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この中に多分一人はリア充がいる!

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この中に多分一人はリア充がいる!

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第二章 

「……と、いうわけだ。わかったか!?」
 若干名を退場させ、キロスが皆に今回の趣旨を再度確認させた。
 今回の趣旨は『自分が如何にリア充か』をアピールするのではなく、『自分がリア充でないか』をアピールするものである。
 リア充=キロスを殴った犯人容疑、という事を再度、皆に認識させたのであった。何故リア充が犯人になるのか、という大きな疑問は一切触れられなかったが。
「そう言う事なら異議ありぃッ!」
 リル・ベリヴァル・アルゴ(りる・べりう゛ぁるあるご)がまるで何処ぞの弁護士ばりに声を張り上げた。
「り、リルくん? 一体何を……」
「まあまあ、ここはアタシに任せてよパパ!」
 不安げな表情の月詠 司(つくよみ・つかさ)を制止しつつ、リルはキロスを見据えた。
「よーく聞け! アタシのパパがリア充なわけがないってことをな!」
「ほぉ良い度胸じゃねぇか、聞かせてもらおうか?」
「ああ! 聞かせてやるとも!」
 そう言うと、リルが語り始めた。簡単にまとめると以下の通りである。

・司はパートナーのシオン・エヴァンジェリウス(しおん・えう゛ぁんじぇりうす)から『いたチョコ』と称して板チョコに加工した【カバネロひとくちチョコ】を食わされた。
・結果、『チョコ』という単語を聞いただけで卒倒しそうになるレベルのトラウマを負う事になる。
・そんな状態が一週間も治らなかったため、他のパートナーの義理チョコですら貰う事が出来なかった。

「ああ……そんなこともありましたねぇ……チョコって聞くだけで意識がなくなりそうですよもう」
 司は何やら心の傷を思い出したようで体育座りで自分の殻へ入り込もうとしていた。寄生虫食わされたんじゃ仕方ない。
「おかげでなぁ……アタシの手作rごふんげふん義理チョコも受け取ってもらえなかったんだぞ! どうしてくれるんだおい!?」
 義理、という所を強調しつつリルが食って掛かる。シオンに。途中ヒートアップし過ぎて恨みつらみの対象がシオンへと変わってしまったようである。
「あーあ、駄目駄目駄目駄目全然なってない」
 そんなリルの様子に、シオンはわざとらしい大きなため息を吐いて首を横に振る。
「そんな逆ギレ、逆効果に決まってるじゃないの。勢いだけでどうにかなるってわけじゃないわよ。ねぇ?」
 そう言ってシオンはキロスを横目で見る。そして笑みを浮かべた。
 ここでシオンはこっそりと【ヒプノシス】を仕掛けようとしていた。催眠術により眠気に襲わせる事で思考力を低下させ、更に【メンタルアサルト】を駆使しつつ無茶苦茶な理屈で言いくるめようという試みであった。が、
「甘いわぁッ!」
何やら嫌な気配を感じ取ったキロスが、既に爆弾を投げつけていた後であった。
「「え゛」」
 シオンとリルの視界に、爆弾が目に入る。しかしもう遅い。
「「の゛ー!!」」
 爆弾が破裂し、3人――シオンとリル、そして自分の殻に閉じこもって逃げ遅れた司が爆風に巻き込まれた。
「ったく……俺様に手出ししようとは良い度胸だったな…‥だがまだ甘ぇ!」
 爆発に巻き込まれ、ぼろ雑巾のようになった3人にキロスはそう言った。

「……こいつぁひでぇ」
 ぼろ雑巾になった3人が『汚物置場』に放られる光景を見て、エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)の頬に冷たい物が伝う。
(このノリ、最悪俺もヤバいかもしれんな……けどこいつだけは……)
 ちらりとエヴァルトが横目でミュリエル・クロンティリス(みゅりえる・くろんてぃりす)を見る。今日は彼は妹分のミュリエルと街に来ていただけだというのに、このような事に巻き込まれてしまったのである。
(大体キロスの奴俺をリア充と見間違うとか、目が腐ってるんじゃねぇか? こちとら恋人なんていやしねーぞ。まぁ欲しくもないが)
 その発言を口にしていたら間違いなく爆破してやっていた。
(異性のパートナーもいるっちゃいるが、金食い虫装甲だったり、おっとりに見えて好戦的だったり、研究開発第一でやっぱり金食い虫だったり、アホの子だったり、あんまり羨ましがられる要素無いんだがな)
 エヴァルトはわかっちゃいない。世の中の需要というものを。
(……駄目だ、逃げ出す方法がうかばねぇ。最悪俺が犠牲になってでもこいつを……って、さっきから何やってんだ?)
 再度、エヴァルトがミュリエルを見る。何をしているのかと言うと、俯いて何やらブツブツと呟いているのである。
「りあじゅうって……たしか、恋人がいるような人の事、だったかな……それで私とお兄ちゃんが間違われたって事は……えっと……その……」
「おい、どうした?」
 エヴァルトが声をかけるが、ミュリエルの耳には届いていないようで、
「あっ、あの! キロスさんいいですか!?」
シュビッと効果音がつきそうな挙手をする。
「あん? 何だよ?」
 キロスがミュリエルに目を向ける。
(ちっ! 何だってんだよ!)
 エヴァルトが慌ててミュリエルの前に立とうとしたその時、ミュリエルがこう言った。

「わ、私達が『りあじゅう』に見えた、って事は! お兄ちゃんと私が恋人同士に見えたって事ですよね!? 何処ですか!? どんなところがそう見えました!? 教えてくださいもっとしてもらいますので!」

(うぉぉぉぉぉぉぉい!? 何言ってくれてんのこいつはぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)
 頬を赤く染め、鼻息荒くキロスに捲し立てるミュリエルとは対照的に、真っ青になったエヴァルトが心の中で悲鳴の様に叫んだ。
「……ほお」
 そしてキロスはニヤリと笑みを浮かべてエヴァルトを見る。さっと彼は目を反らした。
「なあ、お兄ちゃんってのはこいつか?」
 そうミュリエルに言ってからキロスがエヴァルトを指さす。
「はい! お兄ちゃんです! でもいつか『あなた』とか『旦那さま』とか呼びたいです!」
 そしてミュリエルの爆弾発言炸裂。
「ちょっと待てやどさくさに紛れて何をおっしゃるんですかいなぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 その爆弾発言に、流石にエヴァルトも黙ってられないと立ち上がる。が、その彼の肩をがっしりとキロスが捕らえた。
「よお、兄ちゃん……ちょーっと向こうで話しようか……」
 キロスはそう言うと、有無を言わさずエヴァルトを引き摺って離れて行った。

「いやだから俺はロリコンじゃねぇっての! あれは向こうが……って何するんだよ服の中に爆弾ってちょおまあああああああああ!

 キロスが戻ってくる後ろで、一人のロリコンが爆発したのであった。
「あの、お兄ちゃんは?」
「ああ、用事があるからってどっか行ったわ。お前、もう帰っていいぞ」
 そうキロスに言われ、首を傾げながらもミュリエルは帰るのであった。