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夏合宿、ざくざく

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夏合宿、ざくざく

リアクション

    ★    ★    ★

「どうですか、お宝はありそうですか?」
 周囲に展開したミャンルー隊に、セレスティア・レインが訊ねました。
 こういうギャンブルめいたことは苦手なので、ミャンルー隊に任せるに限ります。とはいえ、猫に小判という言葉もあるわけではありますが。
 おや、ミャンルー隊のミャンルーたちが23番区画に集まって何やら騒いでいます。ちょうど波打ち際の砂浜ですが。きっと何か見つけたのでしょう。
「でかしましたよ」
 そう言うと、セレスティア・レインがその場所を掘り始めました。お宝を見つけたはずのミャンルーたちは、なぜか砂浜に打ちあげられていた大量の小魚たちに夢中です。海中で戦闘でもあったのでしょうか、気絶した魚が大量に打ちあげられています。
 とにかくミャンルーたちは当てにはならなくなったので、自分自身で掘り進めるしかありません。波に洗われて勝手に埋まっていく穴に苦戦しながらもしばらく掘っていくと、砂の中からちょっと大きめの宝箱が出て来ました。
「これは、大物でしょうか!?」
 期待に胸ふくらませて開けてみると、中から出て来たのは『イコプラ・小ババ様専用イコン』でした。イコプラと言っても、小ババ様のサイズではりっぱな専用イコンなわけですが。推進器を中核とし、いくつものコンテナの集合体のようなイコンは、ちゃんとした機能をいろいろと持ち合わせているようではあります。ただ、セレスティア・レインの身体の大きさでは、当然操縦することはできないのでただのイコプラでした。
「まあ、ひとまず、後でミャンルー隊には御褒美を……」
 そう思いかけたセレスティア・レインでしたが、すでにミャンルー隊は拾った小魚でプチパーティー状態でした。

    ★    ★    ★

「さあ、お宝は早い者勝ちよ!」
 開幕ダッシュで25番区画の砂浜に直行した秋月 葵(あきづき・あおい)は、元気よく砂浜を掘り始めました。
 ところが、掘り始めてすぐに、何か変な物が砂の中から姿を現したのです。
「まさか、これが噂の幽霊!?」
 出て来た生首に、秋月葵が顔を引きつらせました。けれども、よくよく見ると、ちゃんと胴体もついていそうです。
「いったい、お宝じゃなくて、何が埋まっていたって言うのよ……」
 ゴミだったら邪魔だけれど、水死体だったら怖すぎると、とにかく埋まっている人らしき物を秋月葵が砂の中から引きずり出しました。出て来たのは、スク水の上にゴスロリのドレスを着たオリヴィエ博士改造ゴーレムです。先に、勝手に砂に埋まったローゼンクライネでした。
「もしかして、これがお宝……。なんてことはないわよねえ」
 もしかするとまだ何か埋まっているに違いないと、とりあえずローゼンクライネを横に放置して、さらに穴を掘っていきます。
「ああ、こんな所に! 砂だらけじゃないか。早くメンテナンスしないと!」
 深い穴にほとんど身体を入れて掘っている秋月葵には気づかず、コハク・ソーロッドが一人で砂浜に倒れていたローゼンクライネを見つけて駆け寄ってきました。砂に埋まったときに一時的に停止してしまったようですが、今のところ目だった損傷はありません。とはいえ、砂と塩水に浸かったボディはこのままにしておくわけにもいきません。コハク・ソーロッドは、急いでローゼンクライネを回収していきました。
 そんなことには気づかずに穴を掘り続けた秋月葵は、ついに本物のお宝を掘り当てました。
 大きめの宝箱なので苦労して上へ運び上げます。
「苦労したんだからいい物だといいなあ。何かなー何かなー」
 わくわくして蓋を開けると、中から出て来たのは『サテライトセル人形』でした。茨ドームの中にあった巨大イコンの整備をしていた機晶姫をモデルにした人形です。ポンチョを着た三頭身の、ちょっとテルテルボウズに似た少女の人形でした。
「これじゃ、さっきのゴーレムの方がおっきくてアタリだったかも……」
 そう思って、さっき砂浜に転がしておいたオリヴィエ博士改造ゴーレムを探しましたが、もうどこにもありませんでした。

    ★    ★    ★

「こういう岩場は、岩と岩の隙間が盲点となるので、狙い目なのですよね」
 44番区画の岩場にやってきたアデリーヌ・シャントルイユが、慎重に岩と岩の間を調べていきます。
 さすがに、岩を掘り起こしたり、穴を開けて何かを埋め込んだりすれば丸わかりですから、お宝を隠すとすれば岩と岩の隙間が狙い目でしょう。
「あれっ、これは……。もしかして、これが宝箱なのでしょうか」
 予想通り、岩と岩の間にガッチリとはめ込まれた小さな宝箱を、アデリーヌ・シャントルイユが発見しました。
 なんだか無理矢理はめ込んだようで、しばらく格闘した後に、やっと外すことができました。
「いったい何が入っているのでしょうか」
 開けてみると、厳重に封印された小瓶が出て来ました。中には、黒い花弁のような物が一枚だけ入っています。一緒に入っていた説明書によると、『黒蓮の花弁』のようです。これを使えば、一度だけ強力な誘眠作用と暗示がかけられるとありました。

    ★    ★    ★

 同じように、クナイ・アヤシも55番区画の岩の隙間を丁寧に探していました。
「お宝が、北都も喜んでくれる物だといいのですが……」
 順番に岩の隙間をチェックしていると、なんだか思いっきりはみ出しているというか、あからさまにおいてある宝箱を発見しました。そこそこの大きさです。
「これは……」
 宝箱を開けたクナイ・アヤシがちょっと考え込みました。
 中に入っていたのは『イコプラ・シパクトリ』だったのです。茨ドームでのイコン戦で、オプシディアンの仲間であるアクアマリンが乗っていたイコンです。焔虎をベースとしたクリスタルブルーに塗装されたイコンで、両肩に大型のミサイルコンテナと、両手にニードルガンを持っています。
「うーん、北都がこれよりもいい物をゲットしていればいいのですが。あっ、でも、それでは褒めてもらえなくなってしまいますね。うーん」
 ちょっと考え込む、クナイ・アヤシでした。