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リアクション
浜辺。
「グラキエス、大物を釣るいい機会だと言っていたがこれはどういう事だ。優先順位はどうなっている、我の趣味を優先してどうする!」
海に連れて来られるなりゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)はグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)に声を荒げた。なぜならグラキエスは補助がなければ生命活動に支障が出る体で氷結が平気な分暑さには危険なほど弱いのに他人の趣味を優先した事がゴルガイスは許せなかったのだ。
「……この時期、俺はずっと涼しい場所に閉じこもりっぱなしでゴルガイスは趣味の釣りや水泳が楽しめないから少しでも楽しんで欲しいと思ったしキースもあのレシピが気になっていただろう? 調薬に詳しい人がいるからもしかしたら何か分かるかもと」
グラキエスはそろりと自分の気持ちを話した。気遣ってくれる事は嬉しくて有難い事だがそればかりでは申し訳ないし自分も仲間のために何かしたいと思うもの。大切な人が楽しんでいる姿を見るのは嬉しいから。
「……アラバンディット、今回はエンドの気遣いを有難く受けたらどうですか?」
ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)がゴルガイスを宥めた。もう海まで来ていて引き返す訳にはいかないしグラキエスの気持ちを汲んであげたいから。
「そうだな。折角の気遣いだ、魚竜釣りを楽しませてもらおう。キース、サポートは頼んだぞ。グラキエスはスティリアから離れずじっとしているんだ」
ゴルガイスはグラキエスを見て溜息を吐き出し、出来る限りの事でグラキエスを暑さから守る事にした。
「……分かった。俺も何か手伝える事があれば手伝う」
グラキエスは大人しく言われた通りにした。
「それと次から何かしたい事があるなら必ず私達に相談して下さいね」
ロアは軽く笑みながら優しく言い聞かせた。
「……あぁ」
グラキエスはこくりとうなずいた。今回は話すと自分を気遣いやんわりと止められる事を知っていたため詳細を話さず、二人を連れて来たのだ。
話はここまでにしてグラキエス達は魚竜釣りをしに行った。
釣りのポイントは『博識』を持つグラキエスの勘と海藻ハーブから聞き出したエースの話を参照にして決められた。
ポイントに着くなりゴルガイスは大物を相手にした実績がある頑丈な釣竿を使用した。
「……さて始めるとするか」
釣り糸を垂れ、ゴルガイスは辛抱強く魚竜が食いつくのをひたすら待った。
その間に共闘する事になる人達がやって来た。
浜辺。
「今回は調合素材たるものを集めてヨシノさん達にお渡ししたらよいそうですよ。もしかしたら調薬の他に何か知っているかもしれません」
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)は一生懸命人助けをする気満々。
「そうか。しかし、ウララの台詞とあの特別なレシピの効果、作製者が作製者だけに嫌な予感しかしない。あまりあの二人を信用しない方がいいかもしれないな。とりあえず今は大人しく素材集めをするとするか。マリナ姉も今回面倒な事を頼んじまって悪ぃな」
ベルク・ウェルナート(べるく・うぇるなーと)はウララの自分の団体は魔法中毒者の集まりを手本にしたという発言が気になり、ヨシノに不審を抱いていた。
「気にする事ないさね。あたしの持つ知識が何処まで役立つか解らないけど。フレちゃん達の頼みなら幾らでも協力するさねよ?」
マリナレーゼ・ライト(まりなれーぜ・らいと)は笑いながら答えた。今回調薬関係という事で薬学に造詣が深いマリナレーゼも同行していた。
「ご主人様! 正体不明の魔術師なんて胡散臭い存在この超優秀なハイテク情報忍犬たる僕が科学的に突き止めてやりますよ。しかし今回はマリナさんに来て頂けて大変心強いです! 僕は科学の知識と違い調薬知識が殆どありませんので助かります」
忍野 ポチの助(おしの・ぽちのすけ)はいつもの調子でフレンディスのために頑張ろうと必死である。
「手に入れた情報をまとめる時はポチちゃんを頼りにするからお願いさね」
「ポチ、頼りにしてますね」
マリナレーゼとフレンディスは笑顔でポチの助を頼りにしている旨を伝えた。
「ふふん。あ、エロ吸血鬼まだ居たのですか? 無能は帰ればいいのですよ!」
懐いている二人に頼りにされすっかり気分がいいポチの助はベルクに悪態をつく。ベルクが中心となって動いている事件なのだが。
「……あのな(後で海に沈めるか)」
ベルクは心内でポチの助の自分に対する扱いについて相応しい処遇を考えていた。
「それでは私、早速海に入ってお伺いしている素材を集めて参ります。巨大魚竜さんに出会えたら仕留めて肝を手に入れておきますね」
可愛らしいパーカーパレオ付水着姿のフレンディスは早速肉体労働を開始しようとするが、
「フレイ、ちょっと待て。その格好で無茶はしねぇでくれ」
ベルクは動きにくそうな姿に不安しか感じない。恋人の水着姿が見られる事自体は大変喜ばしい事なのだが。
「マスター、ご心配なさらずともこの姿で泳ぐのは慣れております故、お任せ下さいませ! では頑張ってきますね」
ベルクの心配なんぞなんのそのフレンディスは魚竜を仕留めるべく、現場へと勇んで向かった。
「おいおい」
ベルクは慌てて追いかけるのだった。その二人の後ろをマリナレーゼとポチの助が続いた。
しかし、フレンディスは見知った顔を発見し、魚竜との格闘を後回しにした。
魚竜釣り現場。
「……あの、魚竜さんは釣れましたか? お身体は大丈夫ですか?」
現場に到着するなりフレンディスはグラキエス達を発見し、声をかけた。
「スティリアといれば大丈夫だ」
姉と慕うフレンディスにグラキエスは表情を和ませた。
「まだかからぬ。貴公らも来ていたのか」
頑丈な釣竿で挑んでいるゴルガイスは進展せぬ現状を伝えた。
「あぁ。色々知りたい事があってな。そっちは例のレシピの事もあるんじゃないのか?」
ベルクはゴルガイスにうなずいた後、ロアに話を振った。“例のレシピ”を最初に発見したのはベルク達なので。
「えぇ、調薬に詳しいらしいので何か分かればと思いまして」
もう一つの目的を言い当てられたロアは静かにうなずいた。
フレンディス達は目的も同じためこのままグラキエス達の魚竜釣りを手伝う事にした。
釣り糸に反応が現れるのを待つ間。
「浜の方は賑やかさね。あれがヒーちゃんとキーちゃんさね。元気そうな子さねよ?」
マリナレーゼはゴーレムに追いかけられている双子を微笑ましそうに眺めていた。フレンディス達から聞いているが実物を見るのは初めてだ。
「迷惑なほど元気だ。今回もまた痛い目を見るだろうが懲りねぇだろうな」
幾度も巻き込まれた事があるベルクは呆れの目で双子を見ていた。
そんな時、釣竿が激しくしなり始めた。
「むっ、かかったか」
ゴルガイスはしっかり握り、もっていかれないよう踏ん張り、釣り上げようとするが、なかなか手強い。
「なかなか手強そうですね。それならば……」
ロアはサポートをするべく機晶爆弾を激しく水飛沫上げている中心に放り込み、水中爆発によって魚竜に攻撃を加える。
「少しは弱ったみたいだが」
ゴルガイスは竿を握り締めたまま海面をにらむ。先ほどよりは大人しくなったが、まだ釣り上げるのは無理だ。
「私が海に潜りお手伝いをしますね」
見かねたフレンディスが出番だとばかりにベルクが止める間もなく海へ飛び込み、肝を傷付けないように『魔障覆滅』で切り刻もうとするが大暴れされ上手く行かない。
「この僕が見事な援護をし、ご主人様の役に立ってみせるのですよ!」
ポチの助は少し頭部を見せた魚竜に向けて『ライトニングブラスト』で攻撃を加えた。
「しぶてぇな」
ベルクは魚竜の尾に『渾爆魔波』を命中させ、少しでもフレンディスが立ち回り易くする。
「……大丈夫なのか」
フレンディスを心配するグラキエスは海面を見つめている。
突然、海面が静かになった。
それを合図に
「よし、今ならば」
ゴルガイスはフレンディスが見事に仕留めたと知り、一気に竿を持ち上げた。
その竿の先には仕留められ大人しくなった魚竜が食いついていた。
「マスター、仕留めましたよ」
魚竜が釣り上げられると同時にフレンディスが海面に姿を現した。
「いいから、さっさと陸に上がれ」
ベルクはフレンディスの無事な様子に安心しつつ手を差し出した。
「はい」
フレンディスはベルクに助けられながらいそいそと陸に上がった。
「無事で何よりさ」
「さすがご主人様なのですよ!」
マリナレーゼもポチの助もフレンディスの無事にほっとした。
「これが魚竜か。巨大だな」
グラキエスはまじまじと他の魚竜よりも少し巨大な戦利品を珍しそうに見ていた。
「解体して肝を取り出すか」
ゴルガイスは手早く魚竜を解体し、肝を取り出しバケツに放り込んだ。
丁度、タイミング良くヨシノが現れ、魚竜釣りの人に知らせていなかった鎮痛剤の事と採取が一段落したらバーベキューを行う事を知らせに来た。ただし、ヨシノはすぐに去ってしまったためグラキエス達とベルク達は情報収集を一段落した時にする事にした。
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