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海で楽しむ遊びと仕事

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海で楽しむ遊びと仕事

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 浜辺。

「おぉ〜〜! 海なんだよ!」
「とても気持ちいいですね〜」
 ルルゥ・メルクリウス(るるぅ・めるくりうす)ホリイ・パワーズ(ほりい・ぱわーず)は広がる青い海に嬉しそうに声を上げた。
 しかし、草薙 羽純(くさなぎ・はすみ)は溜息を吐き出していた。
 なぜなら草薙の視線の先にいたのはいつもの二人だったからだ。
「……またあの双子は相も変わらず騒ぎを起こしておるようじゃな。今回は何やら襲われているようじゃが」
 見知った光景なので草薙は危険など感じてはいない。
「そうだな。二人に良い薬になればよいがあの二人ではそうはならないだろうな。それより助けに行くか?」
 同じく双子を眺めていた夜刀神 甚五郎(やとがみ・じんごろう)は草薙に訊ねた。これまで双子の説教に関わる事が多かったので。
「今回は採取が忙しい故他の者に任せるのじゃ。ただし応援位はするがの。それより、甚五郎諸々問いただせねばの」
 草薙は双子よりも気にするべき事を口にした。
「そうだな。機会を見つけて問いただしてみるか。とりあえず、儂は魚竜釣りでもするか」
「ふむ。それならばわらわは双子の様子を見に行った後、素潜りでもして素材を採取するかの」
「ルルゥも応援に行くよ。それが終わったらルルゥは貝殻とか拾うね。でもせっかくの海だから泳ぎたいけど……」
 ルルゥは泳ぎたそうに海をじっと見つめる。仕事が大事だと分かってはいるが見ていると遊びたくて堪らなくなる。
 そんなルルゥに
「ルルゥ、仕事が終わったら存分に泳いだらいい」
 甚五郎は喜ばせるような事を言った。
「それなら早く仕事を終わらせて遊ぶよ!」
 ルルゥは元気に声を上げ、仕事をする気満々だ。
「ワタシは釣りの手伝いや貝殻探しとかみんなのお手伝いをしますね。でも海には絶対に入りませんから」
 とホリイ。実は泳げないので海に入りたくはないのだ。
 甚五郎達は早速、動き始めた。
 草薙とルルゥはまず双子に会って用事を済ませてから仕事を始め、ホリイは甚五郎と共に魚竜釣りに向かった。

 浜辺。

「追いかけてくるのが女の子ならキャッキャウフなんだろうが、自業自得だよな」
「説教しなくても十分そうだよねぇ。それでいつものように懲りないと」
 双子を知る清泉 北都(いずみ・ほくと)と白銀 アキラ(しろがね・あきら)は呆れながらゴーレムに追いかけられている双子を眺めるだけでなく結末まで予想していた。今回は関わるつもりは無いらしい。
「さて僕らは魚竜以外の素材採取を始めようか」
 北都は視線を双子から浜辺へ移した。
「オレは貝とか魚を捕るぜ。素材の細かな情報は頼む」
「分かった。僕は海藻ハーブとかを探すよ。後で調薬友愛会とかいう団体に諸々聞いてみないとね。本当に味方なのか。学者風の男性の事も合わせてね」
 白銀と北都は採取の打ち合わせをする。北都はヨシノ達の団体に多少不審を抱いていた。そのため採取は情報を得る代わりにするためのものだ。
「問題無さそうなら正体不明の魔術師との対決に力を貸してくれるよう頼んでみようぜ」
 と白銀。正体不明の魔術師が厄介である事をよく知っているので少しでも手助けがあればと考えているのだ。
 とりあえず、北都達は採取活動を始めた。

「この周辺の……」
 『博識』を持つ北都はヨシノから聞いた素材の生息場所やどのように隠れているのか推測し、白銀に指示をした。
「了解」
 作業のため狼姿の白銀は前足で砂を掘っていき、見事に目的の貝を見つけバケツへ放り込んだ。
「思ったんだけど、どのくらい集めるつもりなんだ?」
 白銀はバケツの中身を確認しながら基本的な事を訊ねた。
「数は言ってなかったから見つけられるだけ見つけて余ったらバーベキューとか何かに利用して貰えばいいよ」
 と北都はあっさり。
「まぁ、どれも食用だしな。貝類はあらかた片付けたな。次は魚でも捕りに行ってくるか。バケツの方頼むぜ」
 白銀は人の姿になりバケツを北都に託し、調薬友愛会に貰ったタブレットを使用してから海へと飛び込んだ。
「分かった。僕は浅瀬に生息する海藻ハーブでも探すよ」
 北都はバケツ片手に白銀を見送った。

 海中。

「……少しでも海中で呼吸が出来るのは楽だな」
 海中で呼吸が出来る事に感謝しつつ白銀は銛を携え、『超感覚』で水の流れの変化で魚を探し出す。
 魚の存在を察知するなり白銀は『神速』で近付き、擬態して隠れ泳ぐ魚を銛で一撃で仕留める。
「よし、捕ったぜ!」
 白銀は意気揚々と網の中に入れ、他の魚を探しては銛で突いて次々に捕獲して行った。
 ある程度捕獲した所で陸に上がった。

 白銀が魚を捕獲している間。
「これで間違い無いね。それにしてもあのレア素材で何を作るつもりなんだろう。効果が強力な物である事は確かだろうけど」
 地味な作業が得意な北都は次々と海藻ハーブを採取していたがふと魚竜釣りの現場に視線を向け、言葉をぽろり。『薬学』を持つ北都としては肝使用の調薬に興味があるらしい。
 その時、
「鎮痛剤とか毒物とかいろいろあるよね」
 素材採取のため近くを通ったルルゥが話題に混ざった。
「……あぁ、君も素材探しだね」
 北都はルルゥがバケツを持っている事から目的は自分と同じと察する。
「そうだよ。ルルゥは鎮痛剤だと思う」
 ルルゥは自分の仮説を披露。
「もしそうならよほど使用する人は重篤だねぇ。気になるから後で聞いてみようかな」
 北都は他の気掛かりと合わせて問いただす事にした。
「それよりあの双子はどうだった?」
 北都はルルゥ達が双子達に接触していた事を思い出し、ついでとばかりに訊ねた。
「元気そうだったよ! 今はみんなが何とかしているよ」
 ルルゥは元気に答え、巨大な相手に奮戦している皆を指さした。
「何とも言えない光景だねぇ」
 と北都は一言。
「そうだね〜。ルルゥ、素材採取をしないといけないからもう行くね」
 ルルゥは話が一段落したところで自分の仕事に戻った。
 北都も仕事に戻り、海から帰還した白銀と共にヨシノに集めた素材を渡しに行った。
 しばらくして魚竜の肝の利用とバーベキュー開催をヨシノから知らされた。