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―アリスインゲート2―Re:

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―アリスインゲート2―Re:

リアクション

<グルーム・リーダー応答しろ、グルーム・リーダー――>
 ホテル00、ミスタープレイム、ふくろうの森のディーラーことフランシス・ウォルシンガム(ふらんしす・うぉるしんがむ)がフクロウ達に語りかける。
 遠く離れたところからのその声はフクロウ達の耳小骨を直接振動させる。
<こちら、グルーム・リーダー>
 応答したのはローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)だった。闇夜の森に姿を消して彼女を目視することは出来ない。
<武器(火かき棒)を持ったプレイヤーが席についたのを“フクロウの目”が確認した。宝箱目指して駒を進めてくるはずだ。爪を隠して待て。以後の作戦指揮は任せる>
<了解。グルーム・リーダーアウト>
 ローザマリアたちはフクロウというよりも鷹だ。これから行われるのはポーカー(火かき棒)での栗拾いではなく、焼き栗を餌に行う鷹狩だ。ポーカーをしに来たつもりのプレイヤーはイカサマ師に乗せられたまさに鴨だ。
(ネギの代わりに武器を背負っているのが面倒すけどねぇ〜おっときたきた……)
 フクロウ(Owl)の目のコードをもらい、作戦の偵察を担う羽目になった富永 佐那(とみなが・さな)が国境付近の高い木の上から【ノース】の兵団を確認する。人数は少ない少数部隊が森へと入って来るのを見届ける。
<こちら、フクロウの目。ハイエナが森に入ってきた。餌を探している模様……>
<グルーム・リーダー了解。引き続き監視を続けろ>
 堅苦しい軍事的なやりとりに肩が凝りそうな佐那だった。
 おかしな話だが、通信相手ではるローザマリアが佐那の頭を吹き飛ばそうとしていたのが数十分前のこと。ブックマンことエドワードからの協力要請で「近場にいるから」というだけで本作戦に協力することになった。弾丸がチョコレートを撃ちぬけなかった結果というやつだ。
 撃ちぬけなかったのは偏に偶然だ。
(あのとき何故……《サイコキネシス》が使えたのだろう)
 使えることのなかった能力の発現に佐那は今も戸惑っている。適正がないと言われていたのにいまさらの発現だ。
 考え事をしている余裕はないが考えずにはいられない。そんな彼女を狙ったかのように、《殺気看破》が警鐘を鳴らす。ハイエナの火かき棒からレーザーが放たれる。
 放たれたそれに無意識に反応し、不可視の腕で物理的防御を試みる。不可視の腕に阻まれたエネルギー体は標的に届く前に減衰した。
 佐那はすぐに木から離れて麒麟に乗り、離れる。《天のいかづち》で目眩ましを一つお見舞いしてだ。これで暫くは動けないはずだった。
<こちら、フクロウ。ハイエナは“夜目が効く”警戒されたし>
 警告する一方、思考はやはり自らの力の事に取られる。
(また……私が《サイコキネシス》を……どうして)
 疑問にかぶさるように自らの中から別の声が聞こえてくるような気がした。

 ナイトナインたちは雷の光と音の差から標的の距離を測っていた。
 しばらくすれば、ハイエナはこの暗がり(グリーム)で不幸な事(グルーム)に会うだろう。
 ローザマリアが斥候に【ピーピング・ビー】を放つ。覗き蜂の視界を共有し疑似餌とも知らずに兎の干し肉に釣られたハイエナの動きを観察する。佐那がいい囮になったようで森の深くに入り込もうとしている。グルームゾーン(狩場)へと入るのを息を殺して待つ。こちらに気づかずにいてくれるなら尚良し。気付いても応戦するだけだ。
 接触が一番早そうなのはグルーム01の上杉 菊(うえすぎ・きく)。牽制役として部隊先頭に陣取っている。アローヘッドの矢先。
 フクロウが頭上を飛び去っていく。ハイエナを引き連れて。
 ダークビジョンで敵を目指する。近接銃撃戦を想定したレーザーアサルト及び散弾ライフルを装備している。森林戦闘に向かない遠距離ライフルの類は持っていない。装着されたNVDには赤外線前方監視装置が機能として備わっているなら、もう菊の居場所もバレる頃だ。
 バレる瞬間を狙い、菊は《ホワイトアウト》を使った。森に霧が立ち込めて敵の視界を奪う。
<グルーム01邀撃開始!>
<グルーム01からグルーム03へ、状況開始! ムーブムーブ!>
 《ホワイトアウト》の合図とともに、矢先は一斉に動く。
 グルーム01は合図とともに前方へ離脱。
 直後、グルーム・リーダーとグルーム03フィーグムンド・フォルネウス(ふぃーぐむんど・ふぉるねうす)の遠距離挟撃。前戦で開けた射線を活かして遠距離射撃と【魔道銃】2丁による弾幕で挟む。間断なく射撃を行いつつ前方へと移動する。
 敵部隊は6人少数の1斑編成の塊で行動していた。森林戦での迎撃及び遊撃に対して人数差に寄る各個撃破を目的としていたが、それが仇となり包囲戦を仕掛けたナイトナインに優勢を奪われた。
 グルーム02エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)が敵近くに飛び込み、【機晶爆弾】を投げ込む。アクセルギアで急速離脱後に爆発。特戦隊とともに近距離射撃でその場に釘付けにする。
 その間に遠配置のグルーム・リーダー及びが【ノース】国境側の位置に移動。敵の背後にある逃走方向をV字に封鎖した。
 敵が逃走不可能を悟った時には、リーダーの《スナイプ》と02の白兵攻撃により、班は無力化され二人が捕虜となった。

<ホテル00、こちらグルーム・リーダー。状況終了>
<ホテル00了解。オペレーションアンダーシャフトをこれにて終了し、捕虜を連れてランデブーポイントへ迎え>
 口と手足をガムテープで巻き上げた捕虜をポイントまで運ぶのは、大変だが仕方ないとあきらめ、引きずるために縄をかけようとして、ローザマリアはあることに気がついた。
 捕虜の校章。それは校章ではなく企業所属プレート。ESCの三文字。
 彼らは【ノース】の正規兵ではなく、派遣として送られた企業保有のサイボーグ兵だった。
 故に、彼らには捕虜としての価値は無かった。