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花咲けお花見☆

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花咲けお花見☆

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「飽きた!」
「へ?」
「梅見は終り! ホワイトデーイベントに以降しましょう」
 気まぐれなサニーの一声で、イベント名が変更する。
 ネージュの配っていたお菓子は元々ホワイトデー仕様。
 その一部をご紹介しよう。
 ヨーグルト風味ホワイトチョコチップ入りの、ほんのり紅茶の香り漂うクッキーや、ふわふわすっきり天然バニラビーンズ入り焼きメレンゲ。
 どれも彼女の特選ハーブやスパイスが効いている。
 風味を損なわないために真空パックにして持ち込む、細かい心配りも忘れない。
「んー、ネージュちゃんのクッキーは絶品ね! うちで売り出したいくらい!」
「ほほほほほ!」
 ネージュ焼いたのクッキー片手に頬を抑え絶賛するサニー。
(うーん、あれと比べたらさすがに見劣りするかな……後にしよう)
 梅見の片付けを手伝っていた三月はサニーにクッキーを手渡そうとするが、ネージュのクッキーの威力に押され少し気後れする。
「サニーさん! ほわいとでーとはどのようなお祭りでございましょう?」
 よく分からないままにイベントに参加していたフレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)がサニーに問う。
「それはね……WhyToDay、っていう意味なのよ」
 即座に出まかせを教えるサニー。
「『何故今日』な日でございますか……謎めいておりますね。これは、是非そのいべんとに参加して勉強させていただかねば!」
 サニーの言葉を素直に受け止め、ぐっと気合を入れるフレンディス。
 その頭に揺れる可愛らしいベルガモットの花。
 花言葉は『感受性豊か』。
 その言葉通り、今のフレンディスはいつものほえほえ天然フレンディスではない。
 サニーの言葉を受け止めつつも、周囲の状況を鑑み彼女の言葉にどこか違和感があることを察知していた。
(ほわいとでーとは如何なるいべんとなのか、ここで見極めてみせます!)
 そんなフレンディスを暖かく見つめるベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)
(ってゆうか、フレンディスの頭、咲いてるよな……ま、いいか、幸せだし)
 そんな事を思う彼の頭の上にも可愛らしいスズランが花咲かせていた。
 花言葉は『幸福』。
 そんな訳で、ベルクは幸せに酔っていた。
(いつもみたいな騒動に巻き込まれて、フレイのあんな姿やこんな姿を拝めるラッキーな思いができるかもしれないし……)
 下心もあった。
「えっちぃ子はいないかー!」
「暴走するお方には、月替わりでお仕置きよ!」
「ぎくぎくうっ!?」
 そんなベルクの考えを察知したかのように、イベントに乱入してきたのはレオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)クレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)
 手にゴボウ、頭に松を身につけたレオーナと、アザミを咲かせたクレア。
 松の花言葉は『勇敢』『永遠の若さ』。
 アザミの花言葉は『厳格』『触れないで』。
 そんなわけでレオーナは勇猛果敢にかつての卑猥な行動を棚上げして不埒な輩を退治せんとパトロール。
 いつもならそんなレオーナを諌める立場のクレアも、厳格化した潔癖症のために彼女の意見に完全同意。
 むしろそれ以上にいきり立っている所に、彼女の今までの抑圧っぷりを見るような気がする。

   ◇◇◇

「飽きた!」
「え?」
「何か別の事しましょう!」
「それじゃあ、ルカの持ってきたバトミントンやる?」
「やるやる! 柚ちゃんもやりましょ!」
「え、あらら……」
「あ、サニーさん待って……」
 再び気まぐれを起こしたサニーは、即座にルカルカの差し出したバトミントンセットを受け取る。
 しとやかスマイルのままサニーに引っ張られる柚。
 そしてサニーにクッキーを渡す機会をうかがっていた三月は再びその機を失ってしまう。

「いくわよー!」
「きゃー!」
 バトミントンに興じる女子たち。
 サニーが飛ばした羽が風に乗って飛んで飛んで――
「あ痛っ」
 不運にも、再び貴仁の頭へ。
「わっ、ごめんなさーい!」
「い、いや、いいんです……はっ」
 その拍子に貴仁の頭の花、『恥ずかしがり屋』の花言葉を持つキルタンサスが枯れ、新しい花へ。
 真っ赤なハート型の花、アンスリウム。
 その花言葉は『情熱』『炎のような輝き』『煩悩』。
「……いいですねえ、女の子たちのスポーツ姿。むむ、ジャンプ時のスカートが!」
 花の力により貴仁の煩悩が燃え上ろうとしていたその時だった。
「えっちなのはいないかー!」

 少し前。
「えっちなのはいないかー! 可愛い女の子の貞操を乱す奴は、私のゴボウが黙っちゃいないわよ!」
 魔槍を振り回すレオーナは、しかしうーむと首を傾げる。
「おかしい…… こんな春の陽気と花咲き乱れたシチュなのに、誰もえっちな事に及ぶ人がいない」
 意外にも(?)平和な梅見に、目論見が外れたと高々と上げた槍の振り下ろし先を決めかねていた。
 そんな時だった。
 彼女が『煩悩』を察知したのは。

「えっちなのはいないかー!」
「レオーナ様、あちらに煩悩を浮かべていそうな方が!」
「えぇえそんな言いがかりです!?」
 一瞬の煩悩故か、貴仁がレオーナとクレアの餌食となる。
「そこに直りなさい!」
「ちょっとちょっと待ってください!」
「わたくしに触れないでください!」
「うわぁああ!?」
 一瞬の煩悩の対価にはあまりにも理不尽な仕打ちから逃げ出すべく、貴仁は全力ダッシュ。
 しばらくレオーナ達との追いかけっこは続いた。