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リアクション
陽一の手配により避難した場所。
「ここで終わるまで待機しておくか。というか何でこいつら居座ってるんだ」
「分からねぇよ。早くどこかに行けよ!」
特戦隊に降ろして貰い、地面に座って一息つく双子。特戦隊は去らず双子の周囲をぐるりと囲むように突っ立っている。嫌がるのはこれまでに嫌な目に遭わされたから。つまり陽一のお仕置きも兼ねているのだ。
その時、
「その心配は必要無い。全くいつもいつも懲りないな」
孝高が姿を現した。その隣に孝明。
「……あっ」
「もしかして」
現れた二人の姿を見た途端、双子は悟った。陽一がこの事を知っていたと。まさにその通りである。
「さすが、双子。会いに行く途中にそちらから会いに来てくれるとはね」
孝明はにこやか。もう気付いても遅いのだ。
「ここは俺に任せて親父はゴーレム退治に行ってくれ。後で双子をパスしてやる」
「あぁ、頼むよ」
孝明はゴーレム退治に行き、孝高がこの場に残った。
「……」
双子は、逃げたそうに周囲を見回すが逃げ道は全て特戦隊に塞がれ動けない。
「さてと、せっかくの海だ。天禰とわたぼちゃんが向こうでスイカを用意して待っているからビーチバレーで遊んでからスイカを食いに行こうじゃないか」
孝高は平時の口調で遊びに誘う。
しかし、
「……ボール持ってねぇじゃん」
「どういう事だよ」
今までの事から警戒色を強める双子はボールを持たぬ孝高を怪しみ、嫌な予感を感じていた。
「……それはお前達にやってもらうからな!」
孝高は双子の期待に添い、巨熊に姿を変えた。
途端、
「!!!」
青い顔の双子は逃げようとする。何せ巨熊になった孝高には随分お世話になっているので。
しかし、逃げ道塞がれている上、孝高が見逃すはずはなく
「ふぎゃぁぁぁぁ」
見事にボールとして扱われた。
『分身の術』で高速に移動し、レシーブやトスを“がおー”と鳴きながらして最後はアタックで孝明の所に届けた。
一方、ゴーレム退治は……
「なかなか上手く行かないわね」
マーガレットは『風に乗りて歩む者』も使用して空に地にゴーレムの攻撃を回避しながら機会を窺っている。
「おっと、危ない危ない」
空飛ぶ箒でゴーレムの周囲を飛び回りつつ散布の機会を窺う梢。
「ゴーレムさん、元に戻っちゃうですぅ」
オルフェリアも箒に跨り散布の機会を窺う。
すっかりゴーレムの体は元に戻っていた。
その時、
「……ここでいいか」
孝明が参戦し、ゴーレムが歩く先にインビジブルトラップを設置した。
それを見た散布者達は孝明が何をしようとしているのか察し、誘い込みをかける事にした。
さらに囮も登場。
「いってぇな」
「くそぉ」
双子は孝高にパスされ、孝明の前に放り込まれた。
「丁度、いい時に来てくれたね。さぁ、存分に役目を果たしておくれ」
孝明はにこやかに双子を迎えた。
「はぁ!?」
「ちょ、おい」
孝明のにこやかさは怖いと認識している双子は嫌な顔をする。というかせざるえない。何せ先ほど痛い目に遭ったので。
ゴーレムは双子を狙って接近した途端、足元が爆発。
「うおっ!?」
凄まじい爆発音に驚き、耳を塞ぐ双子。
「ゴーレムさんにぜーんぶあげるのですよ、オルフェお料理が得意なのですよ♪」
オルフェは中和剤の前に大人しくさせるために『謎料理』をぶっかけた。
「……うわぁ、何だよあの色」
「あれ、ヤバイよな」
双子はオルフェの攻撃に素直な感想を口にした。
心なしかゴーレムの動きが鈍り始めた。
「今なら行けるわね」
「これで終わりよ」
「これも食べるですよ♪」
マーガレット、梢、オルフェリアは見事に中和剤を散布した。
しばらく、鈍く動いていたが、次第に崩れただの砂に戻った。
「……よ、よかったです。これでもう大丈夫です。あ、あのありがとうございました」
リースは中和剤が効いた事にほっとし、手伝ってくれたカシスに礼を言った。
「いや、予想通りの効果を発揮したようでよかった。あとは、鎮痛剤の調薬でもするか」
カシスは軽くリースに答えた後、鎮痛剤の調薬に興味を戻し、作製するためにこの場を離れた。そして一人でする調薬も乙だとばかりにのんびりと作製し完成させていた。
とにもかくにも騒ぎの半分は解決した。
残り半分は……
「終わったぁ」
「しかも痛い目に遭うし」
双子は孝明と陽一をにらんでいた。
双子の処理だ。
「……全くこの間の事で少しは大人しくなった思いましたが、まだ痛い目を見ないと解らないみたいですね……というかもう見たみたいですが、足りないみたいですね」
ザカコが双子の前に立った。未来体験で大人しくなったと思ったらこれだ、もう呆れるしかない。
「……息抜きで来たんだぞ」
「そうだそうだ。ずっとあの魔術師の対策とか色々真面目な事してたら疲れるじゃん」
双子は必死に無駄な弁解をする。
「それは分かりますが、何事も限度があります」
ザカコは双子の言い分なんぞ完全には飲み込まない。
「校長だって遊んでるじゃん」
「不公平だ! 痛い目に遭うし」
双子は口を尖らせ、エリザベートの事を持ち出す。
「……校長にはあとで一言言うので今は関係ありません」
とザカコは一蹴して話を戻す。
「むっ」
双子は、発する言葉を失い、不機嫌そうな顔をするばかり。
そこにずっと騒ぎを見守っていたシリウスが登場。
「さてと、話をさせて貰う。ただし、謝るのは無しだぞ。どうせ謝っても悪さをするのは分かっているからな」
先回りをして双子の謝罪の言葉を引っ込めさせる。
「……」
じっと双子はシリウスを見る。
「オレが聞きたいのはどういう理由でゴーレムを作って何をさせようとしたのか、何が原因で失敗して、それを防ぐにはどうすればいいかだ。そうそう、門外漢だからって専門用語の羅列で煙に撒こうとか思うなよ? この場には詳しい奴が何人かいるんだからな。ついでに記録にも録るしな」
シリウスは念のためにと録音モードにした携帯電話片手に教師らしく双子の相手をする。
「そうだ。薬は完成させなきゃいかん」
双子の様子を見に来たダリルが加わった。
「……理由って言われてもなぁ、面白そうかなと思ったんだよ。な、キスミ」
「だよな。それに何か作業する時に助手として使おうかなと」
双子は互いの顔を見合わせて考えた末の理由を話すが、二人らしく悪気の無いものではあった。
「予想通りだな。それで原因は何だ? 失敗分析は大事だからな」
シリウスは原因について追及。
「……材料の配分の失敗かな」
「ついでにヒスミのやり過ぎ」
作成過程を振り返り、失敗を思い出す。
「もう一つ、原因はあるぞ。ほとんどがいきあたりばったりな行動だ。失敗を恐れないのはいい。けど、失敗したら必ず分析して次に生かせ」
シリウスは双子最大の原因を挙げた。
「失敗に終わったらただの迷惑だが、成功する薬を調合し大勢の役に立つ所までいければ皆の見る目も変わると思うぞ。すぐに変われとは言わんが、意識ぐらいはしたらどうだ?」
『薬学』を持つダリルもシリウスに加勢する。とりあえず、役に立つ悪戯の方向で更正させるのが現実的だと判断したのだ。時間はかなりかかるだろうと分かってはいるが。
「そうだぜ。発想は悪くないんだ、無駄にするなよ?」
シリウスは携帯電話の録音モードを切り、にっと笑んだ。
この流れであれば、失敗はしないと更正を誓うのが普通なのだが、空気を読まず自分に素直な双子は
「失敗はしたくないけどさ、面白い事はやめられないよな」
「あぁ。でもまぁ、人の役に立つの悪くないけど。それだけだとつまんねぇし」
面白い事はやめないを宣言するのだった。少しだけ人の役に立つ事も頭には入れている様子。これまでも役に立つ事を全くしなかった訳では無いのだが。
「そう言うと思ったぜ」
「人はそうすぐには変わらないからな」
シリウスとダリルは苦笑いしかなった。もう答えは分かっていたから。
最後に
「……お騒がせして申し訳ありませんでした」
「ついでにありがとうございました」
双子はきちんと謝罪し礼を言った。しかも皆を恐れてかなぜか丁寧な言葉で。
これでひとまずゴーレム退治は完了した。同時に採取やら魚竜釣りも一段落していた。
それにより、バーベキューなどが開催される事となった。
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