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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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悲劇がおそった町とテンプルナイツの願い

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第2章 犯人は魔女?
「……マリア、自分は協力をすると言いましたが、一つだけ約束してほしいことがあります」
 始終無言で道を進むマリアに、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は真剣な表情で問いかけた。
「なんですか?」
「グランツ教の司祭が犯人であっても、今回の真犯人はきちんと世間に公表してください」
「……」
 マリアはしばらく困惑の表情を浮かべると小さく頷いた。
「もしも司祭が犯人としても、その時はきちんとしかるべき対処をするつもりです」
 吹雪は後ろに居るコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)に視線をやる。
 コルセアには、今回の事件の情報をすべて独自に報道機関へと流すように手配させていたのだった。
 その準備はほとんど整っており、あとは情報を集めるのみだった。
「……しかし、問題の司祭が見当たらないな」
 先ほどから吹雪とマリアのやりとりを横から聞いていたグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が低い声で言った。
 教会へ向かってまさに歩いてる中、ここまで何人もの町人達を助けていたが、肝心の司祭は見つからなかった。
「けっ、どうせ襲われる前に安全圏へ逃げたんだろうぜ」
 うしろから両腕を組みながら、面倒くさそうに柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)が言う。
 恭也は先ほどマリア達と合流したばかりだった。
 恭也はたまたま、町に居たところを襲撃されたため手元には武器などを持っていなかったが
「見過ごせねぇ!」と行ってからはずっとマリア達と行動を共にしていたのだった。

(本当に、司祭が犯人だったら……)
 マリアの中で次第に司祭が犯人だったのでは無いかと不安に駆られ始める。
 しかし、反面では仲間である司祭を信じたい気持ちもあった。

「む、あそこにモンスター達に囲まれる人がまたいるのであります」
 吹雪は道の先を指さしながら行った。
 そこには大勢のゴブリン達の姿と、その真ん中に黒い人影が見える。
「急いでいきましょう!」
 マリアはポケットから拳銃を取り出すと、吹雪達に急ぐように促す。
 駆けつけると、マリアは驚いた。
 ゴブリン達に囲まれたその60歳ばかり、白髭を生やした男性にマリアは見覚えがあった。
「ワーデル司祭!」
「えっ、司祭って……あの人が!?」
 コルセア達は驚き、同時に犯人であれば、罠なのでは無いのかとそれぞれが警戒する。
 しかし、様子がおかしかった。司祭はなぜかゴブリン達に囲まれ、襲われようとしている。
「まさか、マリア様ですか!? 来てはなりません、ここは敵だらけです!」
 叫ぶ司祭の後ろにもう1人、人影があった。
 その人影は、ほっそりとした顔つき、赤色の髪の毛、赤色のめがねをかけた一般女性のようだった。

「……とにかくこんなことをしてる場合じゃないな。司祭を助けるぞ」
「ふっ、やっと出番がきたぜ!」
 グロリアーナが強い口調でマリア達に提言すると、待ってましたとばかりに恭也は走り出した。
 慌ててマリア達もそれを追いかける。
「あの人……武器も持たずに本当に大丈夫でありますか?」
「あそこまで走り出すからにはきっと、勝算があるのよ」
 吹雪の問いかけにコルセアは、走りゆく恭也を見届けながら言った。
 が、直後恭也から繰り出されたのは手だけだった。手刀で次々とゴブリンの首元を殴り飛ばしていく。
「はーっはっは! さぁっ、どんどんかかってきやがれ。楽しくやろうぜぇぇっ!」
 高笑いをあげながら武器も無しに恭也はゴブリンを倒していく。
 おもわず吹雪達は唖然として戦う恭也を眺めることとなってしまった。

「何故……私達が襲われねばならないのですか。この地の不信心を嘆いた超国家神の罰なのでしょうか?」
 めがねをかけた女性は、司祭に突然質問を投げかける。
 司祭は、背後に居る女性を驚いた様子で振り向くと、「ふむ」と頷いた。
「大丈夫だ超国家神様は、信じる物には幸をもたらしてくださる」
「……魔物達は、超国家神による罰ではないのですか?」
「……」
 司祭はその女性の言葉を聞くと、にこやかに笑みを浮かべた。
「私までこんな目にあっているのだ、きっと違う神様の罰なのだろうな」
「……」
「司祭! ご無事ですか!」
「マリア様! はるばるこんなところまで……しかしここは危険すぎます」
「今はそれどころではありません」
 マリアが駆けつけると司祭は、心配そうにマリアを諭しはじめた。

「どうだったか?」
 めがねをかけた女性はしばらく考え込んでいるところを、グロリアーナに声をかけられた。
 実は、女性の正体は変装していたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)だった。
「なんとも……変な司祭なのに間違いないわ。答えることが全部とんちんかんで」
「そうか……ではもうしばらくこの司祭を監視した方がよさそうだな」
 グロリアーナの言葉に、ローザマリアは「そうね」と答えると、上空を見上げた。
「まだ……何かが裏で動いている気がするわ」

「グオオッグオォオオ」
 ゴブリン達は少しずつ減りながらも、未だに襲いかかろうとしてきていた。
「まだ、居るのでありますか!!」
 吹雪は【軍神のライフル】で次々と【追加射撃】していく。
 なかなか、途切れないゴブリンに吹雪はそろそろうんざりしかけていた。
「……ちょっと本気をだすか!」
「え?」
 恭也の周辺が光ったとおもうと、【霊気剣】により2メートルばかりの巨大な光の剣が具現化される。
 そして、光の剣はまるで自分で意思を持ってるかのように左右自由自在にゴブリン達へと斬りかかり始めた。
「ふう、これでおおかた殲滅完了か?」
「ハハハ……今の一瞬でゴブリン40体近くを倒したでありますか」
 吹雪は乾いた笑いをあげ、現状に驚いた。
 たった1分もせずして目の前のゴブリン達はほぼ全滅となる。

「ふふふっ、さっきからやけに私の軍勢が減ったと思ったらあなた達の仕業ね」
「なっ、どこだ!!」
 突然の知らない声に恭也は周りを見渡すも、声の主らしき姿は見当たらない。
 再び、ふたたび女性の薄気味悪い笑い声が響き渡る。
「ど〜こをみてるのかしら。ここよここ」
「うえだ!!」
「了解であります!」
 【殺気看破】により殺気を感じ取ったグロリアーナの指さす場所へと、吹雪は素早くライフル銃を放つ。
 すると、何も無かった場所に少しずつ人の影が現れた。
「ちょっと、危ないじゃないの!?」
 金髪のショートヘア、紫色のボロボロのローブ、そしてたすき掛けのベルトにつけられたいくつもの薬品入り試験管。
 10代後半の魔女がゆっくりと実体化しその姿を現した。

「お前が魔物達をおそわせた犯人か」
「あら、ずいぶんな言い草ね。おっと、下手なことはしない方がいいわよ?」
「なっ――」
 ひそかに魔女に向けて【【バーリ・トゥード・アーツ】英霊用】を放とうとするグロリアーナに牽制するように魔女は指を指した。
 そこにはさっきまでは居なかったはずの、男女20人ほどがゴブリンに囲まれて捕まっていた。
 つまりは、魔女が魔法を使って連れてきた人質のようだった。

「ゲスなことを……」
 恭也はその状況に歯ぎしりしながら、魔女を睨み付けた。
「そこのライフル女に、でか剣男に遠距離から襲われても困るのよねえ……さて、私はまだやることもあることだし」
「待てっ!」
「あーら、今度はグランツ教の司祭様まで。何かしら」
「お前達の悪事は、超国家神様がお許しにならないぞ!」
「へえ〜。神様? おあいにく様、私は神を信じないのよ。というわけでみんなここで死になさい」
「なっ」
 ワーデル司祭の言葉を聞くなり、魔女は面倒くさいそうに片手を上に掲げる。
 丸い魔方陣が浮かび上がると、そこから翼を持った大きな巨体が現れた。
「あれは……また、ワイバーン!!」
 マリアが大声を挙げる。
 そこに現れたのは、炎を身にまとったファイヤワイバーンだった。