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リアクション
仁科 姫月(にしな・ひめき)は、不意に成田 樹彦(なりた・たつひこ)の腕に抱きついた。
「どうした」
姫月が兄の質問をそらす。
「豪華寝台列車に乗って旅行していたはずが、まさか異世界旅行になるなんてね。思いもしなかったわ」
別にそんなことを言いたいわけじゃない。賑わいのあるアーケードを恋人見たく腕組みをして歩きたいというのも少しある。本心はと言うと、見知らぬ土地と帰れるかわからないことへの不安を紛らわそうと思ってのこと。
「?」
胸を腕に押し付けてみても、その不安さを感じ取ってくれるほど樹彦は敏感ではないのは姫月もわかっていた。
「なんでもないよ。あ、あそこの店はいろう」
『ノース伝統料理』と読める看板を指して姫月が提案する。
「それはいいが、……持ち金ないぞ?」
そんな答えが欲しい姫月じゃない。けどこれが兄だからしょうがない。
「どっかで換金すればいいのよ」
「……そいっ」
それを見てセレンフィリティがセレアナに抱きつく。
「ちょっとなにしてるの?」
後ろから抱きつかれたセレアナが一瞬身を捩る。
「へへーいいじゃない」
セレアナは恋人の奇行に諦めと安堵を混じらせて言葉を漏らす。
「……全く脳天気なんだから」
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