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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 10

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 10

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第6章 大きな侵略者・みーんなワレらのモノッ story5

 ペンフレンドを静香を招いて遊んだばかりなのに、水の魔性に捕らわれて恐ろしい目に遭っている。
 彼女がその存在を嫌いになってしまわないか、クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)は不安な気持ちでいっぱいだ。
「まさか、静香さんが狙われてしまうなんて…」
 昔、静香のポスターを見たクリスティーは、彼女に一目惚れてしていた。
 様々な理由があって、今は友達として交流しているのだが…。
 いつか彼女には、本当の自分のことを告げようか迷っている。
 その日がいつになるか、ずっと悩んでいた中、侵略者に捕らわれてしまった。
 エリザベートからのメールでどういう目的か把握しているものの、好きだった彼女が嫁にされるかも…ということを知り、急いで駆けつけた。
「たまたまクリスタロスが狙われて、そこに着た静香さんが偶然…気に入られてしまったということだよね」
「無理やりお嫁さんにされるなんて、静香ちゃんもイヤだよね」
「うん…、ボクもイヤだっていう相手を連れ去るなんて、許せないよノーンさん」
「でも、助けにいってカエルになっちゃったーってわけにいかないよね。ルルディちゃん、香りお願い」
「はい、承知いたしました…」
 静かに頷いたルルディはノーンたちに呪いの耐性を与える。
「ほっといたら世界中全部、ワレらのものだー!とか言いそうだな」
 マジで言いそうだな、とカルキノスはケラっと笑った。
「人のものとったらいけないよね、静香ちゃんは皆のものだし」
「ノーン、それは少し違いますわ」
「あれー?そうかな。学校いったら校長先生とかも、皆大好きだよね?」
「LoveとLikeの違いですわね。まぁ、例外もいましたけど」
 互いに“Love”になった相手もいたことを思い出しだし、可笑しそうに苦笑した。
「えるおーぶい…いー…、ロベ?あれ、なんか読み方違ったかも」
「ノーンにはまだ早すぎましたわね」
 首を傾げて考えているノーンを前に、エリシアは恋の話題を終了させた。
「皆、ゴットスピードをかけるゆえこっちに来るのだ」
「どうも」
「ありがとうー!」
「ルカたちも♪」
「あぁそうだったな…。ところでオメガは?さっきから見当たらないのだが」
「エースと一緒に行くって言ってたと思う」
「な、なんだと…っ」
 また先を越されたのか!?と嫉妬の炎で燃えそうになった。
「町の人の救助をしたいらしいの。エースもそっちのメンバーだったから、しょーがないわよ」
「それなら…しかたあるまい。人民の救出も大事なのだからな」
「オメガさんは1人しかいないんだから、普通の日常以外では取り合わないの♪」
「取り合うも何も…、彼女の意思を尊重せなばな…」
「よく我慢したな、えらーいえらーい。またエースかっ!!て、怒ってべそかくかと思ったぜ」
 カルキノスは淵が“ぇーん、ええぇん”と泣く姿を想像していたようだ。
「だ…誰が泣くか。そのようなみっともないマネするものかっ」
「怒るなって半分冗談なんだからさ。あっちは親友感覚なんだから心配することはないだろ。あのなぁ、男と女の友情だって成立するんだぜ?」
「うむ…それもそうだ」
「淵の恋の悩み♪を話している場合じゃないわ。静香さんを早く助けてあげなきゃ。結和、気配を探してもらえる?」
「え、あ…はい。ロラに頼んでみますね。…ロラ、探してみてください」
「うー!(やってみる!)」
 ロラ・ピソン・ルレアル(ろら・ぴそんるれある)はペンダントに祈りを集中させて探知を試みる。
「ううー?(たくさんありすぎて、分からないよ?)」
「そうですか…。じゃあ、分身のほうをお願い出来ますか。そちらは目に見えて感知出来ないものらしいですから」
「んぅうー。(それら分かるかも)」
「こんな状況でなければ天国ですねっ。不思議な表情が可愛くて…ああいけない」
 結和は建物の間にちらちらと姿を見せる赤いカエルにときめく。
「カエルって鶏肉みたいでうめぇんだったよな」
「そ、そんな、カルキノスさん。あんなに可愛い生き物を、食べてしまうだなんて…酷すぎますっ」
「うおぃ〜泣くなよ」
「カ…カエルさんは、素敵な…お友達なんです。食べては…いけないんです。……食べないと誓いますか?」
「そりゃ、ちょっと…うわぁあ泣くなって」
「ああー、カルキが女の子泣かしてるー」
「女の子を泣かすやつは悪じゃ、仕置きしてやろうかのぅ?」
 ジュディ・ディライド(じゅでぃ・でぃらいど)がニマッと黒い笑みを浮かべた。
「静香殿を助けるのではなかったのか?」
「む、仕方あるまい。仕置きは後じゃ」
 背を向けたジュディを見て一瞬ほっとしたのも束の間、事件が片付いたら待っているのじゃぞ、ということだった。



「静香さん…どうやって見つけようかしら。どう思う?ベアトリーチェ」
「すみません、美羽さん。私にはさっぱり…」
 相手の気持ちになれば発見しやすいかもしれない。
 しかし、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)には略奪者の気持ちは分からなかった。
「静香は嫁ーってこっちから言ってみるとか?」
「それはそれで、挑発しすぎる気がします」
「んー、そうよね…」
「(なるほど、その手があったね。これも助けるためだし、深い意味は…。えっと…し…静香さんは、ボクのお…およ、およ…、言えないっ。恥ずかしくって言えないよ)」
 クリスティーは言えるか、心の中でテストしてみるが無理だった。
「かなりわさってんなー。レインオブペネトレーションで可視化させておくか?」
「分身は見えなくなれないんだったね、陣くん」
「あー…、それはオレらがちゃっちゃと掃除するしかなぁ…。ダリルさんたちには、本体のほうに集中してもらいたいんや」
「効果が切れちゃったら、ルカが開発してもらったリング使って可視化させるね♪」
「そんじゃそういうことで、やりますかっと」
 アークソウルの大地の力をジュディたち3人の章に送る。
 遠野 歌菜(とおの・かな)月崎 羽純(つきざき・はすみ)も彼の詠唱に合わせて、エレメンタルケイジから放った宝石の輝きを与え、さらに不可視の者の姿を見破る風の魔力を送る。
 宝石の力を吸収した章から噴出した魔道の気は、空へと集まり黒い雲となった。
 レイン・オブ・ペネトレーションの大嵐の雨が、カエルの魔性に降り注いだ。
 何事かと慌てた彼らだったが、すぐに七枷 陣(ななかせ・じん)たちの仕業だと発見した。
 怒った本体らしき者は“襲撃者を倒すゲコ”と分身たちに命じる。
 結和とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は贖罪の章を唱え、ルカルカとカルキノス、淵が扱う章の命中距離を広げた。
 酸の雨を避けきらなかったことを気にも留めず、ゲコゲコ鳴きながら向かってくる。
「(私の力を美羽さんに!)」
 ベアトリーチェも贖罪の章の能力を美羽にかけると、彼女が使おうとしている哀切の章に新たなワードが書き込まれた。
 光の嵐の範囲が広がり、分身たちを消し去っていく。
「音符が飛んできたわ、ベアトリーチェ」
「カエルソングです!あれにつぶかると、カエルにされてしまいます」
「ふふんっ、エリシアたちがいるから安心ね。皆も、香りの効果を受けてるよね?」
「は、はい。カエルになっていませんから…」
「あ…。2人だけカエルに…」
 美羽は緑色のかわいい女の子のカエルを発見し、呪いにかかってしまったのかと言う。
「いっ、いえ!ロラです」
「呪いじゃないっていうことね。じゃあもう1人は…誰?」
 オレンジ色のカエルがぴょこぴょこ跳ね、何かを訴えている。
「歌菜…か?」
 羽純の声にオレンジカエルは何度も頷いた。
「お嫁に狙われたってこと?」
「―…コロスッ。ひき肉にしコロス」
 ルカルカの何気ないセリフに、魔性へ殺気に満ちた言葉を吐いた。
「あ、今のじょーくだから、ころにゅ♪とかやめてくださいー」
「かわいーです」
 カエルに触れたくってずっと我慢していた結和が、ぎゅむーっと歌菜を抱きしめられる。
 彼女はたまらず“ぐぎゅぅ〜ぎゅぅ〜〜!”と苦しげな声を上げた。
「やめてあげて、結和さん。歌菜ちゃんの中身、えれっと出ちゃいそうや」
「はわわ…すすすみません」
「リーズ。ホーリソウル使っている間、あれの相手よろっ」
「はいはい、任せて♪…もてないカエルくん〜。キミたちのところに、だーれも嫁なんか来ないよ」
 ヴァルキリーの元々の飛行能力で空を飛び、カエルの群れを見下ろす。
「チビー、カワイイー。嫁にするー」
「喋っているのが本体くんかな?やーだね、ボクにはカレシいるもん」
「カレシ、亡き者にすればワレのものー」
「ん〜…。そうなっても無理♪ありえなーい、ペッ。ヤバキモォ〜。へんたいキモー」
「大人しくさせて、カエルにするゲコ」
 空を舞うリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)を落とそうとアクアブレスを吐く。
 リーズは瞬間的に、エターナルソウルで加速しながらかわし、いぢりまくって挑発する。
「よかった歌菜ちゃん。元に戻れたみたいやね」
「うわぁああん。ありがとうございます、陣さん!」
 歌菜は石畳に膝をつき、めそめそと瞳を潤ませる。
「カエルも、可愛かったですよ?仲良くなれたら…、いつでもカエルにしてもらえるかと」
「ええーん、人でいたんで簡便っ!!」
 結和に悪気はないのだが、もうカエルにはなりたくないと叫ぶ。
「―…歌菜」
「羽純くん、私だってすぐ分かってくれたよね?すっごく嬉しかったよ!」
「それは後な」
 喜びのハグをしようとする彼女のおでこを片手で押して止める。
「ねぇ、セイクリッド・ハウルで散らしちゃわない?後でやってみたことがあるし♪」
「カティヤさん、目が怖いです」
 怪しく輝く眼差しを見た歌菜は、カティヤ・セラート(かてぃや・せらーと)が何か企んでいるように思えた。
 終わったらあれに頼んで自分たちをペアカエルにして遊びそうな気配だった。



「…我と共に在る眷属よ」
 羽純が持つのアークソウルの大地の気による琥珀色の輝き。
「我らが持ちし祓魔の祝福を受け、纏え!」
 フレアソウルの紅の炎が、陣のエレメンタルリングに飛び込む。
「…聖者の気質を!」
 風を起こすエアロソウルの気、ホーリーソウルの聖なる浄化の力を、歌菜が彼のリングに与え…。
『悟れ!祓魔の理を!』
 ジュティと仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)の悔悟の章による重力の術を吸収させた。
 陣が術の力を手に集中させると、灰色の重力場が白き風にまとわりつく。
 合わさった仲間の力がカティヤに放たれ、術の媒体となった彼女のハイリヒ・バイベルの哀切の章に、新たなワードが現れた。
「セイクリッド・ハウル!」
 聖なる紅の風を纏い、リーズが相手をしているカエルの群れに雄叫びを放った。
 祓魔の声に分身たちが消滅し飛ばされる。
「ウフフッ、爽快ね♪」
「ですが、また増えてしまいましたわ」
 怒った本体が分身を増やしてしまったようだ。
「リトルフロイライン。あれを倒してくださいな」
「了解しました!的が多いですね、ご所望の対象はやっつけちゃいます」
 少女は一切加減せずに偽者を排除し、高音の連射銃声を響かせる。
「ウゥー。(2人に補助してあげっと)」
 藍色の宝石を輝かせたロラは、カティヤと中願寺 綾瀬(ちゅうがんじ・あやせ)の走行を加速させた。
「私に特攻してってことかしら♪今なら盾にしちゃってもいいけど」
「ブレスもかわしやすいですわね」
 カティヤにポイズンブレスを防ぐ盾になってもらい、増え続ける分身を排除する。
「―…遊びではないんだぞ」
「聞こえてないみたいやな、磁楠。返事がない、無視しているようや」
「それは、聞こえているということだろ」
 陣のネタに磁楠は嘆息した。
「能力低下は2人がやってくれているからな、哀切の章がよいか。ロラ、私にも時の宝石の力をかけてもらえないか?」
「ううー、んぅー。(疲れちゃった、今は無理ー)」
「ロラは、精神力を消耗してしまって…。その、回復中なんです」
「ふむ。…ならばリーズ」
「え?だが、断るって言うしかない状況。ごめんねー」
 2人とも疲労が激しく、時の宝石を使うのは困難な状態だった。
 歌菜のほうはロラの代わりに、2人をサポートしている。
「磁楠、俺でよければ。あまり喜べないかもだけどな」
「私は陣のように選ばないのでな」
 “誤解されること言わんでくれない?”と言われたがシカトした。