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学生たちの休日15+……ウソです14+です。

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学生たちの休日15+……ウソです14+です。
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    ★    ★    ★

「よいしょ、よいしょっと……」
 なんだか、両手で水をかくようにして、アルマ・ライラック(あるま・らいらっく)ウィスタリアを操艦していた。
「何をしているんだい?」
 また、おかしなことを始めたなと、柚木 桂輔(ゆずき・けいすけ)がアルマ・ライラックに訊ねた。
 機晶制御ユニットに座りながら、前の方に両足を突っ張ったままのアルマ・ライラックが両手をバタバタさせる様はちょっと新鮮と言うか可愛い。
「いえ、鷽の巣が近づいてきましたので、全速で接近を……」
「へっ?」
 なんでそうなると、柚木桂輔がきょとんとした。
 いくら、機晶制御ユニットでシンクロするとはいえ、ウィスタリアっぽい姿勢をとることはないだろうに。もしかして、ウィスタリアの副船体って、脚なのか?
「じゃあ、クロールの方がいいですか?」
 アルマ・ライラックが、うつぶせに泳ぐような格好になろうとした。とたんに、ウィスタリアの船体が激しく震動する。
「ま、まさか……。すとーっぷ、アルマ、やめーっ!!」
 ウィスタリアが変形し始めたのに気づいて、あわてて柚木桂輔がアルマ・ライラックを止めた。
「なんで、こうなる……。はっ、まさか、もう鷽の影響圏内に……」

    ★    ★    ★

「こんな所に移動していたのね」
 先行したテンコ・タレイアたちの位置情報を辿って独自に鷽の巣がある島に辿り着いた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、マップの座標を見てそう言った。とはいえ、周囲の光景は、どこがどうということはなく、ただ雲海が広がるだけなのではあるが。ただ、強い風が、島が流されているのだということを教えてくれる。
 それにしても、移動によって以前と東西南北の関係が変わってしまっているので、鷽の巣がどこにあるのか分からなくなってしまっていた。とはいえ、少し探せば、簡単に見つかる程度の広さなので、さほど問題はないだろう。
 そのため、Sインテグラルナイトを下りた小鳥遊美羽たちは、手分けして探索をすることにした。
 コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)とローゼンクライネは、ケンちゃんの素材となる銀砂の確保。小鳥遊美羽は、その障害となる鷽やイレイザー・スポーンの排除をそれぞれ担当する。
「じきにケンちゃんたちにも合流できると思うから、しっかりね」
「ああ。美羽こそ気をつけて」
 そう言い合うと、二人は別々に周囲を探索し始めた。

    ★    ★    ★

「ちゃっくりーく!」
 銀砂を噴き上げて、オクスペタルム号が鷽の巣に着地した。
「じゃあ、ワタシは鷽ちゃんと遊ぶから♪」
 そう言うと、ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は、たたたたっと独りで駆け出していってしまった。
「それでは、わたくしたちはわたくしたちでイレイザー・スポーンを探して退治するとしましょう」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が、御神楽 舞花(みかぐら・まいか)に言った。
「私は空から偵察します。イレイザー・スポーンを見つけたら、すぐに連絡しますね」
 バードマンアヴァターラ・ウイングを背負うと、御神楽舞花が空に舞いあがった。
 空から鷽の巣を見渡すと、あちこちにてんでばらばらに到着したグループが点在して見える。大神御嶽と散楽の翁たち以外は、勝手に手伝いに来たり、イレイザー・スポーンを退治するのが目的であったり、四月一日なのだから鷽と遊ぼうとか、またイルミンスールへやってくる前に鷽をなんとかしようというてんでばらばらの目的のグルーブだ。この場所が慣れいてる者も、慣れていない者も、以前とは勝手が違って戸惑っている者もいる。
 さっさと駆け出していってしまったノーン・クリスタリアも、銀砂の中で何やら始めていた。
「さあ、来なさい、鷽ちゃんたち」
 獣寄せの笛を吹き鳴らしながら、ノーン・クリスタリアが叫んでいた。
 すると、それに呼応するかのように、鷽の巣のあちこちで、銀砂がむくむくと盛りあがり始めた。

    ★    ★    ★

「ここでいいんだよね」
 アンシャールに乗って鷽の巣がある島に辿り着いた遠野 歌菜(とおの・かな)が、銀色の砂漠のような場所を見つけて、サブパイロットの月崎 羽純(つきざき・はすみ)に確認を求めた。
「トレジャーセンスでは、ここを示していたのだろう?」
 だったら、問題ないだろうと、月崎羽純が答える。
「じゃあ、さっそく、一緒に銀砂を集めようよ。みんなが来たら、びっくりさせてあげようよ」
 邪魔が入らないうちに仕事をすませて、みんなを驚かせてやろうと、遠野歌菜がちょっと小悪魔的な笑みを悪戯っぽく浮かべた。
 そういうわけで、大きな袋を持ってイコンから降りたところまではよかったのだが……。
 さわさわさわ……。さわさわさわ……。
 何やら、銀砂がざわめきだした。どこからか、不気味な笛の音が聞こえたような気もする。
 何者もいないのに銀砂がもこもこと盛りあがり始める。
 ぽん!
「うしょ〜!」
「うそん♪」
「うっそー!!」
 銀砂が弾けるようにして、砂漠から大小の鷽が生まれて飛び出してきた。
「げげげ、やっぱり、こうなるのかあ。よし、変身だよ、羽純君!」
「それしかないようだな」
 遠野歌菜に言われて、月崎羽純がうなずく。だが、そこはすでに鷽空間となっていた。
「さあ、羽純君、甘党の元だぁ!」
 そう言って、遠野歌菜が歌声のチョコレートを投げた。それを、パクンと月崎羽純が口で受けとめる。そのとたん、月崎羽純の姿が、得体の知れない小動物の姿に変わった。
「さあ、歌菜。変身だ!」
 魔法少女への変身……、ということは、相棒は謎の小動物ということに……。そして、遠野歌菜も、月崎羽純も、鷽空間の中ではそれに微塵も疑問をいだかなかった。
「うん。変身! マジカル☆カナ!」
 遠野歌菜が、七曜のタリスマンを高く掲げて叫んだ。とたんに、着ていた物が弾けて光に変わり、遠野歌菜がすっぽんぽんになる。月崎羽純はそれをガン見していたが、今は小動物なので不問にされた。
 弾けた光はキュンとふり絞られてポンと弾け、ピンクの可愛らしいふりふり衣装になった。
「さあ、私の歌を聞けぇ♪」
 遠野歌菜がマイクを握りしめる。
「うううっそっ♪」
 とたんに、わらわらと、鷽が逃げだし始めた。
「ちょっと、ちゃんと聞いてきなさいよ。羽純君、追いかけるわよ」
 逃げる鷽を追いかけて、遠野歌菜が駆け出していった。