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リアクション
第5.5章 ええ、本当確認したんですよ……本当に最後に確認したはずなんですよ……
「ええな!? 消すなよ!? この勢い絶対消すなよ!? いいな絶対だぞ!?」
次のバトルへと移る前に阿部Pが念を押す。そりゃ現在視聴率が最高の100%になっているのだから仕方がない。
「おっしゃ次は僕が行こうか!」
真っ先に名乗りを上げたのは、先程のボロボロの服から着替えた泰輔であった。
「おっしゃ! 次は誰とやるん!?」
阿部Pは浮かれすぎて口調が安定していなかった。
「よし! じゃあ僕は空を相手に選ぶわ!」
泰輔も勢いに乗った様に叫ぶ。
「え? 空さんと? ちょっと待ってください……」
何故か急に素に戻った阿部Pが参加者の方へと歩み寄る。参加者の中から誰かを探しているようであったが、やがて見つけると手を引いて連れてくる。
「ん? 私と戦うの? 標的とじゃなくていいの?」
連れてこられたのは、空だった。
「え? いや僕が相手に選んだのはアレやで?」
そう言って泰輔が指さしたのは、泉空だった。
「……ちょっと待ってください」
阿部Pは何やら紙を取り出すと、「アッチャーイッケネェー」と額を軽く叩いた。
その紙は、今回参加者に配った番組の概要である。そこには標的の名前も書いてある。そこに問題があった。
紙に書かれていた名前は『和泉 空』だった。これだと読み方としては『いずみ そら』となる。
しかし標的の本当の名前は『和 泉空』だ。読み方は『かのう いそら』となる。
「すいませーんまちがえちゃいましたーてへぺろ☆」
反省のかけらもない謝罪をする阿部P。その肩を、泉空は掴む。『おいこらてめぇちょっとこっち来い』という視線で。
「……すいませんちょっと向こうで話し合いしてきますんで、2人で戦っていてください」
そう言うと、阿部Pは泉空に引き摺られていった。直後何か鈍い音がしたが、多分問題ないだろう。
「……しゃーない、恨みは無いけどやろか」
「そうだねー、このままだと私の出番無さそうだしね」
そう言うと泰輔、空が互いに構えあう。
「まあ、やるからには手加減せんよ?」
泰輔が拳を握る。最初の狙いは右ストレートだ。
「いいよ。ああそうそう、それと一つ言わせてね」
空が笑みを見せる。
「私の名前は『あまのくう』だよ。『そら』じゃないから」
――ほんの一瞬で、空は泰輔に肉薄していた。
そして勢いそのままに泰輔の頭を狙って蹴りを放っていた。
「なっ!?」
泰輔は驚くが、避けている暇はないと判断しそのまま拳を放つ。空の蹴りと泰輔の右ストレートがぶつかり、止まる。
「あれ、止められちゃったか」
「そ、そう簡単には食らわんよ!」
「ふーん、でも油断はしない方が良いよ」
言われなくても、と泰輔が空の首に手を伸ばす。そのまま掴み、持ち上げてチョークスラムというのが狙いであった。
泰輔の手は空の喉元を掴み、そのまま持ち上げる。そのまま落とそうとするが、息苦しい事に気付く。
空の身体は、叩きつけられることなくゆっくりと下ろされる。よく見ると三角絞めの体勢に入っていた。
掴んでいた手はいつの間にか外され、自身の腕と空の足で泰輔の首が絞められている。
「ほ、ほんとなんやろかねっとぉ!」
泰輔は無理矢理技を引き抜くと、そのまま空にエルボーを落とそうとする。
「ほいっと」
だが空はそのまま泰輔の身体に潜り込むと、前のめりになった勢いを利用して後ろに放る。
「……戦いにくいなホント」
背中から落ちた泰輔が小さく呟く。こちらが攻撃を仕掛けても、うまい具合に空振りで終わらされてしまっている。
起き上がった泰輔は、空から距離を取る。
「あれ、来ないの? ならこっちから行くよ」
そう言った直後、空がまた距離を詰める。拳を握りしめ、ストレート。
だが泰輔はそれを見て笑みを浮かべる。
「はい、かかった」
その拳を泰輔は避けると、頭を脇に抱えると強引にブレーンバスターで持ち上げ、垂直気味に落下。
叩きつけられた空は立ち上がるも、ダメージがあるのか足元がふらついている。
「よっしゃトドメさしたるわ! フランツ、三角木馬用意しといて! 後ハリセン忘れんといて!」
意気揚々と、泰輔が空を捕らえようと手を伸ばす。お前それで何するつもりだ、という道具を要求して。
だがその道具が使われることは無かった。泰輔が伸ばした手が、空を切った。
「はい、かかった」
背後から、空の声が聞こえると同時に後頭部に衝撃が走る。
いつの間にか、背後に回っていた空が泰輔の後頭部に蹴りを放ったのである。
その衝撃に、泰輔は意識を手放しリングに前のめりで沈んだのだった。
そのまま泰輔は病院送りとなった。
ちなみにこの様子は放送されたものの「これどっちが標的側になるんだ?」という事になり視聴率は低下しなかったようなのが救いであった。主に阿部Pにとって。
※現在視聴率100%
大久保 泰輔 350P→300P(死亡一回目)
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