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この中に多分一人はリア充がいる!

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この中に多分一人はリア充がいる!

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「……嘆かわしい」
 ノール・ガジェット(のーる・がじぇっと)がぽつりと呟く。
「全く以て嘆かわしい。あのような幼子に慕われるなど羨ましい環境にありながら、リア充でないなどとよく抜かせるものよ」
「あ? んじゃお前はリア充じゃないって言えるのかよ?」
 キロスに言われ、ガジェットが頷く。
「そもそも吾輩をリア充であるなど抜かすとは、その目は節穴か? まぁ、吾輩の逞しくも素晴らしいこのボディを見てはそう思ってしまうのも仕方がないのであろうが……」
「うわやっべ、こいつ今すぐ爆破してぇ」
 キロスの額に青筋が走る。
「……しかし、現実とは非情であるのだよ……街中で可愛いお嬢さんを見かけて『そこの可憐なお嬢さん』と。二言目で鞭を差し出し『その鞭で我輩を打ち据えないか?』と問いかけてみれば何故か全力で警察を呼ばれ、屈強なポリスメンと個室で熱い一時よ。全く、世も末としか言いようのない時代よ。どうしてしまったというのかこの世界は」
 どうしてしまったのかはお前の頭である。何故こんなになるまで放っておいた。
「さらにはッ! 契約者の自宅に我輩も住んでいるのであるがね、食事の時間になると我輩いつも専用格納庫に押し込められるのであるよ! 何故かって? 『食事中にオイルの香りがするのは食欲が落ちるから、格納庫で飲んでね』であるよッ! 居間から聞こえる賑やかな声を聞きつつ我輩は格納庫にて単機で機晶オイルをチューチューと呑んでいるのである……この辛さ、わかるであろうか!? 確かに我輩は摂食機能は無いのであるが、食事時くらいキャッキャウフフと団欒に加わりたいのである!!」
 段々とガジェットの愚痴になってきた。キロスはその勢いに口を挟めずにいると、更にヒートアップしていく。
「おまけに我輩に近づいてくる輩は我輩を分解したくて堪らないとうずうずした様子で近づいてくるマッドサイエンティストが多いし! いくら見た目が良くでも我輩マッドサイエンティストはノーサンキュー! 鞭で打ち据えられるのは御褒美であるが分解は拷問であるのよッ!」
 ガジェットの業界でも色々拘りがあるようである。リア充かどうかはわからないが、変態なのはよくわかるが。
「まったく、こうして考えてみると契約者とパートナーで一緒に食事をしているだけで『リア充』認定してもいいと思うのであるよ、吾輩的には。さて、この中にどれだけ『リア充』居るであるかなぁ〜? 我輩うっかり戦闘モードになって誤射しそうであるよ〜?」
 そう言うとガジェットが『ミサイル準備良し』とか言い出す。
「あーわかったわかった。お前が碌な目に遭ってねぇってのはよくわかった。ほれ、行っていいぞ」
「おっ、そうであるか? いやー吾輩が不遇な目に遭っているというのを理解してもらえたようでよかったよかった。それでは失敬する」
 そう言ってガジェットが腕を下ろし、退散しようとした時であった。

「あ、ロボさーん!」
 ガジェットに、マリオン・フリード(まりおん・ふりーど)が駆け寄ってくる。
 マリオンは今日は買い出しに来ていたのだが、同行者のガジェットがキロスに捕まってしまった事もありはぐれてしまい、それから探していたのであった。
「あ、マリー殿ー」
 ガジェットがマリオンに向かって腕をぶんぶんと振る。
「やっと見つけたー。もう、ロボさん迷子になるんだから探しちゃったよー!」
 本当は迷子になっていたのはマリオンなのだが、その辺りはガジェットもよく解っているのか「いやいや申し訳ない」と笑いながら謝る。
「買い出しの量も多いんだからロボさんいないと大変なんだからー……そうだ、あたしがロボさんの手に乗って移動すればいいんだ! それならはぐれないよね?」
「よし来た!」
 何処か嬉しそうにガジェットが言う。
「それではこれからは吾輩を椅子みたいに扱うでありますよマリー殿」
「乗り物じゃなくて?」
「椅子みたいに扱われた方が吾輩は興奮するでありますよ」
 乗り物扱いも捨てがたいが、椅子の方が尊厳を踏みにじられた気分が強く、興奮も増すという。これ、豆知識な。
「ふーん、よく解らないなぁ……そう言えば興奮で思い出したけど、この間ごはんの時に『この放置プレイが興奮する』ってどういう意味?」
「はっはっは、それはマリー殿が大人になったらわかる時が来るでありますよ?」
 そう言ってガジェットが笑う。解る時が来ない方がいいと思うのだが。
「ふーん……まあいいや、早く行こうよ。義父さんが待ってるし」
「そうでありますな。吾輩も早く椅子プレイを味わいたい――」

「おいてめぇ」

 いつの間にか、ガジェットの背後にはキロスを始めとした面々が囲んでいた。
「ん? 非リア充の皆どうしたでありますか? 吾輩はこれから椅子プレイでハァハァする――」
「ちょっと面貸せや。ああ、拒否はできねぇからな?」
 ガジェットの言葉を遮り、キロスがそう言うと全員でガジェットを追い詰める様にマリオンから引きはがす。
「え、皆目が血走ってるであるが何なのだ? ま、まさか吾輩があまりにも魅力的なので乱暴する気なのであろう!? 薄い本みたいに!
「乱暴は正解だ! やるぞてめぇら!」
 キロスが叫ぶと、応と声が上がり、同時にガジェットに爆弾が投げつけられる。
「ぬわーーーー!」
 爆破と同時に、ガジェットの悲鳴が響いた。

「……あーあ、またロボさん何かやったのかなー? これ買い物どうしよう」
 マリオンが困ったように呟いた。

――その一方、マリオンたちの自宅では、
「……中々帰ってきませんねぇ、二人とも」
街中でそんな事が起きているとは露程も知らないルイ・フリード(るい・ふりーど)が呟いた。