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夏の雅に薔薇を添えて

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夏の雅に薔薇を添えて

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第7章 空に花の咲く頃に4


武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が、セイニィの到着を待つ。
辺りには、色とりどりの花々が植えられていた。


「ま、待たせたわね」
「来たかセイ…………」
「な、何よ? そんな黙っちゃって…」


白地に青の花をメインであしらった模様。
伝統的朝顔柄の浴衣姿のセイニィ。


金糸のような髪が月に照らされ花々に囲まれた彼女の姿は、とても綺麗だった。
ただ綺麗でしかなかった。 だから我竜は目を奪われ言葉が出ない。


でも……そんな彼女をもう1つだけ表す方法があるとすれば、それはかすか。
かすかに、影を背負っているようにも見えた。 しかし我竜にはそれを見ることは叶わなかった。


「綺麗だ…」
「ちょ、あんたいきなり何言っての!?」


セイニィの言葉がまるで合図であるかのように、花火が打ちあがる。
その光は、彼女の姿に更なるコントラストを与えた。


「やっぱり綺麗だ……」
「バカ! 人を花火に誘っといて、あたしばっか見てどうすんのよ!?」
「ああ、そうだったな。 そういえばラムネ買っといたんだ、良かったらどうだ?」


ラムネを飲みながら、しばし花火を見る2人。
我竜も少し落ち着きを取り戻したようだ。


「前に一緒に花火を見た時は、花火観賞どころじゃなかったが…
 あの時と同じで、やっぱり綺麗だな、セイニィ」
「もう、あんた今日それ言ってばっかじゃないの!? 何回言えば気が済むのよ!」
「思ったその時全てで言うさ。 惚れた相手には嘘をつきたくないからな…嘘で口説いて関係を持てたとして…
 それは非常に脆い関係だと思うし崩れた時、きっと後悔する。 だから、セイニィが『綺麗』だと言うことに嘘はない」


しばし俯いて黙りこくるセイニィ。
少し時間がたつとそのままの姿勢で話始める。


「会う度会う度、好きだ、綺麗だって………そんなこと言われ続けてみなさいよ。 嫌でも嬉しく感じるんだから…バカ」
「セイニィ…」
「花火、綺麗ね……」
「ああ…」
「誘ってくれて………ありがとう」


たくさんの花火が夜空に花開く。
その音と同じように、2人の鼓動が鳴り止むことはなかった。