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婚活卯月祭、開催中!!

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婚活卯月祭、開催中!! 婚活卯月祭、開催中!!

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 屋台の建ち並ぶ麓の地帯を抜けて、丘の中腹にまで上がってきた。混み合う人ごみの中を、シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)が歩いて行く。
 二人が目指して行くのは、その視線の先、丘の上の方にシートを敷いてランチをしている宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)の元だ。
「ティセラお姉さま! 祥子お姉さま! ご成婚、おめでとうございます!」
 祥子たちがシリウスたちに気付くより早く、駆け寄ったリーブラが胸に抱えていた花束とプレゼントを差し出した。
「まだ式には早いですけれど、シリウスとわたくしからお祝いです。ゆっくりお二人で……」
「えっと……?」
 捲し立てるようなリーブラの言葉に、困惑した表情を見せる祥子とティセラ。ひとしきり言葉を紡いだ後、二人の様子がおかしいことにようやくリーブラが気付いた。
「あの……えぇと……その……」
 差し出された花束とプレゼントを受け取ることができず、顔を見合わせる祥子たち。そんな様子を見て、背後から様子を見ていたシリウスが、ぽん、とリーブラの肩に手を置いた。
「だから勘違いだっていったろ、相棒?」
 リーブラはシリウスの顔を見て、それからティセラたちに向き直った。
「……すいません、何か……わたくし、勘違いしていたみたいで……」
「気持ちはとても嬉しかったわ。ありがとう」
 祥子の言葉が届いているのかいないのか、リーブラの表情が曇って行く。
「オレも少し話したいから……ちょっと向こうで待ってて、な?」
「あ……シリ、ウス……」
 シリウスに優しく諭され、リーブラは花束とプレゼントを差し出していた腕を下げる。
「すいません! すいません……!」
 何度も謝りながら、項垂れたリーブラは丘を駆け下って行った。

「――騒がせてすまん。ティセラねーさん、祥子さん」
 リーブラの後ろ姿が人ごみに消えて見えなくなると、シリウスは祥子たちに向き直って頭を下げた。
「いえ、わたくしは大丈夫ですわ。それよりも――」
 ティセラが心配そうに、リーブラが駆けていった丘の下方に視線を送る。
「……アイツ、ねーさんに恋人が出来たって聞いてからあんな……ハイな風になっちゃてな。恋愛感情とかじゃないと思うけど、家族の増えた子供っていうか……大切な人を取られたような……寂しさとかの感情が整理出来ないんだと思う」
「そうなんですね……」
「まぁ大丈夫。すぐ戻るだろうし、言ってきかせるから……。だからアイツのこと、嫌いにならないでやってくれ」
 シリウスの言葉に、祥子もティセラもすぐに頷いた。
「嫌いになったりなんてしないわ。心配しないで」
「ええ。今はそばについていてあげて下さいね。きっと不安定になってしまっていると思いますわ」
「ありがとう……。ねーさんも、祥子さんも――これからもよろしく頼む」
 シリウスはそう言い残して、リーブラの後を追って行った。



「結婚、ね」
 人ごみにシリウスの姿も消えた頃、祥子が呟いた。
 祥子は、自分が結婚するというイメージを持ってなかった。好きな人とくっついて、気がついたら複数の恋人が同時にいたりした。
 そうやって誰か一人だけとずっと、ということもなく、飄々と歳を重ねるのだと思っていた。
「ーーねえ、ティセラ」
 そう、祥子が切り出した。
「ニルヴァーナにいった時に話したと思うけど、恋人が……二人いるのよね」
 ティセラは小さく頷いて、先を促す。
「あの後も連絡は取れてないし会えてないけど、今はあなたと他に二人……同時に三人とお付き合いしてることになる。そうなると知っていて、私を受け入れてくれたと信じてる」
「ええ、そういうことになりますわね」
「……けどティセラは、そんな状態について、どう思ってる?」
 祥子は、ティセラを見つめた。
「私はもっと深い部分で繋がりたいと思ってる。想いに応えたいと思ってる。他に恋人がいるからといって、ティセラへの愛が損なわれたりはしない」
 その真剣な瞳を見て、ティセラは微笑む。
「――わたくしは、他の方との関係を破棄するのは、あなた自身の自由だと思いますわ」
「私の、自由……」
「あなたが、あなたの中でけじめをつけてくれるのでしたら、わたくしとだけ恋人になって下さるのでしたら……」
 その後の言葉は、続かなかった。けれど、祥子には充分にそこに込められた気持ちが伝わっていた。