天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

調薬探求会との取引

リアクション公開中!

調薬探求会との取引

リアクション

「夜中の素材採取ですが頑張りましょう。これも調薬探究会から提示された交換条件ですし」
 『ダークビジョン』で暗闇対策をしている御神楽 陽太(みかぐら・ようた)の子孫である御神楽 舞花(みかぐら・まいか)は素材採取のため山中を歩いていた。
「……山中で魔法薬散布で被害が出ているそうですが……心配はありませんね」
 冷静な舞花は採取の前に聞いた黒亜の事に確保に向かった者達を思い出すも心配は無いだろうと読んだ。
「私もしっかりと採取をして成果を出しておかなければ」
 舞花は気を引き締め、奥へと歩を進めた。
 そして『捜索』を有する舞花は次々と素材採取を続けた末にある植物に出会った。

「……ハエトリソウに似た植物ですね。確か真夜中にしか開花しない凶暴な植物……まずは」
 舞花は植物から一定の距離を取りながら採取する標的を確認していた。
「少し弱らせてから」
 舞花は、トランスガンブレードとファイアヒールをいつでも使えるよう整えつつ『戦況把握』で今の状況を確認する。
 その時、植物脇の草むらから黒亜の魔法薬被害から逃げて来た雄と雌のシーサーが飛び出して来た。
「……妖怪」
 『未来予知』を有する舞花は植物の巨大な捕獣葉が妖怪を捕らえる未来を予知し捕獣葉が伸びるよりも先にトランスガンブレードで狙い澄ました『とどめの一撃』を放ち妖怪を守ると共に注意をこちらに向けるために前へ。
「あなたが狙うべき相手は私です」
 舞花は落ち着いた様子で自分を捕らえようと伸びる捕獣葉を『行動予測』で回避し、『スプレーショット』で次々と撃ち抜き、ライトカフスで速やかに残った捕獣葉を拘束した。
「これで採取完了ですね」
 トランスガンブレードを剣に変形させて素材使用が出来る部分を的確に斬り取り仕事を完了させた。
「怪我はありませんか?」
 仕事を終えた舞花が植物の餌になりかけたシーサー達に声をかけると元気な返事が返ってきた。
 その時、
「ポチ、シーサーさんですよ!」
 近くを通りかかったフレンディスの声が割って入った。
「いたのですか」
 胸の内で心配していたポチの助もやって来た。ベルクとマリナレーゼも続いた。
「そちらも素材採取さね?」
 マリナレーゼは舞花の荷物に目を向けながら訊ねた。
「はい。この植物の採取をしていたところ、急に脇の草むらから現れたんです。もしかしたら魔法薬の被害から逃げて来たのかもしれません」
 舞花はすぐに事情を説明した。
「だろうな。捕まえたという話は耳に入ってねぇからな。例え捕まえても反省して大人しくなるわけねぇだろうが」
 ベルクは重い溜息をついた。思い出すのは気楽とはほど遠かった両調薬会との親睦会の事だった。
「そうさね。前の鍋の時は大変だったさ。ベルちゃんが魔法薬混入を止めても諦めなかったさね」
 マリナレーゼもしみじみと何度も止めても魔法薬混入を諦めない黒亜を思い出していた。
「……それは大変でしたね。調薬探求会の方がもう一人、山中にいましたよね」
 舞花は労うと共にクオンの事を思い出した。
「素材採取や黒亜さんの捜索を続けると言っていましたよ」
 答えたのはシーサーの相手をしながら話に耳を傾けていたフレンディスだった。
「……そうですか。それより魔法薬の被害が落ち着くまで山中は安全ではありませんね。保護した妖怪達をどこか安全な場所に案内したい方がいいですね」
 舞花はフレンディスの返答から視線をシーサー達に注いだ。
 シーサー達は楽しそうフレンディスとポチの助に戯れていた。
「別にお前達を心配してたわけではないでのですよ。素材採取の途中に偶然見かけただけなのです」
 ポチの助はツンを含みつつもシーサーの安否確認が出来て安心したのは端から見れば明らか。
「元気そうで良かったですね」
 フレンディスはシーサーの頭を撫でながらポチの助に笑んだ。

 再びベルク達と舞花。
「安全な場所か。今一番安全と言えば宿の方だろうな」
 シーサーに目を向けながらベルクが現時点で最も安全な場所を口にした。
「丁度、話が進んでいる頃かもしれませんね」
 舞花は宿という事で進んでいるだろうエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)達の話し合いを話題にした。何せこの騒ぎには何度も関わっているので気に掛けるのは当然の事。
「あぁ、一体どんな話をしているのやら。どちらにしろ愉快な話ではないだろうが」
 同じく気掛かりであるベルクも話に乗った。何せベルク本来の目的は手紙の内容を知る事だったので。
「そうですね。もしよろしかったら私が宿まで連れて行きますよ。この採取で完了ですから」
 話は再びシーサーに戻り、舞花は採取の効率から考えた提案をした。
「こっちはまだ途中だからそうしてくれると助かるさね」
 同じく効率を考えたマリナレーゼはあっさりと舞花の申し出を受ける意を示した。
 そして、速やかに舞花はシーサー達を連れて宿へ向かう事に。
 別れ際、シーサー達は名残欲しそうにポチの助達の方を何度も振り返った。
「さっさと行くのですよ」
 ポチの助は言葉と裏腹に名残惜しさと嬉しさで尻尾が揺れていた。
「気を付けて下さいね」
 フレンディスは呑気に手を振りながら見送った。
 この後、フレンディス達は素材採取を再開し、舞花は無事に宿に戻った。