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リアクション
■キマク
【天元突破なら勝ってたかもしれない】
――シャンバラ大荒野。大荒野という名の通り、荒れ果てた地が続いている。
それはまるで果てが無いと思わせるかのような、広大な大地だ。
「……あーくそ、何でこんな目に……」
その荒野を、一人……と表現していいのか解らない身体をした者を先頭にして進んでいた。
先頭に立つ者の名はアッシュ・グロック(あっしゅ・ぐろっく)。今回の騒動の被害者にして、元凶。
向かう先は大荒野のオアシス地帯、キマクに存在するとあるオアシス。偽物が目撃された場所であった。
「くっそ……何で俺様がキマクに行かなきゃならねぇんだ……所属から考えて普通はイルミンスール付近だろ……」
ぶちぶちと文句を言いながら大荒野を進むアッシュ。本来その通りなのだが、誰も行かなかったんだから仕方ない。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)!」
そんな不満たらたらなアッシュに、全く空気を読んでいないハデスの名乗り口上が響き渡る。
「フハハハ! そんな面白い体になったというのにどうしたというのだアッ……なんとかよ!」
どうやらハデスはまだ名前を覚えていないようであった。残りは『シュ』だ。頑張ろう。
「俺様は面白くねぇっての……あーやっとオアシスが見えてきたぜ」
ツッコむのも面倒なのか、アッなんとか、じゃなくてアッシュがうんざりしたようにジト目でハデスを見る。
だがそのハデスはというと、その視線の意味が解っているのか解っていないのか、顎に手を当て「ふむ」とだけ呟く。
「確かに不満は解るぞ、アッなんとかよ」
うんうんと頷くと、ハデスはニヤリと笑みを浮かべた。
「木製人形の身体に、ガラス玉の目、そして腕にはネギ……確かに、まだまだキャラ立てが甘いな。不満なのも仕方ない」
「不満点そこじゃねぇよ!」
全く解っちゃいなかった。
「だが安心しろアッなんとかよ! この天才科学者の手に掛かれば、その不満はすぐに解決だ!」
全く話を聞いちゃいないハデスは、何処からか【改造ドリル】を取り出す。
「この天才マッドサイエンティストであるこの俺がこの手でお前の身体を改造してやろう! 喜ぶがいい!」
「何処をどう喜べっていうんだよそれで!」
「フハハハ! 遠慮などいらんぞ! そうだな、改造といったらやっぱりドリルだな! 後そのネギも捨てがたいが、ドリルが来たらロケットパンチもロマンだ……っとそうだそうだ、ロマンと言ったら自爆装置は外せまい!」
ハデスがドリルをギュルギュル回しながらあれこれ考えを巡らせる。
「んなもんつけられてたまるか! おい、誰かアイツ止めてくれ!」
アッシュはそう言うが、誰も苦笑こそ見せる物の止めようとする気配は一切ない。むしろ何人かは『なにそれ超見たい』とワクワクした表情になっている。駄目だこりゃ。
「遠慮することはないぞアッなんとかよ! ドリルはいいぞぉ! ドリルは!」
そう言いながらハデスがドリルを向ける。確かにドリルはいい物だ。天突いたりもできるしギガサイズでほぼ無敵だし合体すりゃ銀河級だ。ロマンとしか言いようがない。
「ふ、ふざけんなぁッ!」
だが迫るハデスに、アッシュは逃げ出した。当然の行動である。
「ぬ!? 何故逃げる!?」
「逃げるに決まってるわ! ってドリル回しながら追いかけてくるんじゃねぇ!」
「何が不満だというのだ!? ドリルが不満ならば代替え案もあるぞ! 巨大な金属鎧に魂を定着させるというキャラが立つことこの上ない案だ! 存在しないプランBなんかとは違うぞ!」
「問題も存在するわ!」
確かに『鋼の魔法使い』とか名前がつきそうだが、義手義足のニーサンを作らなきゃならない羽目になったりとか問題が色々ある。一番の問題は大人の事情だが。
「フハハハ! まぁまずはこの金属鎧を見てくれ!」
ハデスが何処からか金属鎧を取り出そうとした瞬間であった。
「コイツをどう思――ぬわぁぁぁぁぁぁぁ!」
突如光が横一直線に走り、ハデスを飲み込んだ。
皆、突然の出来事に呆気にとられている間に光は消え、そこには炭と化した鎧と、燃え尽きた様に真っ白になったボロボロのハデスが倒れていた。
「な――い、一体何が……」
アッシュが光の放たれた方角を見る。その先には、目的地であるオアシス。そして、
「――ああ、来たんだな。待ってたぜ?」
そこには腕を組み、不敵な笑みを浮かべるアッシュ(偽)が立っていた。
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