るため、王国の崩壊の余波にも耐えられる禁断の封印を使用した。
 もし君が帰ってきたなら、どうか私の妹にかけた禁呪を解いて欲しい。
 三つの聖杯が満ちる時、永遠の眠りは解けるだろう』

「……ロレンスのメッセージとみて、間違いはないみたいだね」
 クリスティーも、その内容を読んで同意する。
「ロレンス……」
 ユーフォリアが小さく呟いた瞬間、
「この台座、まだ何かあるな!」
 と、キロスが台座を軽く叩く。トロフィーの乗っていた台座が、隠し棚になっている事に気付いたのだ。
 少しの間キロスが触っていると、カタン、と軽い音を立てて、蓋のように上部が外れた。
「当たりだ」
 キロスは、台座の空洞から聖杯を取り出した。一つ目に見付けた聖杯と同じサイズ、デザインをしている。
 ノーンの差し出すランドセルに聖杯をしまおうとしたーーその瞬間、キロスとノーンの間を疾風が過ぎた。
 咄嗟にキロスは剣を振り抜く。が、キン、とその刃を弾かれる。
 数歩歩先に抜けたのは、恭也だった。
「……どうも嫌な視線を感じると思ったが、お前が裏切り者か」
 キロスは、機械剣カグツチを向ける恭也を睨んだ。
「騙して悪いが、俺は空賊に雇われた傭兵なんだな、これが!」
 タン、と地を蹴った恭也は、バーストダッシュの力でキロスたちの頭上を飛び越え、闘技場へと続く階段へと向かった。
「逃がさねえよ!」
 すかさず後を追うキロスが、階段を一気に飛び上がり斬りかかった。
 ーーその一断ちを、鈍く光るカットラスが受け止める。――そこにいたのは、あの女首領だった。
「出たな……」
 キロスは不敵に笑う女首領を睨みつける。その周囲には、取り巻きの空賊たちも数人見られた。
「そいつは任せて!」
 頭上から声がして、キロスは上を見た。リネンとヘイリー、フェイミィが、ペガサスに乗って闘技場の上空から降りてきたのだった。