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第一章 砂の城造り


「これが城の設計図だね」
 お洒落な日傘を差す騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は双子が放置したままの設計図を拾い上げ確認し始める。
 その時、いつもの水着姿の
「外部だけでなく内部も細かな装飾がいるみたいね。バカでかい城を造るって聞いて面白そうだからあたしも参加するわ」
「随分巨大な城を造りたがっているわね。砂の方は大丈夫かしら」
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレンフィリティの手伝いであるセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)が話しに加わった。二人はエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)に誘われ、海に来たのだ。
「砂は心配無いよ。運び屋に頼んであるから。それよりこの設計図だと柱が少し細い上に数が足りなくてこの通りに作ったら崩れちゃうから柱を太くして数を増やさないと」
 『要塞化』を有する詩穂は設計図を見て『ジャイアントキリング』の技術で脆弱性を見抜いていた。そして連れて来た施工管理技士も加わり詩穂とセレンフィリティ達は相談し、柱の太さと数を決め、作製者の人数に合わせて城のサイズをやや小さくし華美さよりも頑丈さをメインに作製する事に意見をまとめた。
「……あの二人が面倒を起こしたせいでこっちの人数が少ないのが困るわね」
 セレンフィリティはゴーレムに追いかけ回されている双子をちらり。見慣れた光景なので心配は一切していない。城造りの参加者は三人の他に詩穂が連れて来た測量担当の観測手と工法で手伝いをする猫又工業社員と親衛隊員に応援担当の夏のお嬢さん。
「……城壊されないか少し心配だよ」
 詩穂は心配そうにゴーレムを見た。来れば一踏みで崩れてしまうのは考えるまでもない。
「その時は接近する前にこれをお見舞いして粉々にして砂にしてやるわ」
 セレンフィリティは機晶爆弾を取り出し、とんでもない事を言い出した。さすが大雑把な性格。
「セレン、そんな事をしたらあの二人を巻き込むわよ」
 セレアナは呆れながら忘れてはいけない双子の事を口にした。
「大丈夫よ。あの二人頑丈だし、今までだって無事だったじゃない」
「それもそうだけど」
 双子の事をよく知るセレンフィリティは肩をすくめながら事も無げに言い、一理あるとセレアナはそれを否定出来なかった。
 その時、大量の砂が到着。
「砂が到着したよ。早速始めよう。どんなに大きくても日本にこんな言葉があるよ、“一夜城”と。だから頑張ろう!」
 詩穂は『士気高揚』で自分を含め少数の精鋭の士気を高めようとする。
「そうね。まぁ、まだ夜じゃないけど」
「砂も届いて何とか足りるようだし、やるしかないわね」
 セレンフィリティもセレアナの士気も一層高まっていた。
 そして、
「砂と水の配分はあたしに任せて。これでも一応、教導団じゃ工兵科へ行こうかと本気で考えてたんだから。結局歩兵科の方が性に合ってたけど」
 『博識』を持つセレンフィリティが砂の城の黄金比率、砂99%:水1%を元に現在の環境を考慮し、最適な割合を計算し、砂と水を上手に配合していく。
 その間、
「作業中の熱中症対策は出来てる?」
 セレアナは詩穂に作業前の確認を入れた。セレアナ達はセレンフィリティの『氷術』で凍らせたタオルを首に巻き、水分補給用のペットボトルを腰に装備している。セレアナは『秘められた可能性』によって『ファイアプロテクト』を自分とセレンフィリティに使用して暑さ対策をしている。
「大丈夫だよ!」
 詩穂は『氷術』で凍らせた水分補給用のペットボトルを見せながら答えた。何せ人数がそれほどいないので一人でも倒れるとまずいという事はここにいる三人共よく理解している。
 砂の準備が整うと
「私は重要度の高い柱や壁を造って行くわね。砂の重さも分散出来るような形にもするわ。装飾もついでにするから」
 セレアナは重要な場所を担当する事にした。
「あたしは設計図を確認しつつ強度計算して補強場所を割り出して補強作業をするわ。それ以外は適当にやるから」
 今回のセレンフィリティはチャランポランさと理系さを見せている。
「詩穂は装飾とか設計図との突き合わせをするよ」
 日傘を片付け、海の家から借りた脚立を用意す『優れた指揮官』を持つ詩穂は従者を上手く指揮したり細かな装飾と設計図と制作物の確認を担当する事に。詩穂が連れて来たお手伝いがそれぞれの補佐に回った。
 真夏の太陽が燦々と照りつける中、熱せられた砂との格闘が始まった。
 セレンフィリティ達は時々水分補給をし、詩穂は壮大な歌を口ずさみそれに合わせて親衛隊員がラッパを吹いてこの場を一層盛り上げ、作業を応援した。
 この後、心配していた通りゴーレム騒ぎに巻き込まれる事となった。