リアクション
現在から数年後。 ◆ 現在から数年後。 「あぁ、早く行かないと試合が始まっちゃう!」 杜守 柚(ともり・ゆず)はバスケの試合が行われる会場へ急いでいた。余裕を持って自宅を出たはずが、時間はぎりぎり。成長し可愛さの中に少し大人っぽさが出て来ている柚に惹かれてナンパする輩がいて柚は毎度そのせいで遅刻ぎりぎり。 試合会場。 「ふぅ、間に合った」 柚は息せき切って会場に到着し、何とか試合開始数分前に座席に着く事が出来た。 「あっ、海くん!」 柚は入場する選手の中に高円寺 海(こうえんじ・かい)を発見し、少し誇らしい気持ちになる。なんせ海は柚の自慢の恋人だから。 現在、このパラミタにもバスケットチームが出来て試合も行われるようになっていた。 試合が始まると 「海くん、頑張ってー!!」 柚は席から立ち上がり、大きな声で精一杯応援する。 海が所属するチームが点を入れる度に歓声を上げ、敵チームに攻められるとハラハラしながら見守る。試合は無事海のチームの勝利で終了した。 終了の笛が鳴ると共に柚は一分一秒でも早く海に会うために選手控え室に向かった。 選手控え室。 「海くん!」 柚は控え室に飛び込むなり、まだユニフォーム姿の海の元に駆け寄った。 「あぁ、柚か、来てくれたんだな」 柚を見るなり海は嬉しそうにわずかに表情を綻ばせた。 「はい。お疲れ様です。とってもカッコよかったですっ!」 柚は凄く嬉しそうな笑顔で興奮気味に言った。 そこに 「いいよなぁ、高円寺は柚ちゃんみたいな可愛い恋人がいてよ〜」 「はいはい、美男美女でお似合いですよ」 からかい冷やかす海のチームメイト。 「ったく、毎度毎度。向こうへ行ってろ!」 海はからかわれ照れたのか声を少しだけ荒げてチームメイトを追い払う。 チームメイトはいつもの事のなのかニヤニヤ顔で散った。 「ふふ」 柚は嬉しそうに笑みをこぼしていた。 「何だよ、柚」 海は怪訝な顔で訊ねた。 「ちょっとだけ嬉しくて……その海くんの恋人だって見られて」 柚は頬を赤らめながら嬉しそうに言った。ずっと海の恋人になりたいと願い、叶った今恋人に見られている事が嬉しくてたまらない。 「ほんと、柚ちゃんは良い子だよなぁ」 またまたチームメイトが余計な茶々を入れる。 海は虫を追い払うかのように手でチームメイトを追い払った。 チームメイトが去った後、 「……どうですか?」 柚は海の足の指から大腿部ぐらいまでを掌で擦ったり揉んだりして筋肉を揉みほぐすスポーツマッサージを施し始めた。海のために出来る事を探し覚えた事だ。魔法を使用しないのは触れた方が疲れ具合が分かるからだ。 「柚のマッサージにはいつも助けられてばっかだ。ありがとうな」 海は足が楽になっていくのを感じながら何かと自分を支えてくれる柚に礼を言った。 「それは私もです。海くんの頑張っている姿を見てるととても元気になります」 柚は顔を上げ、満面の笑みで答えた。最愛の人のために何か出来るという事はとても幸せな事だから。 ふと遅刻しそうになった今日の事を思い出して柚の顔が曇り 「……あの、今度の試合、海くんと一緒に会場に行きたいんだけどいい? 今日も色々あって遅れそうになったから。一緒の時は遅れないし……ダメ?」 遠慮がちに海にお願いを口にした。また海がからかわれてしまうかもと思いながら。 「だめじゃねぇよ。オレが迎えに行くから一緒に行くか」 海は即答した。からわれるとは分かっていても柚が困っているのは見過ごせないから。 「ありがとう! 海くん」 柚は嬉しそうに笑った。海はその笑顔を心底喜んでいるようだった。 幸せがその場を包んでいた。 ■■■ 覚醒後。 「本当にあんな素敵な未来が来れば……」 柚は体験した未来に満足していた。 |
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