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平行世界の人々と過ごす一日

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平行世界の人々と過ごす一日
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 昼、イルミンスール。

「……売り込みに来たのに妙に騒々しい。何か事件でもあったのかな」
 846プロの売り込みでやって来た下川 忍(しもかわ・しのぶ)はあちこちが妙に騒々しい事が気になっていた。
「何はともあれ仕事の方を……」
 とりあえず仕事を片付けなければと忍は急いだ。
 その途中、
「……あれは見覚えが」
 見覚えのある後ろ姿を発見し、忍は声をかけに向かった。

 一方。
「……ここはイルミンスールみたいですが、ボクがいたのは……」
 百合園女学院の男の娘は少し前にいた風景と違う事に小首を傾げていた。
「誰かに聞いてみましょう。そうすればきっと分かるはずです」
 男の娘は近くの通行人に何が起きているのか聞きに行った。
 そして、無事に事情を知る事に成功し
「……翌朝まで戻れないとは困りましたね。どうしましょうか」
 これからの事を考えながら歩いていた時、
「そこの人!」
 馴染みが有り過ぎる声に呼び止められた。
「ん? あっ」
 振り向いた男の娘は声の主を確認した途端、驚きの顔に変わった。
 そして、
「もしかしてこちらの世界のボクですか?」
 恐る恐る声の主、忍に訊ねた。
「その通りだけど、どうしてここに?(ここの上映会で見た通りだな)」
 忍はうなずき、訊ねた。こちらとは違い女装して百合園女学院に通い続ける平行世界の自分に。
「その事ですが、先程、確認しましたところ……」
 百合園生忍は先程入手した情報を忍に伝えた。
「それでこっちに……ところで百合園はどうなの?」
 ようやく得心がいくと少しばかりお喋りでもしようかと質問を投げかけた。
「ボクは女の子っぽい性格ですし、あまり苦労はありませんね」
 百合園生忍は可愛く微笑みつつ答えた。
「……それは良かった」
 忍は当たり障りのない返答。
「あなたはどうしてメイド服なんですか? ボクと同じですか?」
 今度は百合園生忍が質問をした。
「あぁ、これは846プロの売り込みでね。一応表向きは女性アイドルだから」
 とメイド姿の忍が肩をすくめながら答えた。
「そうですかアイドルの売り込みですか。しかし、その性格で女性アイドル……しかもメイド服」
 話を聞いた百合園生忍はまじまじと忍を見つめる。忍の話しぶりから自分とは性格が違う事も察し多少驚いている模様。
 そして
「もう一人の自分は掴みどころがないですね」
 百合園生忍は忍に視線を注いだまま感心の声を上げるのだった。
「そうかな」
 忍はそう言うしかなかった。