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―アリスインゲート2―Re:

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 ポセイドンにあるレストランでのこと。
「おっと、ご相席よろしいですか?」
 エドワード・ウォーターバーン(えどわーど・うぉーたーばーん)はトレイを持って、その席へと変わった。目の前に誰とも知らない男が座っているのに断りも待たず。ドレスコードを必要とするような高級なレストランで、ひどく無作法なことだ。
 男はオーダーを取ったばかりだった。目の前に座る大柄なエドワードを睨む。
「……わたくしになにかようですか? ファットマン」
「ブックマンと呼んでくれ。それは私の世界ではあまりいい言葉ではない」
「お前たちの世界のことなんて知ったことか。ファットマン。わたくしの食事にまで腹に収めに来たか? その脂肪を焼いてステーキにすることをおすすしますよ」
「肉厚なステーキなら貰いたいところだ。火刑(ステイク)は勘弁だ。二度も身を焼くのは懲り懲りでね」
 背中の傷。爆弾処理に失敗した代償が痒くなる。
「なに、ここに滞在(ステイ)している君と話がしたかっただけだよ。他愛もない話だ。君のところの兵士(プレイヤー)が“ふくろうの森”に栗を拾いに行っているらしいじゃないか。あれは突き刺さすものだから杭(ステイク)のほうがあっているな」
「わたくしは耳にしていない情報です。なるほど、大方あなた方の誰かにそそのかされて、監視役(ふくろう)のいるテーブルに賭け(ステイク)をしに行ったのでしょう。ディーラーのイカサマ台とも知らず」
「輝く杭なら火かき棒を担いで取りに行きたく成るさ。だが、拾う前にやけどするってのはままある話だ。情報も火も一緒だ。良くも悪くもすぐに燃え広がっちまう。気付いた時にはケツに大やけどだ」
「あなたはわたくしたちが火傷する前にお知らせに来てくれたと? そうとは思えない。まるで火かき棒を担がせたいか、それとも、賭けに勝てるはずもないから降参(サレンダー)しろと言いに来ている見たです。あるいは、そのどちらともか」
 エドワードがメガネで表情を隠す。
「どっちでも、わたくしにそれを伝えたところでなんの意味もない。わたくしはここにおかしな連中が色々と嗅ぎまわっているのを見に来た序に“不味い食事”を少しはマシな場所で採りたかっただけですよ。わたくしの知らないところで国のものが火傷するなら大火傷してくればいい。そうすれば、火傷させた国(カンパニー)に賠償金を請求できますから」
 エドワードは笑った。周りの客が何事かと眉をひそめるのもはばからずに豪快に。
「なるほどこれは恐れいった! 手を出しておいて被害者に名乗る気だとは。なんて愉快な厚かましさだ」
 男が席を立つ。
「勝手に来て人の国のビルを壊して帰るあなたたちほどではない。食事はする気が無くなった。不味い【グリーク】の食事よりも、母国のスープのほうがいい。その腹になら入るだろう。わたくしの分まで食べていくといい。賭け金(ステイクス)くらい出してやる」
「それは太っ腹だな。大使さん」
「アナタほどじゃない。それに大使じゃなく“大臣”ですファットマン」
 ウェイターが食事を運ぶ横を過ぎ、男は去っていった。ウェイターの手に紙幣の束を掴ませて。
 食事を運ぶ相手が大金を残していなくなり、あたふたするのを見て、ブックマンはウェイターを手招きした。彼は急ぎのようで帰った。食事は私が頂くと。
「あれが、【ノース】の大臣にて王の腹心――ロキス・ワーグナーか。とんだ食わせ者だな」
 その食わせ物の食事(ステーキ)を代わりに食いながらエドワードはふくろうの森のディーラーに通話を入れた。