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祭の準備とニルミナスの休日

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祭の準備とニルミナスの休日

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プロローグ

「ミナホ、入ってもよいかの?」
 ニルミナスの村。契約者の拠点たるウエルカムホームの宿。そこにある村長ミナホ・リリィ(みなほ・りりぃ)の部屋にミナホの父である前村長でもある男はそう言って返事も待たず入る。
「ふむ……瑛菜さんたちとの話は終わったようじゃの」
 先ほどまでミナホは、契約者である熾月 瑛菜(しづき・えいな)アテナ・リネア(あてな・りねあ)の二人と祭のことについて話し合いをしていたが、今はもう終わり二人の姿はない。
「?……ミナホ?」
 自分が入ってきたことに反応を見せない娘に前村長は呼びかける。
「ん……お父さん? いつの間にきてたんですか?」
 今気づいたという風に言う(実際そうなのだろう)ミナホに前村長はため息をつく。
「何か考え事かの?」
「考え事といいますか……瑛菜さんもアテナさんもホナミちゃんが私のこと『おかーさん』って呼んだことに全然つっこみいれなかったなぁって……それだけです」
 ホナミと呼ばれる7歳ほどに見える少女。遺跡都市アルディリスに眠っていた彼女を保護するにあたり、ミナホは母親としての立場を取っていた。どうして母親としての立場を取ったのかはミナホにもよく分かっていない。ただ、それが自然であるようにミナホには感じたからそうした、ただそれだけだった。
「何時の世も契約者とはそういうものじゃよ」
 ミナホの言葉に前村長はそう言う。
「どういう意味ですか?」
「喜劇も悲劇も彼らにとっては日常の延長線上にあるものなんじゃよ。……身寄りのない子を引き取ってその親になる、そんな話を彼らは幾度も経験している」
 どこか実感のこもった様子で前村長は言う。
「そういうものですか。……それで、ホナミちゃんは今?」
「眠っておるよ。最初の頃と比べればましになったが今もまだ眠っている時間のほうが長いの」
「……ホナミちゃん、何者なんでしょうか?」
 とある人物からお気楽だの脳内お花畑だの言われてるミナホだが、流石に単なる好意のみで正体不明の少女を保護しているわけではない。村長として必要だからそうしているという面もあった。
「さて……私の知識の中にホナミのような存在の知識はないがの」
 ホナミがどのような存在か前村長が知っていることはない。ただ言えるのはホナミがアルディリスの遺産に関係しているだろうこと。そして恵みの儀式とあの魔女に関係する存在ではないということ。
「今は、ただあの子の面倒を見ながら様子を見るくらいしかできないかの」
 単なる勘だが、あの魔女との一件が終わるまではホナミに関係して問題は起こらないと前村長は思っていた。……逆を返せばその後は問題が起こると思っているようなものだが。
「とにかく今は祭じゃ。村長としてミナホがやることは多いじゃろう」
「あ、はい。暇そうにしているお父さんと違って結構大変ですよ」
「……やけに刺があるの」
「いえいえ……未だに何も教えてくれないお父さんへのあてつけなんかじゃないですよ」
 前回の事件の折、契約者の多くはニルミナスに関係する多くの秘密を知った。が、未だに村長であるミナホはほとんど何も知らない状態だった。
「……というわけで、暇そうなお父さんには音楽劇への参加をおねがいしますね」
「腰、痛いんじゃがのぉ……」
「おねがいしますね」
 何事を言う前村長に笑顔で繰り返すミナホ。
(……変な所で頑固というか……拗ねたら面倒なのは母親譲りですかね)
 はぁと溜息をつく前村長だった。