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水宝玉は深海へ溶ける

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水宝玉は深海へ溶ける
水宝玉は深海へ溶ける 水宝玉は深海へ溶ける

リアクション

「作戦があるわ!」
 自信ありげな笑顔でそういうユピリア・クォーレ(ゆぴりあ・くぉーれ)に、
最上階へ向かっていたチームの全員が彼女へ視線を集めた。

「私がジゼルっぽい格好をして囮になるのはどう?
 
 (そしてそんな私を必死になって守る陣。 いい! いいわよね!)」
 脳からだだ漏れだった後半は兎も角、高柳 陣(たかやなぎ・じん)は今聞いた言葉を反芻して即座にきっぱり否定した。

「お前……ジゼルほど胸ないだろ」

 カウンターの一撃をまともに喰らいその場に座り込むユピリアの肩へティエン・シア(てぃえん・しあ)が片手をおく。
「お姉ちゃん、地道に探そう。ね」
 そのやり取りを聞いてダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は呟いた。
「……悪くない作戦ではあるな」
「でしょー! 分かってもらえる!?」

「いや、賛成出来るのは偽のジゼルでの時間稼ぎという部分だけだ」

 更なる一撃を受けて倒れるユピリアを置いておいて、ダリルはルカルカへ何かを促した。
「あれでしょ?」
 ルカルカが取り出したのは30センチ程度の人形である。
「なぁにそれ」とティエン。
「背中のスイッチを押すとその人にそっくりな姿に変わるのよ。
 適当な場所に置いておけばダミーに出来るわ。
 ただ本人が押さないとならないから、何よりジゼルを早く見つけなきゃね」
 そう言ってルカルカはティエンに微笑んだ。
「うん!
 それじゃあ私もジゼルお姉ちゃんが早く見つかるように頑張ってみる!」
 両手で愛らしくガッツポーズをしたティエンが声を掛けたのは、
彼女のパラミタセントバーナードだった。
 その鼻先へ布を持って行くと、犬はティエンに向かってひと吠えし走り出す。
「こっちみたい!」
 犬が辿ったルートを指して走るティエンの背中を、仲間達は追いかける。
 ティエンの手の中にある布に、リリアは興味を惹かれたようだ。
「それ何かしら?」
「ジゼルお姉ちゃんのハンカチだよ。ユピリアお姉ちゃんが持って来たの」
「持って来たって……鍵はあの後雅羅が閉めたのに、どうやって?」

「ピッキングしたわ!!」

 サムズアップして犯罪を告白したユピリアに、全員がコント的に転んでしまった。
「居たぞ! あそこだ!!」無駄に派手に登場してきた一般兵に向かって、
陣は立ち上がり途中の立て膝のまま手を突き出した。
 彼の手から出た催眠波で、隊士達はぐずぐずとその場に崩れていく。
「下手に銃ぶっぱなすと居場所がバレるからな。静かに行動したいし」
「同感よ。無駄な時間を使いたく無いわ」陣とルカルカは頷き合い、契約者達は再び走り出す。
「にしても……あの犬さんを疑う訳じゃないけどホントにこっちで合ってるのかな」コハクが言った。
 ユピリアは目を閉じて、もう一度開いて頷いている。
「トレジャーセンスも使ってるわ、こっちで正解よ」
「トレジャーセンスってそんな事に使える!?」
「何だか分からないけど、今の俺達にとって彼女が『お宝』には違いないって事じゃないか」
 美羽の疑問にコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)の返事が帰って来た。

 そんな風に走り続ける彼らと共に居た山葉 加夜(やまは・かや)は件の少女思っていた。

「(……ジゼルちゃん……)」
 近頃彼女は大事なご主人の看病の為、病院と家との往復の日々を繰り返していた。
 元気で過ごしていると思っていた友人達の内の一人が誘拐されたと聞いたのは病室で、
彼女の主人で有り、ジゼルの実質的な保護者でもある山葉 涼司(やまは・りょうじ)の口からだった。
 ジゼルが引き起こし巻き込まれた事件に何度も関わっていた加夜は、
一部の人間しか知らないジゼルの秘密をほぼ知っていると言って良い。
 だからこそ今は地上の生活に親しみ、肉体の弱点を克服しつつあるジゼルが
これからも同じ様な日常を送るのだと、加夜は信じていたのだ。

 一緒に新たな発見に驚いて、変わらない日々に笑い合って

「(きっと毎日、兵器だと知られず楽しく過ごしていけると思ってたんです……)」