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リアクション
浜辺。
「夏と言えば海だよねー」
フリルたくさんのピンクの可愛らしいビキニ姿の神月 摩耶(こうづき・まや)は海に向かって万歳をして太陽の光をたっぷり浴びて夏を感じていた。
「とても賑やかでございますね」
黒と白のツートーンビキニのリリンキッシュ・ヴィルチュア(りりんきっしゅ・びるちゅあ)は何やら荷物を持っていた。
「……それにしてもちょっときついかも」
摩耶は胸の部分を直しながら眉を寄せていた。豊満な胸を抑える役目は今回の水着にとっては荷が重かったようだ。
「こうして海に来た訳だけど何をして遊ぶの?」
赤色のビキニで美しい四肢を魅せるクリームヒルト・オッフェンバッハ(くりーむひると・おっふぇんばっは)は太陽のまぶしさに眼を細めた。
「皆様、様々な事をしていらっしゃいますね」
緑色のメッシュタンキニのアンネリース・オッフェンバッハ(あんねりーす・おっふぇんばっは)は賑やかな海を眺めていた。
「ふふふ、夏と言えば海、そして、リリンちゃん!」
摩耶は口元を綻ばせながらリリンキッシュに例の物を渡すよう片手を出して指示する。
「あ、はい、摩耶様」
摩耶は手荷物を渡した。
摩耶が手荷物から取り出したのは
「……スイカ割りよ」
立派なスイカであった。
「……スイカ割りねぇ」
「スイカ割りでございますか」
クリームヒルトとアンネリースはきょとんとした顔でスイカを見るばかり。
「摩耶様、割るのでしたら包丁をお借りして来ましょうか」
リリンキッシュは気を利かせようとする。
「リリンちゃん、包丁は無くて大丈夫だから。というか、みんなルールを知らないんだっけ」
リリンキッシュを制止し、摩耶は自分以外誰もスイカ割りのルールを知らぬ事に気付いた。
「ルール? 普通に包丁か何かで割るんじゃないの? ちょっとつまらないけど」
クリームヒルトは肩をすくめながら退屈そうに言った。
「ちょっと違うかな。それを今から説明するから。よく聞いててね」
摩耶は三人の顔を見回し、ゆっくりとスイカ割りのルール説明を始めるのだった。
「スイカ割りは日本の夏の伝統的遊びなの。まず、二人一組に分かれて一人が目隠しをして棒を持ち、もう一人がそのコを背中から抱き締めてスイカのある処まで誘導してあげる。そしてスイカの前まで来たら棒持ちのコがこれを割る!」
摩耶は適当な場所にスイカを設置し、棒を両手で持って割るレクチャーをしながらみんなにスイカ割りを説明した。ただし、摩耶のアレンジバージョンのスイカ割りのルールを。
「……日本には面白そうな伝統があるのね」
「地球ではそのような遊戯が流行っているのですね……」
「夏の風物詩にそのような物があるとは存じませんでしたわ」
クリームヒルト、リリンキッシュ、アンネリースはすっかりスイカ割りというものを誤解し信じ込んでいた。
「それじゃ、みんなが分かったところで早速二組に分かれてどっちが先にスイカを割るか勝負!」
摩耶がパンと手を叩き、スイカ割り開始。
まずはチーム分け。
「リリン様。如何に主と言えど、勝負となれば負ける訳にはいきませんわ」
「もちろんでございます。摩耶様達が相手とは言え、勝負とあらば全力を尽くす所存です」
アンネリースとリリンキッシュの従者チーム。
そして、主チームは、
「聞くけど、ただスイカを割って食べてそれで終わり? 他に何か面白い物は無いの?」
クリームヒルトは他に楽しみは無いのかと発案者に問うた。
「さすが、クリムちゃん! お楽しみは忘れずに用意してるよ♪」
クリームヒルトに妖しく笑いかけた後、摩耶はいつの間にか用意したビニールプールを示した。
「ぷよぷよたっぷりのプールだよ。負けた方は罰ゲームでここに放り込んじゃうよー」
摩耶はプールでうごめくペットのスライムを掴み、笑顔で説明。ペットの他には軟体クリーチャーが色々うごめいていた。
「それは面白そうね。せっかくだからあたしのペットも入れるわね」
クリームヒルトはペットの軟体パンダをプールに入れた。
それが終わると
「さあ〜早速始めましょうか」
クリームヒルトは勝負の前というのに楽しそうな顔をしていた。
「それじゃ、どっちが先に始めるか、決めよっか」
摩耶は手に持ったスライムをプールに戻しながら言った。
早速、スイカ割り勝負が始まった。先行は従者チームから。
「……目隠しをしますので、アンネ様スイカまで誘導をお願いします」
リリンキッシュは目隠しをして両手でしっかりと棒を握り締めた。
「お任せ下さいませ。スイカまで必ずや導いてみせます」
アンネリースはそう言うなり背中から抱き締めて準備を整え、スタート。
「リリン様、行きますわ。このまま真っ直ぐ進んで下さいませ」
アンネリースは真面目に指示をする。
「……真っ直ぐでございますね」
視界を塞がれ、リリンキッシュはたどたどしいながら真っ直ぐ歩を進める。
「違いますわ。もう少し右に」
途中で道を逸れ、アンネリースは修正しようと指示を出す。
「……右でございますね」
リリンキッシュは指示通り右に向かって歩く。
このままアンネリースの導きでスイカまで辿り着くかと思いきや
「…………アンネ様? 如何しま……っひゃう」
突然、指示の声が消え心許なく振り返るリリンキッシュの声が裏返った。
密着している内にリリンキッシュの体臭に触発されたアンネリースが細い指をリリンキッシュの胸に這わせ揉んでいたのだ。
「リリン様ぁ、わたくしは、わたくしはぁぁ、あぁん♪」
アンネリースはリリンキッシュの手に自分の手を重ね耳元に吐息を吹きかけたりゆるやかに太とも撫でる。
「ちょっ、アンネ様ぁぁあ、そのような処、触ってはぁあ♪」
至る所をアンネリースに弄られ、力が抜けて握っていた棒を落としてしまい、一歩も動けない状態に陥ってしまった。もう勝負どころではない。
ここで
「そこまで! 今度はボク達の番だよ。クリムちゃん、目隠し目隠し♪」
摩耶の勝負終了の合図が入り、次は主チームがスタート。
「摩耶、確りと誘導をお願いするわね♪」
クリームヒルトは目隠しをしてからしっかりと棒を握り締める。騎士の家系出身のため棒を握る姿はとても様になっていた。
「任せて♪」
摩耶はクリームヒルトを抱き締めスイカを目指して出発。
「クリムちゃん、左、左」
「……左ね」
摩耶の指示にクリームヒルトは迷い無く進む。
しかし、
「いいよ。このまま真っ直ぐ、スイカに直行だよ!」
摩耶の真面目な誘導はここまで。
「真っ直ぐ……って、ちょっ、摩耶! 駄目、勝負がぁぁ」
クリームヒルトは思いっきり胸を掴まれ、声を上げた。
「クリムちゃん、ほら、真っ直ぐ真っ直ぐ♪」
摩耶は太ももを内に外に撫で回し、手を絡めたり悪戯をし続ける。そもそもアレンジ版を教えたのはこれが目的だったりする。
「あぁぁん……やめっ……駄目よぉ♪」
視界が閉ざされている分いつも以上に身体が敏感になっているようで摩耶の手が少し触れるだけで身体が反応する。
しかし、クリームヒルトの意地か棒をしっかり握り締め、スイカを割ろうとたどたどしい足取りで歩を進める。
その結果、クリームヒルトの意地は報われ、見事にスイカは真っ二つとなった。
「さすが、クリムちゃん。勝ったよ♪」
摩耶は楽しそうに手を叩いて別の事で息が切れているクリームヒルトを労った。
「はぁーはぁー……ど、どうにか勝てたわね♪」
目隠しを外したクリームヒルトはすっかり疲れ切っていた。
「それじゃ、罰ゲームをして貰うよ!」
摩耶は嬉々とプールを指し示しながら従者チームに言った。
「覚悟は出来ておりますわ」
「あ、あの中に飛び込まねばならないのですね……摩耶様のご命令とあれば……」
ノリノリのアンネリースに何かと言いながらも罰ゲームを受ける気でいるリリンキッシュ。
「クリムちゃん、行くよっ」
「もちろんっ」
摩耶とクリームヒルトは同時に従者チームをプールに放り込んだ。
リリンキッシュとアンネリースは勢いよく軟体生物のプールにダイブした。
「ひあぁぁぁんっ、そ、そこは……だ、駄目で……あぁぁあん」
「はぁはぁ……ああぁぁん♪」
身体を這い時には水着の隙間に入り込む軟体生物にリリンキッシュとアンネリースは顔を赤くし、艶やかな声を上げる。
「最高のスイカ割りね。日本はなかなか素敵な伝統を持っているわね」
クリームヒルトは絶景と言わんばかりにプールの有様を嬉しそうに眺めていた。
「……だねぇ」
うなずきながらも摩耶は別の事を考えていた。もっと楽しくなるような事を。
そして、それはすぐに実行に移された。
「クリムちゃん……どーん♪」
可愛らしいかけ声と共にクリームヒルトをプールへ投入しようと思いっきり押した。
「うわぁっ!?」
不意の事に対応出来ず、クリームヒルトはそのままプールへドボン。
「摩耶ぁ、貴方って子はぁぁぁっ♪」
クリームヒルトは摩耶に振り返り、柳眉を逆立てるが、本当に怒っている訳ではなかったり。元々勝っても負けても美味しいと考えていたので。
「へへへ、ボクも♪」
摩耶は可愛らしい笑顔を浮かべたかと思ったら自らプールへ飛び込んだ。
当然、
「ちょ、あぁぁ、そこに入っちゃぁあ、くすぐったいよぉお」
摩耶は軟体クリーチャーの餌食となり、悶えながら艶めかしい声を上げていた。
「ちょっ、ひゃぁあう……何か触れ……あぁぁん♪」
クリームヒルトは背中をなぞる軟体クリーチャーの感触にビクつき、思わず身体を動かす。
その余波で近くにいた摩耶が巻き込まれ、
「ちょっ、クリムちゃん……ふぉああぁぁん」
バランスを崩した摩耶はクリームヒルトの胸に顔をうずめる形となり軟体クリーチャーが首をゆっくりと這ってくすぐったくなって堪らず声を上げた。
それほど広くないプールに四人も入ると満員状態で重なったり絡んだりと大変な事になっていた。
結局、敗北した者も勝利した者もプールに入ってしまい、全く罰ゲームの意を成していなかったが、当人達は大いに楽しんだためそれほど気にしなかった。
摩耶とクリームヒルトが割ったスイカはというと食べる頃にはすっかり暑さにやられ温かくなっていた。
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